TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手 作:可愛ケイ@VTuber兼小説家
と、まぁそんな感じで。
お正月ということもあり、みんなお祝いムードで過ごしていたのだが……。
「姉さん! 呑みすぎです!」
「えーん、しのぶちゃんのイケズぅ~! やんやん、もっと呑むのぉ~!」
なんか、カナエが俺が知ってるカナエじゃなくなってた。
こ、これはいったい……?
「カナエさま、お酒が入るといっつもああなの」
アオイが苦笑しながら教えてくれる。
そうか、俺は大人になったカナエを知らなかったけれど……なるほどなぁ。こうなるのかぁ。
「あのね~しのぶ~、お酒はね~、ちょっと吞むくらいならお薬なのよ~?」
「そんなわけないでしょう!? お酒は少量でもちゃんと毒です!」
「もう~、イジワル言わないで~。ほら、しのぶも一緒に吞みましょうよ~」
「吞みません」
「えぇ~ん、姉さん寂しい~」
カナエがしのぶに絡んでいた。
俺は見かねて「あのー」と手を上げる。
「じゃあ、よければわたしが付き合いましょうか?」
「まふゆちゃんいいの~? 大好き~!」
「コラー!? まふゆさんこそ、若いんだからダメに決まっているでしょう!?」
「あ、いや……」
と言いかけて「ハッ」とする。
そうか、これは3度目の正直のチャンス!
「そのですね、じつはわたし年齢は――」
「年齢がわからないからといって、呑んでいい理由にはなりません!」
「そ、そうじゃなくて!?」
「姉さんも、これは没収です!」
「や~~~~ん、しのぶのバカ~~~~!」
「おバカはどっちですかーーーー!?」
うーん……。
なんかもう、俺が本当の年齢を告げるタイミングは一生来なさそうだった――。
* * *
お正月が終わってしばらく。
蝶屋敷での生活はゆったりと過ぎていった。
といっても、患者さんは次々と運ばれてくるし、しのぶも任務でときどき屋敷を空けたりと……決してヒマではなかったのだけれど。
「こーら、まふゆ! ちゃんと起きなさい!」
「う、うぅ~ん……まだ、眠いです……」
「ダメ! もうっ、だらしない!」
アオイにムリヤリ布団を引きはがされてしまう。
うぅっ、寒い……。
「アオイさん、どうして朝に起きないといけないんでしょう? わたしは夜型なんです」
「そんな人なんていません! 勝手に変な概念を作らない!」
うぅ~、本当にあるのに。
まぁ、今から100年後の話だけれど。
俺は長年、鬼を狩る旅をしていた。
そして、ヤツらが現れるのは夜。
だから、必然的にその時間に合わせた生活リズムになってしまい……。
それがもう身体に沁みついてしまっているのだ。
「むしろ、なんでみんな朝に起きられるんですか。夜だって鬼と戦ってるはずなのに……いったい、いつ寝てるんですか」
「たしかに? しのぶさまが寝ているお姿ってあたしもほとんど見ない気が」
アオイが「あれ?」と首を傾げて考えはじめる。
俺は布団をかぶりなおして、もうひと眠りを……。
「って、コラー!?」
「……バレました」
「まったくっ。ほら、もう朝ごはんができてるから」
「は~い。……ふわぁぁあ~」
俺は諦めて、大きなあくびをしながら身体を起こした。
本当に眠いが、ここで起きないと心配させてしまうからなぁ……。
なぜなら、じつは俺の寝起きが悪い一番の理由はべつにあったりするから。
それは――”低体温”だ。
『氷の呼吸』を使い続けたせいで、俺は平熱が非常に低くなってしまっている。
だが事情を知らない彼女たちからすれば、そのことは心配のタネなわけで……。
「はい、じゃあ立って。両手広げてー」
「はーい。……じゃなかった。アオイさんわたしもう自分で……」
「あっ、そうだったわ」
今まで、着替えはアオイが手伝ってくれていた。
左腕が骨折しており、ひとりでは難しかったから。
だけど、今は懸架も添え木も外されて……。
「本当によかったわね! 早くくっついて!」
「ですね。しのぶさんの薬、ビックリするくらいよく効きました」
「いやいや、それを差し引いても早かったわよ!? きっと若いからね!」
ごめんなさい、実際はそんなに若くないので……。
俺の治りが早かったのは、こっそり『回復の呼吸』を使っていたからだ。
「あんたももう蝶屋敷の一員なんだから、これからはしっかりと働いてもらうわよ!」
「はぁい」
言って俺は立ち上がる。
まだ、しばらくはこんな感じの日々が続くのだろう。
そんなことを俺は思っていた。
いや……続いてくれることを願っていた。
だが、それでも運命の歯車は回りはじめる。
望むと望まざるとにかかわらず――。
* * *
「えっとカナヲさん? そこでなにをしてるんですか?」
「……っ!」
カナヲの肩がビクゥン! と跳ねた。
振り返った彼女の手には――”刀”が握られていた。