TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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第39話『歴史の転換点』

 

「ごごご、ごべんなざいぃ~~~~!」

 

「う、うちのバカが本当に申し訳ありません~~~~!」

 

 おかめ面と先輩おかめが揃って頭を下げていた。

 まぁ、でも誤解させてしまった俺にも若干の責任が……あるかもしれないし。

 

 それよりも問題はこの長すぎる刀。

 いったいどうしたものか……。

 

「あ、あのぉ~」

 

 困り果てていると、スッとおかめ面が手を上げた。

 視線を向けると、彼女は言った。

 

「よ、よかったらちょっとだけでも握ってみませんかぁ~!? ほらっ、もしかしたらしっくりくるかもしれないし! そしたら、私も怒られないで済むっていうかぁ~!?」

 

「バカっ!? アンタまだそんなことをっ!?」

 

「……まぁ、軽く持ってみるだけなら」

 

「あ、ありがどうございまずぅ~!」

 

 俺は彼女の必死さに押し負けた。

 柄を握って一礼し、スーッと刀を抜――。

 

「……あの~、だれか鞘のほうを引っ張ってもらっていいですか?」

 

 手の長さが全然足りなくて抜けなかった。

 部屋にビミューな空気が流れていた。

 

「アンタもう諦めなって。さすがにこれはムリだよ」

 

「ままま、まだわかりませんからぁ~!? わ、私が鞘を持ちますぅ~っ!」

 

 おかめ面がなかばヤケクソになりながら、手伝ってくれた。

 シャランと刀身が鞘から引き抜かれる。

 

 こうして見ると、ますます長いな。

 刃渡りだけでも3尺――90センチはありそうだ。

 

 刀が長すぎるから、その補強のためだろう……目釘――柄と刀身との繋ぎ(・・)が柄尻にもあった。

 現代でも居合刀に見られることがある――いわゆる”控え目釘”だ。

 

「にしても……これって本当に打ち刀、なんですよね? 太刀……いや、”大”太刀ではなく」

 

「はいぃ~」

 

 長さとしてはそちらに近かった。

 馬上であくまで遠心力によって扱うならそれでもいいだろうが……今の時代には当然、そして目的にもあまりそぐわないような。

 

「じつは、戦国時代にはこういう3尺もある打ち刀がそこまで珍しくなかったんじゃ? っていう記録を見つけてぇ~。それで私もつい作ってみたくなったと言いますかぁ~」

 

「……」

 

「い、言い訳でウソ吐いてるわけじゃないですよ!? 江戸時代に磨上(すりあ)げられてしまって――柄を切って短くされてしまったものが多くて、ほとんど現存はしてないみたいですけどぉ~!?」

 

「いえ、べつにそこを疑っているわけではないのですが」

 

 問題はこの刀が長い……という事実だ。

 これだけ大きいと俺が扱うのは難しいし、なにより重すぎるだろう。

 

 そう、決めつけていた。

 だが引き抜いて実際に持ってみて――俺は驚いた。

 

 

「……っ!? この刀、ありえないくらいに――軽い(・・)!?」

 

 

 もちろん、俺が以前使っていた愛刀に比べれば圧倒的に重い。

 だが、この長さと外見からは考えられないくらいに軽いのだ。

 

 困惑していると「えへんっ!」とおかめ面が胸を張っていた。

 

「じつはですね! その刀は大部分が特殊な、非常に軽い合金でできているんですぅ~!」

 

「合金って、えぇっ!? それじゃあ鬼を討てないんじゃ!?」

 

「あっ、でもそれはあくまで芯鉄(しんがね)などで、刃にはきちんと陽光を吸収した鉄を使っているのでご安心くださいぃ~!」

 

「……そうなんですか?」

 

「まぁ、多少は効果も落ちちゃいますけれど、それ以上の利点があると自負してますぅ!」

 

「いやでも、うーん。やっぱり突飛すぎるというか」

 

「突飛でなにが悪いのですかぁ~! 私も”女流刀鍛冶”の端くれ! むしろ鋭意的な刀を作ってなんぼってもんです! えっへん!」

 

「……女流刀鍛冶?」

 

 はじめて聞いた単語だ。

 困惑していると、カナエがフォローを入れてくれた。

 

「知らなくてもムリないわね~。なんでも戦国時代(・・・・)に、日輪刀職人の隠れ里……刀鍛冶の里にだけ生まれた文化? みたいだから~」

 

「えっ? 戦国時代?」

 

 それを聞いた瞬間、ざわりとした。

 いやでも、そんな……まさか。

 

「もともと、私たちの里でも鍛冶は男だけのものだったそうです。だけどその昔、女流刀鍛冶の始祖と呼ばれるかたがそれに否を唱えて、刀を打ちはじめたんですよぅ!」

 

 おかめ面が自慢のように言ってくる。

 

 いや実際、その人物は彼女たちにとっての英雄なのだろう。

 先輩おかめも「うんうん!」と深く頷いていた。

 

「ただ、女性が普通に刀を打つだけでは腕力の勝る男性より良いものを作るのは難しく、それで様々な創意工夫をして刀を打つようになったそうでぇ~」

 

「創意工夫っていうのは?」

 

「たとえば軽量化して女性にも扱いやすくしたりとかぁ~。私が打った刀もそのかたの作品を参考にしているんですよぉ~! ほかにも、そのかたは鍛冶にカラクリを導入したり……」

 

「あの、そんなことしちゃってもいいんですか!? なんか、もはや――」

 

 

「――『こんなの日本刀じゃない』、ですか?」

 

 

「まぁ、はい。語弊を恐れずに言えば」

 

「それこそ昔は、みんなからそう言われてたみたいですよぉ~」

 

 まぁ、そうだろうな。

 俺の知るかぎりだが、それは『日本刀』という定義から外れてしまっている。

 

「でも、そのかたはおっしゃったそうです」

 

 

「――”だれが打ったかも、どう打ったかも関係ない。大事なのはその刀が鬼を斬れることだ”」

 

 

「そして本当に、当時の里でだれよりも斬れる日輪刀を打って、男どもを全員黙らせてしまったそうですぅ~」

 

 俺はそんなおかめ面の話を聞いて……。

 

 ――あ、あぁあああ~~~~!?

 

 と、ようやく思い出していた。

 あれは縁壱と出会ってから1年くらいのころ、俺は刀鍛冶の里へと出向いたことがある。

 

 そこで刀鍛冶を目指す女性を励ましたことがあった。

 まさに、今……おかめ面が言ったような内容で。

 

「まふゆさま? ど、どうかされましたかぁ~?」

 

「い、いえっ!? ななな、なんでもないですよ!?」

 

「そうですかぁ~?」

 

 そんなの、今の今まで完全に忘れていた。

 だって俺の視点でも10年は昔のことだ。覚えてるわけないだろ!?

 

 とくに当時の俺はまだ、自分の行動が歴史に影響するだなんて考えていなかったから……。

 それにまさか、あんな些細なことで未来がここまで大きく変わってしまうだなんて。

 

「な、なんてこった……」

 

 もはや、どれだけの範囲に影響を及んでいるかもわからない。

 俺はもう天を仰ぐしかなかった――。

 

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