TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手 作:可愛ケイ@VTuber兼小説家
「おめでとうございます」
「ご無事でなによりです」
白髪と黒髪の子どもが告げた。
この場にいる合格者は俺を除いて4人。
最後のひとりはせっかちでもう下山しているはずだから、これで全員だ。
カナヲと俺以外はみんなボロボロ。
だが、ちゃんと生きていた。
「……ほっ」
記憶どおりの結果に心底から安堵する。
選抜中ずっと”手鬼”を探していたのだが遭遇できず、心配していたのだ。
けれど、無事に倒せていたらしい。
ここにいる以外の参加者もかなりの数を助けられたと思う。
彼らが今後ほかの道を選ぶのか、それとも鍛えなおして再挑戦するのかはわからないけれど。
「まずは隊服を――」
それからもろもろの説明を受けた。
隊服、階級、あとは玉鋼に
その間に合格者同士でもめごとがあったりもしたが――割愛。
日輪刀を打つための玉鋼を選ぶように言われる。
みんなが玉鋼の前へと移動していく。
そんな中、俺だけは足を止めたままだった。
正直、俺は迷っていた。
「……」
俺は当時、ずっと鬼殺隊に入ることを拒否し続けていた。
なのに今さら入隊だなんて、という思いがあった。
それに今回はあくまでカナヲの様子を確認するために参加しただけ。
なにより、これで歴史が大きく変わったりしたら……。
そんなふうに思考がぐるぐると回りはじめた、そのときだった。
「――まふゆちゃん、こっち」
カナヲがギュッと俺の手を握り、引っぱっていた。
ひと月前まで、俺を支えてくれていたときと同じように。
「……あぁ、そっか」
そうじゃないか。
現代の鬼殺隊は当時のそれとはちがう。
それにいざというとき戦うためには自分に合った日輪刀が必要だ。
残念ながら、かつての愛刀は雪とガレキの下。
掘りだせたところで400年も放置されてたわけで、錆びてボロボロだろう。
じゃあ、同じだけの時が経って生きてた俺はなんなんだ、って話だが……それはさておき。
俺はギュっとカナヲの手を握り返した。
そして、力強く頷いた。
「――行きましょう」
この選択が吉と出るのか、凶と出るのかはわからない。
けれど、俺は大きく一歩を踏み出した。
台の上に並べられた玉鋼を眺める。
大きさから形までどれもバラバラだ。
あいにく俺も玉鋼の目利きはそこまでできるわけじゃないからなぁ。
刀の良し悪しであれば、もうすこし判別もできるのだが。
「……くんくん」
最初に動いたのはやはり”彼”だった。
鼻を鳴らしたあと玉鋼をひとつ選び取った。
「こんなのわかんないよぅ……でも、あれ? これだけちょっと音がちがうような」
次に動いたのは黄色髪の少年。
彼はコンコンと玉鋼を叩いて、その中のひとつを選んだ。
「チッ、こんなのどれも一緒だろォが」
顔に大きな傷のある少年が、乱暴にひとつ掴み取る。
「……」
そして今度はカナヲの番。
彼女の指先で休んでいた蝶が飛んでいって、玉鋼のひとつに留まった。
「最後はわたしか……」
俺は目の粗いものは除いて、質の高いものの中から選ぶことにした。
良い鋼は見た目にも表れる――美しいのだ。
残ったものを俺はひとつひとつ手に取って比べてみて……。
そして、最後は――直感。
そのひとつだけ不思議とほかのものに比べて冷たい気がした。
それから隊服の採寸をしたり、手の甲に階級を刻んだりして――。
* * *
「あ、あ、あ……あんたたち~~~~!? ようやく帰ってきた~~~~!?」
俺たちが蝶屋敷に戻るやいなや、鉢合わせたアオイが大声で叫んだ。
すぐにしのぶたちも集まってきた。
「カナヲ、まふゆさん、ちょっとこっちへいらっしゃいな」
「……!」「ひっ!?」
しのぶは笑顔だった。
でも、目が微塵も笑っていなかった。
それから俺たちふたりはこっぴどく叱られた。
無断で最終選別に参加したもんだから、蟲柱であるしのぶへ確認が飛んでしまったらしい。
――事前の連絡がなかったが、彼女らは君が推薦したので間違いないか? と。
心配だけでなく、ずいぶんと迷惑もかけてしまったようだ。
あと、アオイたちに泣かれた。
「バカ~~~~! すっごく心配したんだからね~~~~!?」
「カナヲもまふゆちゃんもムチャしたわね~。姉さん、ビックリして息が止まっちゃったわよ~」
「「「無事でよかったです~!」」」
「あんたたち、無事だったからこそよかったものの……最終選別はすごく危ないんだからね!?」
いや、泣きながら……怒っていた。
わんわんと声をあげるアオイに、俺たちはギュ~~~~っと抱きしめられていた。
……結局、最後までカナヲは一度も鬼に土をつけられることがなかった。一緒にいた俺も同様。
でも、もしケガをして帰っていたら、これじゃあ済まなかったかもしれないな。
「ぐすんっ……にしても、あんたたちよく最終選別に合格できたわね。よっぽど運がよかったのね。……まぁ、それはあたしも人のことを言えないけど」
落ち着いてきたアオイが言う。
そうだ、彼女は最終選別でトラウマを抱えて戦えなくなってしまった隊士だ。
だからこそ、余計に心配だったのだろう。
しかも……たしか、そのときの同期はすでに『柱』に至っているはず。
自信をなくしてしまうのも、ムリないと思った。
「そうですね、
「カナヲ、あんたちゃんと妹を守ったのねー! えらいよぅ~!」
泣きながらアオイがカナヲの頭を撫でていた。
微妙にニュアンスが伝わっていない気がするが、まぁいいか。
「カナヲ、まふゆさん――いえ、まふゆ」
しのぶが名前を呼ぶ。
俺たちは姿勢を正して彼女に向き合った。
「こうなった以上は仕方ありません。これからは――私があなたたちを鍛えます」
そう、しのぶは俺たちへと告げた――。