TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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~立志編~
第22話『大正時代の幕開け』


 

 1914年(大正3年)12月。

 本編開始後の世界――。

 

 

 

「――もしも~し、大丈夫ですか~?」

 

「……ぅ……ぁ、……え?」

 

 かすんでいた目の焦点が、だんだんと合っていく。

 最初に見えたのは天井だった。

 

 ……天井?

 

 どういうことだ?

 俺は死んだはずじゃ?

 

 なんだか長い夢を見ていた気がする……。

 ここはいったいどこなんだ?

 

「あらあら、やっと起きましたか。ずいぶんと寝ぼすけでしたね~」

 

「……へ?」

 

 声の聞こえたほうへ視線を向けた。

 と、同時に思考が止まった。

 

「あなたを助けるの、すっご~く苦労したんですよ~?」

 

 そこに立っている人物を俺は知っていた。

 詰襟の隊服(・・)に、蝶のような髪飾りと羽織。彼女の名前は……。

 

 

「――胡蝶(こちょう)しのぶ!?」

 

 

 キーワードをきっかけに、ぶわぁっ! と一気に前世の記憶が蘇る。

 彼女は大正時代(・・・・)を舞台にした”この作品”における、主要人物――鬼殺隊・蟲柱。

 

 つまり、ここは……。

 

 

 ――大正時代!?

 

 

 死んだはずの俺は、気づけば400年の時を超えていた。

 な、なんで!? もしかして、俺はまた(・・)転生してしまったのか!?

 

「あら? どうして私の名前を知っているのですか?」

 

「へっ!? あ、いや……げほっ、こほっ!?」

 

「落ち着いて、まずはお水を飲んでください。ほら、ゆっくりで構いませんからね」

 

 湯呑を渡され、ゴクゴクと一気に煽った。

 「ふぅ~」と息を吐きながら、思い出す。

 

 ――昔、縁壱に助けられたときもこんな感じだったな。

 

「それで、どうして私の名前を知っているのですか?」

 

「えっと、それは……そう! 寝ているときに聞こえてきて!」

 

「……」

 

「……」

 

「……な~んだ! そういうことだったんですね~!」

 

 セーーーーフ!

 いきなりやらかすところだった。

 

 まだ自分の状況もわかっていないのだ。

 不用意な発言は控えるべきだろう。

 

「ところで、お嬢さん。自分の名前は言えますか?」

 

「ええっと」

 

 正直に答えていいものなのか、すこし躊躇ってしまう。

 しかし、それをしのぶは「わからない」と解釈したらしい。

 

「そうですか。では、自分の身にいったいなにが起こったのか覚えていますか?」

 

「その、すみません」

 

「いいえ、とても怖い思いをしたでしょうし仕方ありませんよ」

 

 しのぶが愁いを帯びた表情を浮かべていた。

 思わず、その横顔に見とれる。

 

 彼女は恐ろしいくらいの美人だった。

 そして、イメージよりもずっと小柄で、若く……幼くさえ見えた。

 

「あの、鏡はありますか?」

 

「すこし、待っていてくださいね……はい、どうぞ」

 

 渡された手鏡を覗き込む。

 そこにあったのは、包帯でグルグル巻きになった顔だった。

 

「あっ、まだ取ってはいけませんよ。気になるとは思いますが」

 

「……いえ」

 

 顔へと伸ばしていた右手を引っ込める。

 そんな腕も包帯まみれだった。

 

 左腕に至っては添え木で固定されていて、ほとんど動かせない。

 だからこそ、わかった。

 

 ――転生、したわけじゃないのか。

 

 鏡の中に映った自分の髪は真っ白だった。

 あの鬼(・・・)に焼かれたからだろう、ずいぶんと短くなってしまってはいたけれど。

 

 ――そうだ、鬼!

 

「あ、あの!? わたしの近くに鬼はいませんでしたか!?」

 

「あなた、やっぱり鬼を知っているのですね?」

 

 あぁっ、しまった!?

 いやでも、それよりこちらを確認するほうが重要だ。

 

 俺はあの鬼をちゃんと滅ぼせていたのか!?

 ちゃんと仇は討てていたのか!?

 

「安心してください。近くにいた鬼ならきちんと滅しました(・・・・・)から」

 

「滅したって……えっ!? まさか、生きていたんですか!?」

 

「……? えぇ、そうですけれど?」

 

 そんな、バカな!?

 いやでも、どのみち滅されたなら問題はないのか? けれど……!

 

「その、大丈夫だったんですか!? すごく強かったと思うんですが!」

 

「ふふっ、ご心配ありがとうございます。けれど、私もちょっとだけ強いんですよ? それに偶然ですが、ほかの隊員も一緒でしたから」

 

「ほかの隊員?」

 

「そうですね……あなたは当事者ですから、知る権利があるでしょう。私たちは――”鬼殺隊”。あなたが出会ったような、鬼を狩るための組織(・・)です」

 

「鬼殺隊……」

 

「はい。鬼は通常の刀では殺せず――」

 

 と、しのぶが説明してくれる。

 あの、ごめんなさい。それは知ってます……。

 

 ただ、ほかにだれがいたんだろう? と思っただけで。

 意図せず「はじめて聞いた」みたいなリアクションになってしまった。

 

「そんなわけで、私はひさびさの休暇に……生薬(しょうやく)の買いつけで雪山のそばを訪れていたのですが、そこで鬼が現れたという話を聞きまして」

 

「それは、その……大きな被害が出たのでは?」

 

「そうですね。たくさんの人が亡くなっていました」

 

「っ……! そう、ですか。それでどうやって討伐を?」

 

「じつは、そこで一緒になった”冨岡(とみおか)”という隊員がいまして」

 

「冨岡……さん?」

 

 記憶が呼び起こされる。

 そうだ、冨岡義勇(ぎゆう)……。

 

 現在の水柱だ。

 半々羽織がトレードマークな『水の呼吸』の使い手。

 

「まぁ、冨岡さんもそこそこ強いですから。そこそこですけれど」

 

 しのぶがイタズラっぽく言う。

 冨岡さんって、いつもこうやってイジられてるんだろうなぁ。

 

 けれど、なるほど。柱がふたりも居合わせていたのか。

 それならば、問題なく狩れたのも納得だ。

 

「まぁ今回、私は……戦闘では、なにもしていないのですけれどね」

 

「えっ、じゃあ冨岡さんがひとりで!?」

 

「そうですよ。そこまで強い鬼でもありませんでしたから」

 

「えぇ~~~~っ!?」

 

 強くなかった!?

 そ、そんなバカな!?

 

「だって――まだ鬼になりたて(・・・・)でしたし。鬼には特殊な能力を持つ者もいますが、その鬼はせいぜい簡単な武器を作り出すくらいしかできませんでしたから」

 

「そうですか、武器を……んんっ!?」

 

「どうかされましたか?」

 

 え、えっと? つまりこれ……。

 

 

 ――鬼ちがい(・・・・)だぁあああーーーーっ!?

 

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