TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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第3話『鬼に逢うては』

 

 『血鬼術』。

 その言葉をわたしはどこかで聞いたことがある気がした。

 

 鬼が両手を着いていた地面がドロドロと溶けていく。

 数十秒ほど経ったころ、それは起こった。

 

「きゃぁっ!? ゆ、揺れて……地震!?」

 

「かっかっか! やってみるもんじゃのう。うまくいったわい!」

 

「い、いったいなにをしたの……?」

 

「なに、地下にでっかい熱の塊を見つけてのう、わしはそれをちょいと刺激してやっただけよ」

 

「地下? 熱?」

 

「ほら。来よるぞ、来よるぞ!」

 

 地響きはさらに大きくなり続ける。

 そして限界を迎えたかのように、あるとき……。

 

 

 ――ドォオオオン!

 

 

 世界が壊れたのかと思うほどの爆発音が鳴り響いた。

 

「きゃあぁあああ!?」

 

 夕日は沈んだはずなのに、空が赤く燃えていた。

 いや、あれは……!?

 

「富士山が燃えてる!?」

 

「ちがうなぁ、あれは――噴火、というんじゃ」

 

「ふん、か?」

 

 赤く光る水が富士山のてっぺんからこちらへ向かって流れてくる。

 理解が追いつかない。

 

「そぉら、じきにここいらも飲まれるぞ。あたりを一望できそうなのは……ふむ、あそこじゃの」

 

「ひぃいいいっ!?」

 

 首根っこを掴まれる。

 男が地面を蹴ると、わたしの身体は空を飛んでいた。

 

「うわっ、わっ、わっ……」

 

 数秒の浮遊感。

 そののち、男は小高い……崖の上に着地した。

 

「ほれ、しっかりと見ておけよ」

 

 男はわたしの頭を掴むと、強制的に村のほうへと視線を向けさせた。

 赤く光る水はすさまじい速度で村へと到達していた。

 

「燃える! 燃えよるぞ!」

 

 赤く光る水が触れると雪は溶け、草木や家は燃えた。

 それがすさまじい熱を持っていることが、離れているのに伝わってくる。

 

 悲鳴が聞こえた。

 村のみんなの悲鳴が。

 

「だ、ダメっ……やめてぇえええ!?」

 

 家から老婆が出てくるのが見えた。

 彼女はあっという間に赤く光る水に飲みこまれた。

 

 断末魔が聞こえた。

 彼女の足が、胴が、頭が……そして、助けを求めるように空へと伸ばされた手が燃えていく。

 

「イヤぁあああッ!?」

 

 男に掴まれ、顔を逸らすこともできない。

 わたしはなにもできず、ただ地響きとともに燃え盛る村を……みんなを、見続けた。

 

 

「かっかっかぁあああっ! 絶景かな、絶景かな!」

 

 

 どこか芝居がかった、大仰な笑い声があたりに響いていた。

 ようやく解放され、わたしはその場に崩れ落ちた。

 

 なんでこんなことになったんだろう?

 あぁ、そうだ……コイツだ。全部コイツのせいだ。

 

「う、う、うわぁあああっ!」

 

「かかっ、威勢がええのう」

 

「っぐぇっ!?」

 

 殴りかかろうとするが、わたしの短い腕はかすりもしない。

 逆に首を掴まれてしまう。

 

「ぁっ……がっ、はっ……!?」

 

 男の手は大きかった。わたしの細い首を簡単に握りしめられるくらいに。

 ……息が、できない。

 

「思い出した。そういえばおぬし、わしに聞いとったのう――『お前は人なのか?』と」

 

「ぅ、……ぐっ……」

 

「冥途の土産じゃ、答えてやろう。そのとおり、わしは人間ではない。わしは……」

 

 

「――”鬼”じゃ」

 

 

 ニィイイイとその男は――いや、”鬼”は獰猛な笑みを浮かべた。

 鬼? 鬼だって? そんなものいるわけが……いや。

 

 その単語を聞いた瞬間、なにかがカチリとハマったような気がした。

 同時に、膨大な情報がわたしの中へと流れ込んでくる。

 

「~~~~っ!?」

 

 頭が割れそうなほど痛かった。

 そうだ、わたしは……いや、俺は(・・)……!

 

「あ、あぁあああっ!?」

 

 知っている。俺はこれを知っているぞ!

 『鬼』と『血鬼術』。そうだ、この世界は……!

 

「では、ゆくがよい」

 

 だが、すべては遅すぎたらしい。

 鬼がパッと手を離し、俺を放り捨てた。

 

「ぁっ……」

 

 足元に地面はなかった。

 そのまま、俺の身体は崖の下へと落ちていった――。

 

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