TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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第21話『そして400年後へ』

 

 覚悟は決まった。

 俺は『氷の呼吸』を全開にした。

 

「スゥゥゥウウウっ!」

 

「なっ、冷気がさらに増して!? バ、バカかおぬし!? なにを考えておる!? これ以上体温が下がれば、キサマ……本当に死ぬんじゃぞ!?」

 

「うん、そのつもり」

 

「なに?」

 

 

「――わたしは、わたしの命を諦める」

 

 

「は? キサマ、いったいなにを言って?」

 

「わたしにはもうお前の頸を斬るだけの力が残ってない。だから、お前にはわたしと一緒に氷漬けになってもらう。永遠に眠ってもらう」

 

 死の恐怖はなかった。

 ただ、使命感と納得だけがあった。

 

 ――俺の命はこのときのためにあったのだ、と。

 

 今、ここで死ぬために生まれてきた。

 そのために前世の記憶を取り戻したのだ。

 

「お前は、わたしの命と引き換えにしてでも、今ここで殺す!」

 

「ふ、ふざけるなキサマぁあああ! やめい! 離せ! 刀からその手を離さんかぁあああ!?」

 

 鬼の身体が腹部から徐々に凍りついていく。

 

「クソがぁあああ! 死んでたまるかぁあああ!?」

 

 ゴォオオオ! と、鬼の身体が再び熱を帯びはじめる。

 鬼の身体がゴキリと回って、俺の首に手をかける。

 

 ジュゥウウウ! と肉の焦げる臭いがした。

 

「キサマと心中なんぞ、ごめんじゃぁあああ! その前にキサマを殺してやるぅううう!」

 

 喉が焼ける。

 呼吸するたびに激しい痛みが俺を襲う。

 

 ヤツの体内で俺の送り込む冷気と、熱気とがせめぎ合っていた。

 漏れ出た熱が周囲を灼熱の地獄へと変えていた。

 

 

「死ねぇえええいっ! 血鬼術――”八熱地獄(はちねつじごく)”」

 

 

 鬼の身体から噴き出した熱が、洞窟の内壁をドロドロに溶かしていく。

 それは、まさしく地獄の光景。

 

 等活(とうかつ)地獄、黒縄(こくじょう)地獄、衆合(しゅうごう)地獄、叫喚(きょうかん)地獄、大叫喚(だいきょうかん)地獄、炎熱(えんねつ)地獄、大炎熱(だいえんねつ)地獄、無間(むけん)地獄。

 あらゆる地獄の熱がここに集まっているかのようだった。

 

「――懐かしい」

 

 あのときもこうだった。

 こんな洞窟……横穴の中で熱に耐えていた。

 

「くそう! なぜじゃ! なぜこやつは燃えぬ!? なぜまだ力尽きない!?」

 

「気づかないの?」

 

「なにを!?」

 

「お前は熱を生み出し続けてる。けれど……わたしはただ、熱を逃がしてるだけだって」

 

「なっ!?」

 

 そこには圧倒的な効率の差が存在する。

 だから鬼であるこいつに、人間の俺が対抗できている。

 

 鬼は疲れ知らずのケガ知らずだ。

 だからといって無限に力を使えるわけじゃない。

 

「凍る……わしの身体が、凍っていくぅううう!」

 

 凍結の範囲が徐々に広がっていく。

 ピシリ、ピシリと鬼の身体に亀裂が入りはじめていた。

 

 同時に俺の身体をも冷気は侵食している。

 もう身体中ほとんど完全に凍ってしまって、歩くこともできない。

 

 それでも――刀を握るこの手だけは緩めない。

 

「これで、本当に終わりだ」

 

 

「氷の呼吸・奥義・零ノ型――”氷久(とわ)の眠り”」

 

 

 絶対零度を生み出し、相手を永久の眠りへといざなう技。

 己ごと敵を凍結させる『氷の呼吸』の奥義――いや、最終手段である。

 

「わたしと一生に地獄へ落ちろぉおおおッ!」

 

「じ、自殺志願者がぁあああ! 死にたいならひとりで死ね! わしを巻き込むなぁあああ!」

 

 鬼の身体が、俺の身体が凍っていく。

 やがて、凍結は鬼の首元にまで到達し……。

 

 

 ――炎が、止んだ。

 

 

 熱を放っていた鬼の手足は、まるで冷えた溶岩のごとく真っ黒に固まっていた。

 そして、凍ったヤツの首には……ピシィッと大きな亀裂が走っていた。

 

「そんな……わしは、死ぬのか?」

 

 ボロボロと手足の先から鬼の身体が崩れはじめていた。

 ヤツはその凍りゆく顔を歪め、泣き喚いていた。

 

「ふ、ふざけるな!? やめろ、消えたくない! イヤじゃ、死ぬのはイヤじゃあああ!? わしはこれからも、おもしろおかしく生きるんじゃあ!? 家族と一緒に……、家族?」

 

 ふと、鬼の表情が固まった。

 ぽつり、となにかを思い出したかのように呟く。

 

「そうじゃ、わしの名前は……」

 

 そんな言葉を最後に、鬼は崩れて消え去った。

 俺はついに勝ったのだ。

 

 ――やったよ……お母さん、みんな。わたし、ついに(かたき)を取ったよ!

 

 いつしか洞窟内の灼熱は収まり……それどころか、凍りはじめていた。

 そして、ガラガラと音を立てて崩れてゆく。

 

 ――お師匠さま、見ていてくれましたか? 今から、わたしもそっちに行きます……。

 

 洞窟が完全に崩落するのと同時に、俺の全身も完全に氷漬けとなった。

 心肺が停止する。

 

 

 こうして俺は第2の人生に幕を下ろした――。

 

 

 ……そのはずだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――もしも~し、大丈夫ですか~?」

 

 

 そんな声が聞こえるまでは――。

 




これにて戦国時代が終了!!
次章から――大正時代がはじまります!!
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