TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手 作:可愛ケイ@VTuber兼小説家
俺はカナヲとともに
最終選別の集合場所である境内には、俺の
「……よかった」
まずは「ホッ」と安堵する。
カナヲを引き留めなくて正解だった。タイミングは”今”だったのだ。
そんな俺の呟きが聞こえてしまったらしい。
黄色い髪の少年がチラリとこちらに視線を向けてくる。
そうだった、彼は耳がいいんだった。
俺はカナヲの陰に入って、その視線を遮った。
「……?」
カナヲが不思議そうにこちらを見てくる。
俺が隠れたのは、重要人物となるべく関わらないようにするためだ。
自分という存在が歴史にどのような影響を与えてしまうのか、わからないから。
そのためにいつもとは装いも変えていた。
頭から大きめの羽織を
本当は染め粉があれば一番だったのだけれど、急には見つけられなかった。
それから、化粧で頬の傷跡も隠している。
やりかたは以前、カナエが教えてくれていた。
「私はそのままのまふゆちゃんも大好きだけれど~、いつかまふゆちゃんが『そうしたい』って思う日が来るかもしれないから、教えておくわね~」
と言って。
なるべく目立たないためにそうしたのだが、こうして実際に来てみると……。
――なんか、変な髪色してる人とか、顔に傷ある人とか多くね!?
わざわざ、ここまでやって隠す必要はなかったかも。
まぁ、もう今さらだけど。
「この
「ここで7日間生き抜く。それが最終選抜の合格条件でございます」
黒髪と白髪の子どもが交互に話して、ルールを説明してくれる。
そして……。
「「では、いってらっしゃいませ」」
最終選別がはじまった――!
* * *
鬼どもが嫌う、藤の花が咲いているエリアを出て山の中腹へ。
俺とカナヲは一緒に行動していた。
「カナヲさんはこれからどうするか、決めていますか?」
「……7日間生き抜く?」
「そ、そうではなく」
カナヲが戦えるかどうかもわからない。
あとは水や食料なんかもどうにかしないと。
「とりあえず水場を探しましょうか」
こくりとカナヲが頷いて、俺たちは歩き出した。
と、そのときだった。
「キヒヒ! 女だ、女! それもふたりも!」
「っ……!」
なんとも幸先の悪い。
さっそく、鬼と出くわしてしまう。
「……仕方ない」
とりあえずは俺が倒すしかないだろう。
俺は頭から被っていた羽織をめくった。
刀を抜くためにはそうする必要があったのだ。
なぜなら、今の俺は刀を背中にかついでいたから。
――せめて、脇差があればよかったんだけど。
この日輪刀もカナヲのものと同様、保管庫から拝借したものだ。
そのため……まぁ、当然なんだが俺に合っていない。
俺には長すぎるのだ。
使うにもそうだが、なにより腰に差そうとすると鞘の先端……
それでかつぐしかなかった。
正直、あまり使いたいシロモノではないが……やむを得ない。
俺はカチャリと、かついでいる刀の柄に手をかけた。
鬼はそんな俺を見てニヤニヤと笑っていた。
「んんんー? なんだぁオメェ? ずいぶんと白いなぁ? 白い女だ! うまそうだ!」
「……うん?」
この反応……もしかして、この鬼は俺のことを知らないのか?
いや、当たり前か。
俺にとってはまだ最近の記憶だが、実際には400年も昔の話。
無惨も、鬼ならまだしも、まさかあの時代の人間が今も生きているなどとは思うまい。
「これって使えるんじゃ?」
もしかして、不意を突けるのでは?
ただし、使えるのは一度きりだ。
一度でも察知されれば、無惨を介してすべての鬼に情報が伝わってしまう。
無惨は鬼の心が読める。
離れている鬼からでも、ぼやけはするが可能だったはず。
となると、この鬼はなるべく実力を隠して倒したい。
「キヒヒ! なんだぁ、ビビってんのかぁ? 来ねぇなら、こっちからいっちまうぜ――あん?」
「えっ?」
虚を突かれたのは鬼も俺も一緒だった。
ふわり、と桃色の着物が俺のすぐそばを通りすぎていた。
「――フゥゥゥ」
独特の呼吸音が聞こえてくる。
カナヲがあっという間に鬼の眼前にまで到達していた。
そして、そのまま淀みなく刀が振り抜かれる。
彼女はその技の名を告げた。
「花の呼吸・肆ノ型――”
鋭い踏み込みから、まるで衣を纏うかのような大きな円を描く斬撃が放たれる。
それがあっさりと鬼の頸を切断していた。
鬼は理解が追いついていないのか、ポカンと口を開けたままだった。
頭がポロリと落ちて……。
「あ」
その鬼の最期の言葉はそれだけだった。
灰となって消えていった。
「……ふぅ」
さすがにカナヲも緊張したのか、わずかに汗をにじませていた。
逆にいえば、たったそれだけだった。
俺は理解する。
カナヲの才能は――本物だ。