TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手 作:可愛ケイ@VTuber兼小説家
「こっち」
と、カナヲに手を引かれてみんなのもとへ。
かわいい、かわいいと連呼されて、正直ちょっと恥ずかしい思いをしつつ……。
「あけましておめでとうございます」
俺たちは年始のあいさつを交わした。
そのあとは、新年の食事だ。
以前にしのぶが言っていたとおり、おせちだった。
ただ、俺が思っていたのとはすこしちがう。
「そっか、この時期ってまだ重箱じゃあないんだ」
「まふゆ、どうかしたの?」
「あっ、ううん!」
「そっ! はいこれ、あんたの分よ!」
アオイが俺の前にも料理を並べてくれた。
メニューはなますや煮物、田造りなどだった。
ちなみに、初詣はしのぶたちだけでもう済ませてきたそうだ。
俺とカナエは体調のこともあるからなぁ。
そして、そのあとは……。
「えいっ!」
「……?」
「カナヲ!? 羽根を打ち返すのよ!?」
アオイとカナヲが羽子板を持って向き合っていた。
羽根つきをしようとしているようだが、カナヲはピンと来ていないみたいだった。
かくいう俺も、ちゃんとした正月遊びなんてはじめてだ。
まぁ、激しい運動はできないのでボーっと見ているだけだが。
「はぁ~、もうっ! じゃあ……墨を塗るから、こっちおいで!」
カナヲはキョトンとしながらアオイに近づいていく。
アオイは「ふっふっふ」と悪い笑みを浮かべていた。
「まふゆちゃんは、どうして羽根を落としたら墨を塗るのか知ってる~?」
「えっ? 負けた罰じゃないんですか?」
「ふふふっ。最初は魔除けのためだったそうよ~」
「……魔除け、ですか?」
「えぇ。落としちゃったほうは縁起が悪いでしょ? それを祓うために墨を塗ったの。”黒”には魔除けの効果があるといわれて
「それは知りませんでした」
けれどなるほど。
墨――”炭”には殺菌効果があるもんな。
「羽根の玉にムクロジが……黒い種子が使われるのも同じ理由だそうよ~」
「へぇ~」
たしか数珠にも使われるんだっけ。
そう聞くと、なんだかご利益がありそうな気がしなくもない。
まぁ「
「子どもが病気を
「にしても、黒かぁ」
頭をよぎったのは、縁壱の使っていた日輪刀のこと。
あれは黒曜石のような漆黒だった。
黒は魔除け――鬼を払う、か。
はたして、それはいったい
そして、いわれなくなった理由ももしかしたら……。
「ねぇねぇ、まふゆー!」
「あっ、アオイさん。うまく描けましたか?」
「できたわよ、自信作! ……じゃーん!」
「……えぇっ!?」
アオイがカナヲをこちらに向かせて、笑っていた。
カナヲのほっぺたには、俺とそっくりに”痣”が……いや、そっくりに墨が塗られていた。
「えへへっ、これでカナヲもまふゆとおそろいね! 鬼から生き延びた、縁起物のしるしよ!」
そっか、そんな風には考えたことがなかった。
でも本当に、顔に描いた魔除けの墨と”痣”はそっくりだった。
「よし、じゃあもう1戦やるわよ! カナヲ、今度こそちゃんと打ち返し……ぎゃーっ!?」
「……私の勝ち?」
「え、あれ? 今なにが起こったの? 羽根が消えて……ちょっ、ちょっと待ってカナヲ!?」
「……墨で同じのを描くの。アオイが言った」
「あ、や……イヤぁ~~~~!?」
アオイがカナヲに蹂躙され、墨を塗られていた。
今のカナヲはまだ隊員じゃないのだが、すでにその才能の片鱗が見え隠れしていた。
「あらあら、カナヲもアオイもかわいいわね~。せっかくだし、私もお願いしちゃおうかしら~」
「姉さんまで!?」
「あら、しのぶ。あなたもやるのよ~?」
「「「私たちもお願いしますー」」」
「あ~もうっ! やればいいんでしょ、やれば! でもみんな、着物を汚さないように――」
とまぁ、カナエの言葉をきっかけにみんながおそろいになった。
そんな様子を見て、俺はつい……。
「あははっ」
と、笑ってしまった。
なんだか、自分が本当に蝶屋敷の一員になったような、そんな実感があった。
……それともうひとつ。
俺は自分の傷跡を「氷の結晶」に似ていると思っていた。
けれど、彼女たちの頬にそれがあると……。
同じ文様のはずなのに、不思議とそれらは蝶々の羽のようにも見えた――。