TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手 作:可愛ケイ@VTuber兼小説家
戦国時代に発した俺のひと言が、歴史を大きく変えてしまっていた!?
女流刀鍛冶の誕生に、まさか自分が関わっていたなんて!?
「そんなわけで長にも認められて、そのかたは”女流”刀鍛冶と呼ばれるようになりましたぁ。次第に彼女のあとへ続く者が増えていき、今に至ります」
「そうだったんですか。でも……あれ? ”女性の”刀鍛冶、ではないんですか?」
「それはそのぉ~……里の男どもにも自尊心がありますから。おそらく
「それで”女流”というわけですか。自分たちとちがう流派としてなら認められた、と」
「そういうわけですぅ~」
「まふゆちゃん、女流刀鍛冶を甘くみちゃいけないわよ~。彼女たちの打つ刀は私たちみたいな女性が使いやすいようにできている――いわゆる”女性用”の日輪刀なんだから」
「女性用、ですか?」
改めて、俺の手元にある長すぎる日輪刀を眺める。
……ぶっちゃけ、飛び抜けて出来の良い刀というわけではない。
いや、ちがうな。
この場合比べる対象が悪すぎるだけだろう。
俺が以前に使っていたのは刀鍛冶の全盛期――戦国時代に作られたものだ。
もっとも多く人や物を、刀が斬っていたころの作品。
その中でも里イチの腕前である長の打った刀だ。
あれが後にも先にも、出会えぬだろう極めつけのひと振りだっただけ。
そのうえで言うが……。
「正直、驚きました」
この刀は長い。長すぎる。
なのに……。
――驚くほど
長い刀を女性でも振るいやすいよう、工夫が随所に詰め込まれている。
デザインもそうだが……。
柄も細く、長めに作られていた。
手の小さな女性でも握りやすく、かつテコの原理により弱い力でも刀を支えやすい。
そしてなによりは、やはりこの軽量化。
もちろん、刀は軽ければ良いというものでもないのだが、しかし……。
「私はもう隊士ではないから手放してしまったけれど、柱だった当時は、私も彼女たち――女流刀鍛冶が打ってくれた刀を使っていたのよ~」
「えっ?」
「うふふ~、驚いたでしょ~? じつは姉さん、昔は柱だったのよ〜?」
「いや、それは知ってますけれど」
「え~!? もうだれか教えちゃってたの~!? 姉さんが言って驚かしたかったのに~!」
そうカナエが腕を組んで、ぷくーっと頬を膨らませた。
あっ!? もしかすると、まだだれにも聞いたことなかったかも。
勘違いしてくれて助かった……じゃなくて!
さっきの発言、なにか引っかかった気がしたのだ。
「そんな元柱が保証するわ。彼女たちの打つ刀は良いものよ~。私だって……」
「――もし
「……ぁ」
あぁあああ~~~~っ!?
自分の中ですべてが繋がった。
鬼との戦いで死ぬはずだったカナエがなぜ生きていたのか。
俺の知らないところでなにが起こったのか。
いや、ちがう。
俺がいったいなにを起こしてしまったのか。
おそらく本来の歴史と、この世界とではカナエの使う日輪刀が異なっているのだ。
中でも要因として大きそうなのは、軽量化だろう。
もしかして、刀が軽かったおかげで血鬼術に気づいてから退避するまでが一瞬早かったとか?
その結果、鬼の攻撃がギリギリ致命傷に至らなかったとか?
「姉さん! そんな、めったなことを言わないでください!」
「そ、そうですカナエさま! あなたが死ぬなんてありえません!」
「……!」
しのぶとアオイが叫ぶ。
カナヲもコクコクと無言で首を縦に振っていた。
「あらあら、ごめんなさいね〜。そんなつもりで言ったんじゃないのよ~」
カナエは優しい表情を作って彼女らの頭を撫でた。
そう、彼女らにとってはそちらこそが「ありえない」「仮定の話」なのだ。
すでに変わってしまった歴史は戻らない。
だが、俺にはこの光景が”間違い”だとは思えなかった。思いたくなかった。
「ともかく、なにが言いたかったかというと――彼女たちの腕前は信頼できるのよ~。今回はたまたますれちがいが起きちゃっただけ。だから、彼女たちを信じてあげて~?」
「……そうですね。おふたりとも、さきほどは失礼なことを言ってすいませんでした」
「そ、そんな、まふゆさま!? どうかお気になさらず! 悪いのはこのバカなので!」
「ふぎゃっ!?」
恐縮するように先輩おかめは、おかめ面の頭を再度下げさせた。
おかめ面の顔がべちゃり、と畳に引っ付いていた。
俺はチャキリと刀を握り、その評価を訂正した。
これは……。
「これはとても――良い”刀”です」
とはいえ、俺に合っていないことには変わりないけどな。
俺は長すぎる刀を構えながら、そんなことを思い……。
「……ふ、ふふふ」
どこからともなく笑い声が聞こえてきた。
みんながそちらへと視線を向ける。
声の出所は頭を下げさせられているおかめ面だった。
彼女は先輩おかめの手を跳ね除けながら身体を起こし、言った。
「まふゆさま。ついに――刀をきちんと
「……えっ? あぁっ!?」
や、やってしまった!?
さっきまではちゃんと気をつけて、完全には握りきらず支えるだけにしていたのに!?
今は柄をしっかりと握り、構えてしまっていた。
いや、ちがう。この刀に「そうしたい」と思わされてしまったのだ。
俺の呼吸に合わせて、刀身の色が変化をはじめていた――。