TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

29 / 136
第28話『お正月は振袖で』

 

 カナエが順番にみんなへとあいさつを交わしていく。

 

「ただいま~、ただいま~。みんなただいま~」

 

「おかえりなさい、カナエさま!」

 

「「「おかえりなさいですー」」」

 

 アオイも3人娘も、みんながカナエのもとに集まっていた。

 それから最後に、その視線を俺へと向ける。

 

「はじめまして~。私は胡蝶カナエ。あなたのお名前は?」

 

「わたしは、幸代まふゆといいます」

 

「そうなの~。まふゆちゃん、これからよろしくね~。ぎゅぅ~~~~っ」

 

「むぎゅっ!?」

 

 いきなりカナエに抱きしめられた。

 そのまま頭を撫でられる。

 

「……ぁ」

 

 すごく、心がぽかぽかした。

 なぜだか、亡くなった母に抱きしめられていたときのことを思い出した。

 

 もう何年も感じていなかった温もりがそこにはあった。

 こぼれかけた涙と嗚咽を俺は堪えた。

 

 と、そのとき。

 

「ぅ……けほっ、こほっ!」

 

 カナエが唐突に咳をした。

 しのぶが焦った表情で薬を取りだす。

 

「姉さん!? これ、急いで吸って!」

 

「こほっ、こほっ……すぅ~、ふぅ。ありがとうしのぶ、姉さんはもう大丈夫だから」

 

「本当に!? 本当に大丈夫なの!?」

 

「もうっ、しのぶは心配性ね~」

 

「だから言ったのに! 生薬の買いつけなら私が行くって!」

 

「あなたにはあなたの仕事があるでしょう?」

 

「……あのっ、カナエさんはどこか悪いんですか?」

 

 ぶしつけな質問だったかもしれない。

 だが、聞かないわけにもいかない。

 

 俺には今、この異変に関する手がかりが必要だった。

 幸いカナエはとくに不快になったりはしなかったようで、やさしい表情のまま教えてくれる。

 

「昔、強い鬼と戦ったときに肺をやられちゃってね。あまり深く息をしたり、激しい運動ができなくなっちゃったのよ」

 

 そういうことだったのか。

 カナエは鬼との戦いで生き延びたが、後遺症で『呼吸』が使えなくなった。

 

 それで柱を引退したのだろう。

 服も隊服ではなく普通の着物だし、刀も帯びていない。

 

「ごめんなさい。ツラいことを聞いてしまって」

 

「気にしないで~。これでも身体はとっても元気なんだから~!」

 

「……姉さんを傷つけた鬼のことは、絶対に許しません。必ず私が討ちます」

 

 しのぶがビキリと顔に筋を立て、怒りの形相をあらわにする。

 なるほど、そんな怒りを原動力に柱まで上りつめたのだろう。

 

 しかし……彼女が戦う理由に至るまで、俺の知る歴史(・・)から全部がすこしずつズレている。

 いったい、なぜ運命が変わったのか?

 

 今はまだわからない。

 だが、結果には必ず原因があるはずだ――。

 

   *  *  *

 

 それから数日して、年が明けた。

 俺は三面鏡の前でカナエに着替えさせられていた。

 

「せっかくのお正月だもの。おめかししないと~」

 

 そう言って、俺に振袖を用意してくれたのだ。

 鏡に映った己の姿を見る。

 

 その身体は400年前と変わらず小さいままだ。

 当時とのちがいといえば、頬の傷と……。

 

「火傷、やっぱり気になるかしら~?」

 

 全身の包帯も取れたのだが、首にくっきりと火傷の痕が残ってしまっていた。

 おそらく、あの鬼に首を絞められたときについたのだろう。

 

 俺は肌も髪も真っ白だから、かなり目立ってしまうな。

 そんなことを思っていたら……。

 

「そうだわ!」

 

 カナエが声を上げて、押し入れの中を漁った。

 中から取り出してきたのは……。

 

「はいこれ、あげるわ~。私のおさがりだけれど~」

 

 ふわっと首元が温かくなる。

 鏡を見ると、自分の首に蝶柄の襟巻――マフラーが巻かれていた。

 

「やっぱり、思ったとおり~! とっても似合ってるわ~!」

 

 自分でいうのもなんだが、たしかに似合っていた。

 それにこれを巻いていると、身体だけじゃなく心もぽかぽかした。

 

「その、ありがとうございます」

 

「いいのよ~、これくらい。……はい、これで完成~」

 

 見れば、振袖の着つけも完了していた。

 こんなにも上等な服を着るのははじめてだ。

 

「ほら、まふゆちゃん。みんなにも見せにいってらっしゃいな~」

 

「えっと、はい。……うわっ!?」

 

 ふすまを開けると、目の前にカナヲが立っていた。

 もしかして、ずっと待っていたのだろうか?

 

 彼女はじーっと俺の姿を見たあと、ぎゅっと手を握ってきた。

 思わず「ひゃうっ!?」と変な声が出る。

 

「あらあら~。カナヲとまふゆちゃんは本当に仲良しね~」

 

「ちがっ!? だからこれは、転ばないように支えてくれてるだけで!?」

 

「昔の私としのぶを見ているみたいだわ~」

 

「だからぁー!?」

 

 うぅっ。気恥ずかしくて顔が熱くなる。

 ここ数日、カナヲは俺にベッタリだった。

 

「あの、カナヲさん。べつにもう手は繋がなくても大丈夫かなーって」

 

「……? でも、しのぶさまに『支えてあげて』って言われたから」

 

「そ、そうなんですけどね。でも、わたしはもうひとりで歩けるようになったし……」

 

「……? でも、しのぶさまに――」

 

「ごめんなさい。わたしが悪かったです」

 

「そう」

 

 カナヲは不思議そうな顔をしていた。

 これも彼女なりの看病なんだろう。あんまり強くは言いづらい。

 

 俺はもう好きにしてくれ、と天を仰いだ。

 そんな俺たちの様子を、カナエはほほえましそうに見ていた――。

 




そういう時期なので、季節イベントを!!

……え? クリスマスはって?
俺の大正時代にそんなものはねぇ!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。