TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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第18話『断頭台の鬼』

 

 2度目の大上段からの振り下ろし――”断頭(だんとう)雪崩(なだれ)”。

 同じ場所へと打ち込まれた刃は、先ほどよりもすこしだけ深くまで到達していた。

 

 そして、俺はまた刀を最上段へと掲げた。

 

「わたしが今まで何年、鬼を狩ってきたと思う? それまで……お前ほどではないにせよ、頸が斬れないくらい硬い鬼に一度も出くわさなかったとでも?」

 

「な、なにを考えておる、おぬしぃいいい!?」

 

 何年も鬼狩りを続けていれば、強力な鬼と当たることもある。

 そして、俺が生き残っているということは、そのことごとくを屠ってきたということ。

 

「わたしに硬い鬼の頸を斬り落とす手段がないと、本気で思ったの?」

 

「や、やめ……!?」

 

 俺の力じゃあ、1度で硬い鬼の頸を落とすことはできない。

 ならば、単純だ。

 

「実際の斬首と同じ。1度で斬れないなら……何回でも! 何十回でも! 斬れるまで、その頸に刀を叩きつければいい!」

 

「やめろぉおおおッ!?」

 

 

「――”断頭・雪崩”ぇえええッ!」

 

 

 そして、俺は刀を振り下ろした。

 何度も、何度も……何度も!

 

「”雪崩”……”雪崩”! ”雪崩”! ”雪崩”ぇえええ!」

 

「ぎぃいいい!? 斬れるっ、わしの頸が斬れてしまうぅううう!?」

 

 鬼が必死の形相で叫ぶ。

 何十回か叩きつけると、ヤツは文字通り首の皮一枚で繋がるだけになっていた。

 

「これで終わりだ」

 

「なんで、こんな……ふざけるな、わしはこんなところで死ぬ存在ではないんじゃぁあああ!?」

 

 俺は断頭台のごとく最後の一撃を放った。

 そして、ついに宿敵の頸を斬り落と――。

 

 

 

 

 

 

 

「――は?」

 

 俺は自分が地面に倒れていることに気づいた。

 意味が分からない。

 

 いったいなにが起こった?

 なにかの血鬼術を食らったのか?

 

「ど、どうしたんじゃおぬし、いったい?」

 

 しかし、鬼も恐怖と困惑の混ざった顔でこちらを見下ろしていた。

 その表情がやがて、なにかに気づいたように……安堵へ、そして愉悦と嘲笑へと変わる。

 

「か、かかっ……そうか、そういうことか! おぬし、とっくに限界を超えていたのか!」

 

「……!?」

 

「わしを凍らせるほどの冷気を生み出すには、大量の呼吸が必要じゃったはず。さらにそこへ型の連発とくれば……供給が追いつかないのも道理! かぁーっかっか!」

 

「ぅぐ、あっ……げほっ、かはっ!? ひゅー、はぁあっ……」

 

 言われて俺は、自分が酸素を求めて藻掻いていたことに気づいた。

 あれだけ「冷静になれ」と自分に言い聞かせていたのに!

 

 復讐がようやく叶う!

 そんな思考で目の前が見えなくなっていた。

 

 クソっ……なんでだ、なんでだよ!

 動けよ、俺の身体ぁ!?

 

「いや、それだけじゃあないのう。おぬしの身体、先ほどよりもさらに冷たくなっている……いや、冷たすぎる。常人ではとっくに死んでおるほどに」

 

 『氷の呼吸』の使いすぎだった。

 あと1秒……たったの1秒もってくれれば、それでよかったのに!

 

「かかっ、文字どおり、わしもちぃっとばかし肝を冷やしたわい! じゃが……」

 

 鬼の全身が炎に包まれた。

 ドロドロと氷の華が溶け、ヤツが自由となってしまう。

 

 首の皮1枚でブランと垂れ繋がっていた頭部を、もとの場所へと戻す。

 ジュウウウと溶接でもするみたいにくっつき、せっかく与えた傷は消えていった。

 

「まったく、やってくれたのう」

 

 鬼は立ち上がると、その足で俺の左腕を踏みつけにした。

 ヤツの足は非常に高温だった。

 

 ジュゥウウウ! と肉の焦げる臭いがした。

 

「っぐ、ぎぃいいいッ!?」

 

「かっかっかぁっ! 楽しませてもらった礼をせねばならぬよのう!」

 

 鬼が体重をかけてくる。

 バキン! と骨の折れる音が体内から聞こえた。

 

「~~~~ッ!」

 

 激しい痛みが左腕を襲った。

 

 それから髪を掴んで、引っぱり上げられる。

 髪の焼けるイヤな臭いがした。

 

 ブォオオン! と風切り音が鳴る。

 まるで重力が横向きになったかのようだった。

 

 俺の身体は宙を舞い、何度も雪の上をバウンドした。

 視界が二転三転し、ようやく停止する。

 

「ぁ、……ぁ、あ……が……」

 

 視界がかすむ。

 身体中が痛くて痛くてたまらない。

 

 左腕はもう感覚がなかった。

 本当に打つ手がなかった。俺はもう……。

 

「かかっ、さすがに限界じゃろう? これだけされても刀を手放さんのだけは立派じゃがの」

 

「……ぇ?」

 

 言われて、視線を手元へと向けた。

 これだけ負傷しているのに、俺の右手はいまだに刀を握り続けていた。

 

 心はもうとっくに折れていた。

 けれど、身体はまだ諦めていなかった。

 

「……バカな。おぬし、なぜまだ動ける?」

 

 いつの間にか、俺は立ち上がっていた。

 鬼に向けて刀を構えていた。

 

 自分でもわからない。

 ただ、血肉の一片に至るまですべての細胞が「こいつを殺せ」と叫ぶのだ。

 

「スゥゥゥ、スゥゥゥ……」

 

 呼吸を行う。

 ボタボタと血が地面に落ちて、白い雪に赤い斑点を作る。

 

 意識がもうろうとする。

 今にもまた倒れてしまいそうだった。

 

「じゃ、じゃが……立ったからなんだと言うんじゃ! 満身創痍ではないか! 今度こそ確実に息の根を止めて……、っ!?」

 

 こちらへと一歩、踏み出した鬼の膝がカクンと折れた。

 まるで俺の思念が伝わったかのように、ドスっと地面に膝を着いていた。

 

「ぜぇっ、はぁっ……な、なんじゃこれは。身体がうまく動かぬ!?」

 

「あはっ、なぁんだ。ちゃんと――効いてた(・・・・)んだ」

 

「いったいなんのことじゃ!? キサマ、わしの身体になにをしよったぁあああ!?」

 

 どうやら俺の攻撃はムダではなかったらしい。

 あぁもう……こんなことをされたら、諦めきれなくなるじゃないか――!

 

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