TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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第41話『初任務』

 

「あっ」

 

 うっかり握りしめてしまった日輪刀の色が変化をはじめていた。

 塗り替わったその刀身は……。

 

 

「――水色(・・)?」

 

 

 俺が予想していた、氷のように透き通った刀身ではなかった。

 困惑しているとほかの面々も感想を述べはじめる。

 

「いえ、よく見るとすこし透けているような?」

 

「たしかにね~。でも、青系統なのは間違いないし、適性は『水の呼吸』なのかしら~?」

 

「それならあたしと同じね!」

 

 しのぶとカナエ、それからアオイが意見を交わす。

 しかし、これはいったいどういうことだ。

 

 もしかして、俺の『呼吸』の適性が変わったのか?

 いや、ちがうな。

 

「……そういうことか」

 

 俺はその原因に思い当たった。

 理由はおそらく、ふたつ。

 

 ひとつは刀鍛冶の腕前。

 彼女は見るからにまだ新米の刀鍛冶だった。

 

 というか、比べる対象が悪すぎる。

 俺の愛刀を打ったのは里長だ。しかも戦国時代の。

 

 なんでも、当時の刀鍛冶の技術は口伝で、現代には伝わらず廃れてしまっているのだとか。

 いわゆるロストテクノロジーというやつだ。

 

 そして、もうひとつ。

 これは彼女にはどうしようもないことだが……。

 

 ――玉鋼の”質”がちがう。

 

 玉鋼の製法もまたロストテクノロジーとなっている。

 現代の技術では同じものを作ることはできない。

 

 つまり、まとめると……。

 

 

 ――刀のクオリティの低さ。

 

 

 あくまで当時の刀と比較すると、であって……。

 この刀自体の質が『悪い』というわけでは決してない。

 

 ただ結果としてそれが、透明度の差に繋がった。

 さらに印象のちがいに大きく起因しているのは……。

 

「この日輪刀、刃以外の部分はほとんど色が変わらないのね」

 

 アオイが興味深そうに言った。

 軽量な特殊合金が使われている影響だろう。刃以外は金属色のまま。

 

 そういった要因が重なって、前世で使っていた刀と大きく印象が異なっている。

 おかめ面はうれしそうに叫んでいた。

 

「どぅっらっしゃぁ~~~~! ふはははっ! 握りましたね? 刀の色が変わりましたね? こうなったらこっちのもんですぅ~!」

 

「あ、アンタぁ!?」

 

「もう返したって遅いですよーぅ! まふゆさまのお刀はその長刀で決定です! はぁ~よかった! これで私も怒られずに済みますよねっ!」

 

「おバカー!? そんなわけないでしょー!?」

 

「えぇっ!? す、済まないんですかぁ~!?」

 

「「「……」」」

 

 全員が呆れた目でおかめ面を見ていた。

 先輩おかめが必死にぺこぺこと頭を下げる。

 

「すみません、すみません! このバカの言うことなんて気にしなくていいですから! 色が変わったからといって必ず、その刀を使う必要はありませんので!」

 

「そ、そんなぁ!?」

 

「ちょっと考えればわかるでしょうが!? 合っていない刀なんて渡して、もしそれで鬼との戦いに影響が出たらどうするの!?」

 

 おかめ面は「ガーン!」と落ち込んでいた。

 それから、まるで赤ちゃんみたいに駄々をこねはじめた。

 

「ヤですぅ~!? このまま里に帰って怒られたくないぃ~!?」

 

「あ、アンタねぇ……」

 

 

「――構いません」

 

 

「……えっ!?」

 

 先輩おかめの言葉を遮るように、俺は告げた。

 慌てた様子でアオイが言ってくる。

 

「まふゆ、本当にいいの!? もし遠慮してそう言ってるなら、あんたの命が……」

 

「いえ、そういうつもりではなく」

 

 最初は断るつもりだった。

 だが、この刀を握って(・・・)みて気が変わった。

 

 これは使える。

 俺にとっては都合がいい。あくまで現状にかぎった話だが。

 

「本当にこれでいいと思っています。とはいえ、次に握るなら短い刀がいいですけれどね」

 

 この長さでこの色ならば、使っていても俺の正体と繋がる可能性は低い。

 それに、これは俺の予想だが……。

 

 おそらく、最初の一撃――不意打ちにそこまで速さは求められない。

 むしろ、重要なのは威力のほうになるはずだ。

 

「あ、ありがとうございます、まふゆさまぁ~! あなたは私の恩人ですぅ~!」

 

 おかめ面は涙と鼻水を垂らしながら、俺の腰に抱き着いてきていた。

 ぎゃーっ!? 新品の隊服に鼻水がー!?

 

「まったくアンタは……調子がいいというか、なんというか」

 

 先輩おかめはため息を吐いていた。

 そんなこんなで俺は新たな日輪刀を手にして――。

 

   *  *  *

 

 ……その数日後。

 俺とカナヲは蝶屋敷の玄関先に立っていた。

 

「カナヲ、まふゆ、忘れものはない?」

 

「「はい」」

 

 しのぶの言葉にふたり揃ってうなずいた。

 そんな俺たちへ、アオイは心配そうに視線を向けていた。

 

「ふたりとも本当に大丈夫? もし怖いなら……」

 

「アオイ、きっと大丈夫よ~。あなたもわかってるでしょう? ふたりは強いもの~」

 

 不安そうなアオイに、カナエはやさしく寄り添った。

 改めてしのぶが言う。

 

「ふたりとも、わかっているとは思いますが――必ず無事で帰ってきなさい。それじゃあ、いってらっしゃい」

 

「「いってきます」」

 

 そうして、俺たちは蝶屋敷をあとにした。

 しかし、門を出たところですぐにまた立ち止まる。

 

「私、こっち」

 

「わたしはあっちだね」

 

「まふゆ、じゃあね」

 

「うん。カナヲも気をつけて」

 

 そう言葉を交わして、べつべつの方向へと歩き出した。

 俺たちの”初任務”がはじまったのだ――!

 

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