TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手 作:可愛ケイ@VTuber兼小説家
「あっ」
うっかり握りしめてしまった日輪刀の色が変化をはじめていた。
塗り替わったその刀身は……。
「――
俺が予想していた、氷のように透き通った刀身ではなかった。
困惑しているとほかの面々も感想を述べはじめる。
「いえ、よく見るとすこし透けているような?」
「たしかにね~。でも、青系統なのは間違いないし、適性は『水の呼吸』なのかしら~?」
「それならあたしと同じね!」
しのぶとカナエ、それからアオイが意見を交わす。
しかし、これはいったいどういうことだ。
もしかして、俺の『呼吸』の適性が変わったのか?
いや、ちがうな。
「……そういうことか」
俺はその原因に思い当たった。
理由はおそらく、ふたつ。
ひとつは刀鍛冶の腕前。
彼女は見るからにまだ新米の刀鍛冶だった。
というか、比べる対象が悪すぎる。
俺の愛刀を打ったのは里長だ。しかも戦国時代の。
なんでも、当時の刀鍛冶の技術は口伝で、現代には伝わらず廃れてしまっているのだとか。
いわゆるロストテクノロジーというやつだ。
そして、もうひとつ。
これは彼女にはどうしようもないことだが……。
――玉鋼の”質”がちがう。
玉鋼の製法もまたロストテクノロジーとなっている。
現代の技術では同じものを作ることはできない。
つまり、まとめると……。
――刀のクオリティの低さ。
あくまで当時の刀と比較すると、であって……。
この刀自体の質が『悪い』というわけでは決してない。
ただ結果としてそれが、透明度の差に繋がった。
さらに印象のちがいに大きく起因しているのは……。
「この日輪刀、刃以外の部分はほとんど色が変わらないのね」
アオイが興味深そうに言った。
軽量な特殊合金が使われている影響だろう。刃以外は金属色のまま。
そういった要因が重なって、前世で使っていた刀と大きく印象が異なっている。
おかめ面はうれしそうに叫んでいた。
「どぅっらっしゃぁ~~~~! ふはははっ! 握りましたね? 刀の色が変わりましたね? こうなったらこっちのもんですぅ~!」
「あ、アンタぁ!?」
「もう返したって遅いですよーぅ! まふゆさまのお刀はその長刀で決定です! はぁ~よかった! これで私も怒られずに済みますよねっ!」
「おバカー!? そんなわけないでしょー!?」
「えぇっ!? す、済まないんですかぁ~!?」
「「「……」」」
全員が呆れた目でおかめ面を見ていた。
先輩おかめが必死にぺこぺこと頭を下げる。
「すみません、すみません! このバカの言うことなんて気にしなくていいですから! 色が変わったからといって必ず、その刀を使う必要はありませんので!」
「そ、そんなぁ!?」
「ちょっと考えればわかるでしょうが!? 合っていない刀なんて渡して、もしそれで鬼との戦いに影響が出たらどうするの!?」
おかめ面は「ガーン!」と落ち込んでいた。
それから、まるで赤ちゃんみたいに駄々をこねはじめた。
「ヤですぅ~!? このまま里に帰って怒られたくないぃ~!?」
「あ、アンタねぇ……」
「――構いません」
「……えっ!?」
先輩おかめの言葉を遮るように、俺は告げた。
慌てた様子でアオイが言ってくる。
「まふゆ、本当にいいの!? もし遠慮してそう言ってるなら、あんたの命が……」
「いえ、そういうつもりではなく」
最初は断るつもりだった。
だが、この刀を
これは使える。
俺にとっては都合がいい。あくまで現状にかぎった話だが。
「本当にこれでいいと思っています。とはいえ、次に握るなら短い刀がいいですけれどね」
この長さでこの色ならば、使っていても俺の正体と繋がる可能性は低い。
それに、これは俺の予想だが……。
おそらく、最初の一撃――不意打ちにそこまで速さは求められない。
むしろ、重要なのは威力のほうになるはずだ。
「あ、ありがとうございます、まふゆさまぁ~! あなたは私の恩人ですぅ~!」
おかめ面は涙と鼻水を垂らしながら、俺の腰に抱き着いてきていた。
ぎゃーっ!? 新品の隊服に鼻水がー!?
「まったくアンタは……調子がいいというか、なんというか」
先輩おかめはため息を吐いていた。
そんなこんなで俺は新たな日輪刀を手にして――。
* * *
……その数日後。
俺とカナヲは蝶屋敷の玄関先に立っていた。
「カナヲ、まふゆ、忘れものはない?」
「「はい」」
しのぶの言葉にふたり揃ってうなずいた。
そんな俺たちへ、アオイは心配そうに視線を向けていた。
「ふたりとも本当に大丈夫? もし怖いなら……」
「アオイ、きっと大丈夫よ~。あなたもわかってるでしょう? ふたりは強いもの~」
不安そうなアオイに、カナエはやさしく寄り添った。
改めてしのぶが言う。
「ふたりとも、わかっているとは思いますが――必ず無事で帰ってきなさい。それじゃあ、いってらっしゃい」
「「いってきます」」
そうして、俺たちは蝶屋敷をあとにした。
しかし、門を出たところですぐにまた立ち止まる。
「私、こっち」
「わたしはあっちだね」
「まふゆ、じゃあね」
「うん。カナヲも気をつけて」
そう言葉を交わして、べつべつの方向へと歩き出した。
俺たちの”初任務”がはじまったのだ――!