TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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第29話『魔除けの墨はまるで、痣のようで』

 

「こっち」

 

 と、カナヲに手を引かれてみんなのもとへ。

 かわいい、かわいいと連呼されて、正直ちょっと恥ずかしい思いをしつつ……。

 

「あけましておめでとうございます」

 

 俺たちは年始のあいさつを交わした。

 そのあとは、新年の食事だ。

 

 以前にしのぶが言っていたとおり、おせちだった。

 ただ、俺が思っていたのとはすこしちがう。

 

「そっか、この時期ってまだ重箱じゃあないんだ」

 

「まふゆ、どうかしたの?」

 

「あっ、ううん!」

 

「そっ! はいこれ、あんたの分よ!」

 

 アオイが俺の前にも料理を並べてくれた。

 メニューはなますや煮物、田造りなどだった。

 

 ちなみに、初詣はしのぶたちだけでもう済ませてきたそうだ。

 俺とカナエは体調のこともあるからなぁ。

 

 そして、そのあとは……。

 

「えいっ!」

 

「……?」

 

「カナヲ!? 羽根を打ち返すのよ!?」

 

 アオイとカナヲが羽子板を持って向き合っていた。

 羽根つきをしようとしているようだが、カナヲはピンと来ていないみたいだった。

 

 かくいう俺も、ちゃんとした正月遊びなんてはじめてだ。

 まぁ、激しい運動はできないのでボーっと見ているだけだが。

 

「はぁ~、もうっ! じゃあ……墨を塗るから、こっちおいで!」

 

 カナヲはキョトンとしながらアオイに近づいていく。

 アオイは「ふっふっふ」と悪い笑みを浮かべていた。

 

「まふゆちゃんは、どうして羽根を落としたら墨を塗るのか知ってる~?」

 

「えっ? 負けた罰じゃないんですか?」

 

「ふふふっ。最初は魔除けのためだったそうよ~」

 

「……魔除け、ですか?」

 

「えぇ。落としちゃったほうは縁起が悪いでしょ? それを祓うために墨を塗ったの。”黒”には魔除けの効果があるといわれていた(・・)から」

 

「それは知りませんでした」

 

 けれどなるほど。

 墨――”炭”には殺菌効果があるもんな。

 

「羽根の玉にムクロジが……黒い種子が使われるのも同じ理由だそうよ~」

 

「へぇ~」

 

 たしか数珠にも使われるんだっけ。

 そう聞くと、なんだかご利益がありそうな気がしなくもない。

 

 まぁ「無患子(ムクロジ)」って書くくらいだもんな。

 「子どもが病気を(わずら)わない」って、なかなかすごい名前。

 

「にしても、黒かぁ」

 

 頭をよぎったのは、縁壱の使っていた日輪刀のこと。

 あれは黒曜石のような漆黒だった。

 

 黒は魔除け――鬼を払う、か。

 

 はたして、それはいったいどちら(・・・)が先だったのだろうか。

 そして、いわれなくなった理由ももしかしたら……。

 

「ねぇねぇ、まふゆー!」

 

「あっ、アオイさん。うまく描けましたか?」

 

「できたわよ、自信作! ……じゃーん!」

 

「……えぇっ!?」

 

 アオイがカナヲをこちらに向かせて、笑っていた。

 カナヲのほっぺたには、俺とそっくりに”痣”が……いや、そっくりに墨が塗られていた。

 

「えへへっ、これでカナヲもまふゆとおそろいね! 鬼から生き延びた、縁起物のしるしよ!」

 

 そっか、そんな風には考えたことがなかった。

 でも本当に、顔に描いた魔除けの墨と”痣”はそっくりだった。

 

「よし、じゃあもう1戦やるわよ! カナヲ、今度こそちゃんと打ち返し……ぎゃーっ!?」

 

「……私の勝ち?」

 

「え、あれ? 今なにが起こったの? 羽根が消えて……ちょっ、ちょっと待ってカナヲ!?」

 

「……墨で同じのを描くの。アオイが言った」

 

「あ、や……イヤぁ~~~~!?」

 

 アオイがカナヲに蹂躙され、墨を塗られていた。

 今のカナヲはまだ隊員じゃないのだが、すでにその才能の片鱗が見え隠れしていた。

 

「あらあら、カナヲもアオイもかわいいわね~。せっかくだし、私もお願いしちゃおうかしら~」

 

「姉さんまで!?」

 

「あら、しのぶ。あなたもやるのよ~?」

 

「「「私たちもお願いしますー」」」

 

「あ~もうっ! やればいいんでしょ、やれば! でもみんな、着物を汚さないように――」

 

 とまぁ、カナエの言葉をきっかけにみんながおそろいになった。

 そんな様子を見て、俺はつい……。

 

「あははっ」

 

 と、笑ってしまった。

 なんだか、自分が本当に蝶屋敷の一員になったような、そんな実感があった。

 

 ……それともうひとつ。

 俺は自分の傷跡を「氷の結晶」に似ていると思っていた。

 

 けれど、彼女たちの頬にそれがあると……。

 同じ文様のはずなのに、不思議とそれらは蝶々の羽のようにも見えた――。

 

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