TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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第38話『大太刀のごとき日輪刀』

 

「よく来てくださいましたね」

 

 しのぶがそう、おかめ面のふたりに告げる。

 広間にみんなが集まっていた。

 

 カナエやアオイも俺たちの日輪刀に興味津々のようだった。

 が、だれひとりとして刀鍛冶が女性というところには違和感を持っていない様子。

 

 ――わからない。

 

 本当にわからなかった。

 なんでこんな変化が起こってしまったのか。

 

「まず、こちらが栗花落カナヲさまの刀になります。日輪刀は猩々緋砂鉄(しょうじょうひさてつ)猩々緋鉱石(しょうじょうひこうせき)という、陽光を吸収した鉄から作られており……」

 

 説明を受けながら、カナヲが渡された日輪刀を鞘から抜いた。

 それはスゥっときれいな桜色へと染まっていった。

 

 俺の記憶どおり、やはり彼女の適正は『花の呼吸』のようだ。

 人によっては、ここで見えた色に合わせて使う呼吸を変えることもある。

 

「あらあら、カナヲ。よかったわね~」

 

「……!」

 

 カナヲなりの精一杯のよろこびの表現だろう。

 小さくはにかんで、ギュッと抱きしめるみたいに刀を抱いていた。

 

 同じく桜色に染められた鮫皮に、白い柄糸。

 女性らしい色合いの柄と桜色の刀身は、非常にマッチして見えた。

 

 ……ちなみに『鮫皮』という名前だが、サメの皮ではない。

 この場合、実際に使われているのはエイの皮だったりする。

 

「それで、こちらが幸代まふゆさまの刀なのですが……あのぉ~、まふゆさまはどちらに?」

 

「えっ」

 

 キョロキョロとしだしたおかめ面に、俺は思わず声を出す。

 しのぶたちが俺に視線を向けていることで、彼女も気づいたのだろう。

 

「……えっ!?」

 

 おかめ面は俺を見て、なぜか驚きの表情をしていた。

 それから面ごしでもわかるくらい、ダラダラと汗を流しはじめる。

 

「あの、どうかされましたか?」

 

「ふぁえっ!? ぜぜぜ、全然っ!? どどど、どうもしてませんけどぉ~!?」

 

「……」

 

 あきらかに、どうかしていた。

 そして、スッと刀箱を背中のほうに隠した。

 

「すすす、すいません。どうやら刀を持ってくるのを忘れたみたいでぇ~」

 

「いや、でもその背中の……」

 

「わ、忘れたんですぅ!」

 

 おかめ面はそう言い張った。

 だが、もうひとりのおかめ面……先輩おかめに言われてしまう。

 

「はぁ? アンタなに言ってんのよ。『今日がお渡しの日だ~!』って道中、何度も刀箱に頬ずりしてたじゃないの。早く渡してあげなさいよ」

 

「わわわっ、先輩!? それは言っちゃダメですぅ~!?」

 

「いいから、早くしなさい!」

 

「う、う、うぅ~~~~っ」

 

 やがて、おかめ面は観念したようにスッと刀箱を差し出した。

 だが箱を開けようとしないので、俺は自分で手を伸ばした。

 

 てっきり「自分で開けろ」という意味なのかと思ったのだが……。

 おかめ面は、バン! と音を立てて箱のフタを押さえていた。

 

「あの?」

 

「……怒りませんかぁ?」

 

「その、なにが?」

 

「絶対に怒らないと誓ってくださいますか!? でなければ、この中は見せられませぇん!」

 

「は、はぁ? あの、べつに怒らないので手をどけてほしいんですが」

 

「言いましたからね!? 怒らないって、言いましたからねぇ~!?」

 

 なんかやたらと念押しされて、ようやくおかめ面は手をどかした。

 いったいなんなんだ、と思いながら俺は刀箱を開き……。

 

「「「……え!?」」」

 

 全員が思わず、声を上げていた。

 俺は刀箱からその日輪刀を取り出し、床に立てた。それは……。

 

「あの、これ……どう考えても、わたしには長すぎると思うんですけど!? いや、わたしというか……だれが使うにしても!?」

 

「ごごご、ごめんなさいぃ~~~~!」

 

 おかめ面は頭を抱えて、小さく丸まっていた。

 その刀は――俺の身長と同じだけの長さがあった。

 

「これはさすがに……困ったわね~」

 

 あのカナエでさえ頬に手を当てて、眉を八の字にしていた。

 いったい、なんでこんなことに?

 

「しくしくしく……わ、わざとじゃないんですぅ~! ただ、その……届いた資料に書かれていた身長がですね、あのその、あまりにも小さすぎてぇ~!」

 

「それで?」

 

「……てっきり、尺を書き間違えたのだと思ったんですぅ~!」

 

「「「はぁぁ~~~~」」」

 

 全員が盛大にため息をついた。

 ということはアレか。1尺……俺はおよそ30センチも身長を勘違いして刀を打たれてしまったわけか。

 

「いや、だとしてもまだ刀が長すぎるような」

 

「そ、そのですね。まふゆさまは長めの刀を扱うのが得意だと聞いていて……しかも刀を差すのではなく、かついで使われるそうだったので」

 

「いったい、だれがそんな――あっ」

 

 だれがそんなデマを、と言いかけて気づく。

 ……微妙に心当たりがなくもない。

 

 俺がそのようにして刀を使ったのは、最終選別のときだけだ。

 つまり、あのときだれかが……いや、それなら気づいているな。

 

 だから――おそらくは鎹烏。

 それが見ていて報告されてしまったのだろう。

 

 まさか実力を隠したことが、こんな形で裏目に出るだなんて。

 いや、でも……。

 

「だとしても、わたしが本当に長い刀を得意としているか……ひと言、確認があってもよかったと思うんですが」

 

「ア、アンタそんなことも聞いてなかったの!?」

 

「えぇ~!? そんな確認が必要だったんですかぁ~!?」

 

 やっぱり必要だったらしい。

 俺は確信した。

 

 

 こいつ――ポンコツだ!?

 

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