TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手 作:可愛ケイ@VTuber兼小説家
「なるほど。それでまふゆはカナヲにのしかかられて……しかも、服を脱がされて半裸半泣きになっていたわけね?」
「半泣きにはなってませんけど!?」
「まったく。ビックリさせないでよ、もうっ!」
ようやく状況を理解してくれたアオイが、呆れた顔で俺たちを見ていた。
それに、ビックリしたのはこっちのほうだ。
「ほら、カナヲ。ちゃんとまふゆに『ごめんなさい』しなさい」
「……ごめんなさい」
「えーっと、大丈夫ですから気にしないでください。幸い、火傷もしませんでしたし」
「……そう」
カナヲがホッとしたように息を吐く。
それから困ったようにキョロキョロとあたりを見渡し、おかゆに目を留めた。
「……おかゆの続き、食べる?」
「あ、ありがとうございます。でも、次からおかゆは自分で食べるかな……」
「……そ、そう」
カナヲがシュンとしてしまう。
なんか申し訳なくなるが、仕方ない。
俺の身体はただでさえ貧弱なうえ、今はさらに弱ってるから。
これ以上は命に関わりそうだから……。
「その、ごめんなさい。私、看護とか看病とか、いつもうまくできなくって」
そうだった。
カナヲってそういうの苦手なんだった。
「言ってるでしょ、カナヲ。そういうのは慣れだって――」
「――あらあら、ずいぶんと楽しそうですね」
「あっ、しのぶさま!」
そこへやってきたのはしのぶだった。
俺たちの様子を見て、くすくすと笑っている。
「聞いていましたよ。さっそくカナヲと
「わたしは鮭大根じゃないが!?」
「あら、ちがいましたっけ」
しのぶがとぼけた様子で言う。
こ、こいつめ……その変な名前が定着したらどうしてくれる!?
「……鮭大根、さん?」
「ぎゃーっ!? 言ったそばから!?」
カナヲが俺を見て、不思議そうに首を傾げていた。
俺は慌てて訂正した。
「わたしの名前は
「まふゆ、ちゃん?」
「ちがいますよー、鮭大根さんですよー」
「……やっぱり鮭大根さん、なの?」
「だから、ちっがーう!? しのぶさん~!?」
カナヲが俺としのぶとの間で視線を行き来させていた。
やがて、フリーズし……無言でコインを取り出した。
「ちょっ!?」
カナヲは親指でコインをはじいた。
くるくるとそれが宙を舞うのを見ながら、彼女はポツリと呟く。
「表が出たら、まふゆ。裏が出たら――鮭大根」
コインがカナヲの手の甲へと落ち――る直前、俺はそれをキャッチした。
全力で阻止した。
あ、あ……危ねぇーーーー!?
カナヲが目を丸くして、俺を見ていた。
俺は「ぜぇ、はぁ……」と息を吐きながら、まっすぐに彼女の目を見て告げる。
「
「……う、うん。わかった、まふゆちゃん」
「あら残念」
しのぶがまたイタズラっぽい笑みを浮かべていた。
まったく、この人は……。
「カナヲ、まふゆはあんたの――”妹”なんだからね。しっかりと面倒を見てあげるのよ!」
「妹……」
アオイの言葉に、カナヲはじーっと俺に視線を向けてくる。
うっ……。
彼女の表情は、俺が想像していたよりもずっと雄弁だった。
あるいはそれは、俺が彼女の過去を知っているからそう思うだけかもしれないけれど――。
* * *
それから2週間が経ったころには、表面上のケガはかなり回復していた。
しのぶの薬は驚くほどによく効いた。
「じゃあ、外しますね~」
ヒラヒラと顔の包帯が外されていく。
そして……。
「ごめんなさい。顔に傷跡が残ってしまいましたね」
「いえ、悪いのはしのぶさんじゃありませんから」
そう、
あのとき、鬼の目を誤魔化すために体表温度を0度以下まで下げた。
そして、凍った状態で笑みなんか浮かべたから。
俺は鏡に映る自分を見ながらペタリと頬に触れた。
そこには……。
――まるで氷の結晶のような
それはどこか、”痣”のようにも見えた――。