TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手 作:可愛ケイ@VTuber兼小説家
カナエが順番にみんなへとあいさつを交わしていく。
「ただいま~、ただいま~。みんなただいま~」
「おかえりなさい、カナエさま!」
「「「おかえりなさいですー」」」
アオイも3人娘も、みんながカナエのもとに集まっていた。
それから最後に、その視線を俺へと向ける。
「はじめまして~。私は胡蝶カナエ。あなたのお名前は?」
「わたしは、幸代まふゆといいます」
「そうなの~。まふゆちゃん、これからよろしくね~。ぎゅぅ~~~~っ」
「むぎゅっ!?」
いきなりカナエに抱きしめられた。
そのまま頭を撫でられる。
「……ぁ」
すごく、心がぽかぽかした。
なぜだか、亡くなった母に抱きしめられていたときのことを思い出した。
もう何年も感じていなかった温もりがそこにはあった。
こぼれかけた涙と嗚咽を俺は堪えた。
と、そのとき。
「ぅ……けほっ、こほっ!」
カナエが唐突に咳をした。
しのぶが焦った表情で薬を取りだす。
「姉さん!? これ、急いで吸って!」
「こほっ、こほっ……すぅ~、ふぅ。ありがとうしのぶ、姉さんはもう大丈夫だから」
「本当に!? 本当に大丈夫なの!?」
「もうっ、しのぶは心配性ね~」
「だから言ったのに! 生薬の買いつけなら私が行くって!」
「あなたにはあなたの仕事があるでしょう?」
「……あのっ、カナエさんはどこか悪いんですか?」
ぶしつけな質問だったかもしれない。
だが、聞かないわけにもいかない。
俺には今、この異変に関する手がかりが必要だった。
幸いカナエはとくに不快になったりはしなかったようで、やさしい表情のまま教えてくれる。
「昔、強い鬼と戦ったときに肺をやられちゃってね。あまり深く息をしたり、激しい運動ができなくなっちゃったのよ」
そういうことだったのか。
カナエは鬼との戦いで生き延びたが、後遺症で『呼吸』が使えなくなった。
それで柱を引退したのだろう。
服も隊服ではなく普通の着物だし、刀も帯びていない。
「ごめんなさい。ツラいことを聞いてしまって」
「気にしないで~。これでも身体はとっても元気なんだから~!」
「……姉さんを傷つけた鬼のことは、絶対に許しません。必ず私が討ちます」
しのぶがビキリと顔に筋を立て、怒りの形相をあらわにする。
なるほど、そんな怒りを原動力に柱まで上りつめたのだろう。
しかし……彼女が戦う理由に至るまで、俺の知る
いったい、なぜ運命が変わったのか?
今はまだわからない。
だが、結果には必ず原因があるはずだ――。
* * *
それから数日して、年が明けた。
俺は三面鏡の前でカナエに着替えさせられていた。
「せっかくのお正月だもの。おめかししないと~」
そう言って、俺に振袖を用意してくれたのだ。
鏡に映った己の姿を見る。
その身体は400年前と変わらず小さいままだ。
当時とのちがいといえば、頬の傷と……。
「火傷、やっぱり気になるかしら~?」
全身の包帯も取れたのだが、首にくっきりと火傷の痕が残ってしまっていた。
おそらく、あの鬼に首を絞められたときについたのだろう。
俺は肌も髪も真っ白だから、かなり目立ってしまうな。
そんなことを思っていたら……。
「そうだわ!」
カナエが声を上げて、押し入れの中を漁った。
中から取り出してきたのは……。
「はいこれ、あげるわ~。私のおさがりだけれど~」
ふわっと首元が温かくなる。
鏡を見ると、自分の首に蝶柄の襟巻――マフラーが巻かれていた。
「やっぱり、思ったとおり~! とっても似合ってるわ~!」
自分でいうのもなんだが、たしかに似合っていた。
それにこれを巻いていると、身体だけじゃなく心もぽかぽかした。
「その、ありがとうございます」
「いいのよ~、これくらい。……はい、これで完成~」
見れば、振袖の着つけも完了していた。
こんなにも上等な服を着るのははじめてだ。
「ほら、まふゆちゃん。みんなにも見せにいってらっしゃいな~」
「えっと、はい。……うわっ!?」
ふすまを開けると、目の前にカナヲが立っていた。
もしかして、ずっと待っていたのだろうか?
彼女はじーっと俺の姿を見たあと、ぎゅっと手を握ってきた。
思わず「ひゃうっ!?」と変な声が出る。
「あらあら~。カナヲとまふゆちゃんは本当に仲良しね~」
「ちがっ!? だからこれは、転ばないように支えてくれてるだけで!?」
「昔の私としのぶを見ているみたいだわ~」
「だからぁー!?」
うぅっ。気恥ずかしくて顔が熱くなる。
ここ数日、カナヲは俺にベッタリだった。
「あの、カナヲさん。べつにもう手は繋がなくても大丈夫かなーって」
「……? でも、しのぶさまに『支えてあげて』って言われたから」
「そ、そうなんですけどね。でも、わたしはもうひとりで歩けるようになったし……」
「……? でも、しのぶさまに――」
「ごめんなさい。わたしが悪かったです」
「そう」
カナヲは不思議そうな顔をしていた。
これも彼女なりの看病なんだろう。あんまり強くは言いづらい。
俺はもう好きにしてくれ、と天を仰いだ。
そんな俺たちの様子を、カナエはほほえましそうに見ていた――。
そういう時期なので、季節イベントを!!
……え? クリスマスはって?
俺の大正時代にそんなものはねぇ!!