TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手 作:可愛ケイ@VTuber兼小説家
俺が蝶屋敷に来てから数日。
ようやく胃が回復して、固形物も食べられるようになってきたころのこと。
病室にひとりの少女がやって来ていた。
の、だけれど……。
「……」
「……」
「あ、あのー?」
俺はついに耐え切れなくなって、声をかけた。
だって彼女、お盆を持ったままずーっと無言で入り口に立っているのだ!
「カナヲさん、ですよね?」
人買いに連れられていたところをしのぶたちに助けられて、蝶屋敷へとやってきた少女だ。
”この世界”の主人公たちとともに鬼殺隊員となる、のだが。
今はまだ纏っているのは隊服ではなく、桃色の着物だった。
そうか。
まだ最終選別を受ける前なのか。
「……?」
カナヲは不思議そうな顔で、コテンと首を傾げていた。
「なんで名前知ってるんだろう?」と言いたげな風だった。
「えっと、しのぶさんやアオイさんからお話を伺っていたので」
「……」
納得といった表情。
そして、話は終わったとばかりに視線を逸らした。待て待て待て。
「あのー、カナヲさん。その手に持ってるお盆って?」
「……おかゆ。アオイちゃんに頼まれたの。この部屋に持って行って、って」
しばらく間があって、ようやく返答があった。
はじめてカナヲがしゃべってくれた。でも……。
「それってつまり……わたしにあげて、って意味なのでは?」
「……!」
カナヲが「ハッ」とした表情になった。
ようやく気づいてくれたらしい。彼女がアタフタとしだす。
「慌てなくて大丈夫ですから。それ、いただいても構いませんか?」
「……、……」
カナヲはコクコクと無言で何度も頷いて、ベッド脇まで持ってきてくれる。
しかし、そこでまたフリーズ。
「あの、カナヲさん? おかゆ、食べたいなーって」
カナヲはジーッとおかゆを見下ろし……そして、カッと目を見開いた。
え、なぜゆえに決意の表情を?
彼女はガッと匙を掴むと、それを器の中へと突っ込んだ。
掬ったおかゆを俺のほうへと突き出してくる。
「た、食べさせてくれるの?」
「……、……」
カナヲはまたしてもコクコクと頷いた。
いや、自分で食べられるんだけどな……。
でもなんか、鬼気迫る様子で断るに断れない。
妙な緊張感の中、俺はゆっくりと口を開いた。
「あ、あーん」
「――えいっ!」
次の瞬間、カナヲの手が
すさまじい速度で匙が俺へと差し出される。
同時にその勢いで匙に乗っていたおかゆは飛び出し……。
びちゃっ! と俺の胸元にかかった。
「あっ」
「ぎゃぁあああ!? 熱ぃ~~~~っ!?」
慌てて拭おうとするが、ケガをしている手ではうまくできない。
しばらく青ざめて固まっていたカナヲだったが、「ハッ」として俺の着物に手をかけた。
「えっ、あっ……ちょっ!?」
「……む、む~!」
たぶん、火傷しないようにだろう。
おかゆの付着してしまった衣類を脱がそうとしてくれている。
いや、それ自体はいいんだけど……。
その、お願いだからちょっと待って!?
「ひゃうううん!? ぜ、全部は脱がさなくていいからぁーーーー!?」
「む~~~~!」
叫ぶが、カナヲはいっぱいいっぱいになっているらしく聞こえていないようだった。
あっ、ダメだ!? 力じゃ完全に敵わない!
だ、だれか助けてー!?
そんな思いが通じたのだろうか。
「ちょ、ちょっとなにごと!? すごい悲鳴が……って、なにしてるのふたりともー!?」
「あ、アオイさんぅ~!」
救世主がそこにいた。
助けに来てくれたんだ! そう感謝しかけたそのとき……。
「――あたしの妹ふたりが、病室のベッドでやらしいことしてるー!?」
ベッドの上には着物の乱れた少女。
荒い息を吐きながら、ふたりはくんずほぐれつしていて……。
「って、ちっがーーーーう!?」
とんでもない誤解だー!?
俺は腹の底から叫んだ――。