TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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第30話『お酒は百薬の長?』

 

 と、まぁそんな感じで。

 お正月ということもあり、みんなお祝いムードで過ごしていたのだが……。

 

「姉さん! 呑みすぎです!」

 

「えーん、しのぶちゃんのイケズぅ~! やんやん、もっと呑むのぉ~!」

 

 なんか、カナエが俺が知ってるカナエじゃなくなってた。

 こ、これはいったい……?

 

「カナエさま、お酒が入るといっつもああなの」

 

 アオイが苦笑しながら教えてくれる。

 そうか、俺は大人になったカナエを知らなかったけれど……なるほどなぁ。こうなるのかぁ。

 

「あのね~しのぶ~、お酒はね~、ちょっと吞むくらいならお薬なのよ~?」

 

「そんなわけないでしょう!? お酒は少量でもちゃんと毒です!」

 

「もう~、イジワル言わないで~。ほら、しのぶも一緒に吞みましょうよ~」

 

「吞みません」

 

「えぇ~ん、姉さん寂しい~」

 

 カナエがしのぶに絡んでいた。

 俺は見かねて「あのー」と手を上げる。

 

「じゃあ、よければわたしが付き合いましょうか?」

 

「まふゆちゃんいいの~? 大好き~!」

 

「コラー!? まふゆさんこそ、若いんだからダメに決まっているでしょう!?」

 

「あ、いや……」

 

 と言いかけて「ハッ」とする。

 そうか、これは3度目の正直のチャンス!

 

「そのですね、じつはわたし年齢は――」

 

「年齢がわからないからといって、呑んでいい理由にはなりません!」

 

「そ、そうじゃなくて!?」

 

「姉さんも、これは没収です!」

 

「や~~~~ん、しのぶのバカ~~~~!」

 

「おバカはどっちですかーーーー!?」

 

 うーん……。

 なんかもう、俺が本当の年齢を告げるタイミングは一生来なさそうだった――。

 

   *  *  *

 

 お正月が終わってしばらく。

 蝶屋敷での生活はゆったりと過ぎていった。

 

 といっても、患者さんは次々と運ばれてくるし、しのぶも任務でときどき屋敷を空けたりと……決してヒマではなかったのだけれど。

 

「こーら、まふゆ! ちゃんと起きなさい!」

 

「う、うぅ~ん……まだ、眠いです……」

 

「ダメ! もうっ、だらしない!」

 

 アオイにムリヤリ布団を引きはがされてしまう。

 うぅっ、寒い……。

 

「アオイさん、どうして朝に起きないといけないんでしょう? わたしは夜型なんです」

 

「そんな人なんていません! 勝手に変な概念を作らない!」

 

 うぅ~、本当にあるのに。

 まぁ、今から100年後の話だけれど。

 

 俺は長年、鬼を狩る旅をしていた。

 そして、ヤツらが現れるのは夜。

 

 だから、必然的にその時間に合わせた生活リズムになってしまい……。

 それがもう身体に沁みついてしまっているのだ。

 

「むしろ、なんでみんな朝に起きられるんですか。夜だって鬼と戦ってるはずなのに……いったい、いつ寝てるんですか」

 

「たしかに? しのぶさまが寝ているお姿ってあたしもほとんど見ない気が」

 

 アオイが「あれ?」と首を傾げて考えはじめる。

 俺は布団をかぶりなおして、もうひと眠りを……。

 

「って、コラー!?」

 

「……バレました」

 

「まったくっ。ほら、もう朝ごはんができてるから」

 

「は~い。……ふわぁぁあ~」

 

 俺は諦めて、大きなあくびをしながら身体を起こした。

 本当に眠いが、ここで起きないと心配させてしまうからなぁ……。

 

 なぜなら、じつは俺の寝起きが悪い一番の理由はべつにあったりするから。

 それは――”低体温”だ。

 

 『氷の呼吸』を使い続けたせいで、俺は平熱が非常に低くなってしまっている。

 だが事情を知らない彼女たちからすれば、そのことは心配のタネなわけで……。

 

「はい、じゃあ立って。両手広げてー」

 

「はーい。……じゃなかった。アオイさんわたしもう自分で……」

 

「あっ、そうだったわ」

 

 今まで、着替えはアオイが手伝ってくれていた。

 左腕が骨折しており、ひとりでは難しかったから。

 

 だけど、今は懸架も添え木も外されて……。

 

「本当によかったわね! 早くくっついて!」

 

「ですね。しのぶさんの薬、ビックリするくらいよく効きました」

 

「いやいや、それを差し引いても早かったわよ!? きっと若いからね!」

 

 ごめんなさい、実際はそんなに若くないので……。

 俺の治りが早かったのは、こっそり『回復の呼吸』を使っていたからだ。

 

「あんたももう蝶屋敷の一員なんだから、これからはしっかりと働いてもらうわよ!」

 

「はぁい」

 

 言って俺は立ち上がる。

 まだ、しばらくはこんな感じの日々が続くのだろう。

 

 そんなことを俺は思っていた。

 いや……続いてくれることを願っていた。

 

 だが、それでも運命の歯車は回りはじめる。

 望むと望まざるとにかかわらず――。

 

   *  *  *

 

「えっとカナヲさん? そこでなにをしてるんですか?」

 

「……っ!」

 

 カナヲの肩がビクゥン! と跳ねた。

 振り返った彼女の手には――”刀”が握られていた。

 

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