TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手 作:可愛ケイ@VTuber兼小説家
俺は
初任務の内容は、ここで起きた鬼の仕業だと思われる事件の調査だ。
そして、その犯人が鬼であれば討伐も含まれる。
「あのー、すみませーん」
「はいはい……あんらまぁ、かわいらしいお客さんだこと」
一軒の民家を訪ねると、おばあさんが出迎えてくれた。
ここに情報提供者がいるとのことだが、彼女がそうだろうか?
「じつはすこしお話しをうかがいたくて」
「学生さんかいねぇ」
「あっ、いえ。そうではなく」
「おせんべい食べるかい?」
「大丈夫です。それよりも最近、この町で夜ごと人が襲われ――」
「はい、おせんべい」
「えっと、ありがとうございます。それでお話なんですが――」
「あんた本当に小さいねぇ。お洋服、ちょっとおっきないかぇ?」
「うっ、ちゃんと採寸はしたんですが」
サイズはこれで合っているのだ。
ただ、詰襟って厚手なせいかちょっと大きめに見えるから……。
アオイたちにも「服に着られてるみたい」と言われてしまったし。
それに加えて、蝶柄のマフラーと雪のように白い羽織。
今は赫色の羽織はお留守番だ。
「そのおっきな荷物、重いやろう。そこに立てかけておきんしゃい」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
言って、俺は手に持っていた長い刀袋を壁に立てかけた。
この時代に刀をかついで歩いていたら捕まってしまう。
それでも、本来なら詰襟を見て憲兵だと誤解してくれるはずなのだが……。
ここまで長い刀だと言い訳のしようがないため、袋に入れるしかなかった。
「はい、ここに座りぃ。ごはんちゃんと食べとるのかぇ? ほら、これも食べねぇ」
「いえその、もう大丈夫――」
「あんたー! たしか、おもちが残っとらんかったかいねー! ちょっと持ってきとくれー! あとはお茶もー!」
「本当にもう大丈夫ですからー!?」
「あんれー? どうしたんだい。今日はずいぶんと若いお客さんが来てるじゃないか」
そこへ外から来客だろう、ほかの老婆が現れる。
いや、老婆ひとりではない。ほかにも老人たちがゾロゾロと集まってきて……。
「ほんとだ、ほんとだ。この家にじじばば以外がおるなんて珍しいじゃないか」
「めんこい子だねぇ。ほら、おかし持っとるけぇ、食べな」
「こっちも食いねぇ」
「わぷっ!? あの、本当にお構いなくー!?」
あっという間にじじばばにもみくちゃにされてしまった。
しかも、四方八方から食べものを口に詰め込まれて……。
「はふもぐあむひゃうへ、ほろれりはうひて……」
「そうかそうか、うまいか」
「ひっはーう!?」
言いたいことが全然伝わってない!?
俺がもう食べられない! ギブアップ! となって、ようやくおもてなし攻撃は終わった。
「うぷっ、も……もう大丈夫なので。それよりも、どなたか最近このあたりで起きてる事件について知りませんか?」
せっかくなので、まとめてみんなに尋ねる。
おかげでだいぶ時間を食ってしまった。
夜までに情報を集めないといけないのに……。
もし鬼が犯人であるならば、また次の犠牲者が出てしまう。
「事件ってあの、夜な夜な人が消えとるって話かぇ?」
「あそこの家の息子はんも帰ってこうへん、って聞いたのう」
「なんでも発砲音もしたっちゅう話やけど」
「それなら、たしかここのじいさんが……おぉ、ちょうどええところに」
「おいばあさん、言われたとおりにもちと茶ぁをもってきたぞ……って、んんっ? その服装は」
家の奥からやってきたおじいさんが、俺の服装を見て目を鋭くする。
なるほど、彼が情報提供者だったわけか。
「はじめまして。わたしはこの事件について――」
「わしはなにも話さん」
「えっ?」
「話さんったら、話さん! おぬしのようなガキは今すぐ帰れい!」
「えぇえええ!?」
どうやら、俺の初任務は予想外に厄介なことになりそうだった――。
* * *
「うーん、普段は子どもにやさしいやつなんじゃがのう」
残った老人たちが不思議そうに家の奥へと視線を向けていた。
俺に怒鳴ったあと、おじいさんは奥へと引っ込んでしまった。
「あの、わたしなにか怒らせるようなことをしたんでしょうか?」
「大丈夫やから、気にせんでえぇ。あんたのせいやなかぁ。最近いろいろあったさかい、すこし気が立っとるんじゃろうて」
「えっと、なにかあったんですか?」
尋ねると、この家のおばあさんが悲し気な顔になった。
それから「じつは……」と口を開いた。
おばあさんを中心に老人たちが次々と話してくれた。
それらの話をまとめると……。
おじいさんとおばあさんの孫は軍人だったという。
しかし、数日前の戦闘で亡くなったそうだ。
それ以外にも多くの軍人が命を落としたとか。
そこまでなら仕事柄、起こりうることだが……。
「その時期、戦闘はなかったはずじゃ。軍はなにかを隠しとる。おそらくやったのは……」
「同じ軍隊の一員、ですか?」
「あぁ、そういうことや。しかも、遺体すら帰ってこんかった人も多いとか。ここのお孫さんもそうでのう……最期の別れすら言わせてもらえんとは」
「なるほど……」
それが人間の仕業か、鬼の仕業かはまだわからない。
しかし、ずいぶんとキナ臭い話だ。
「そんで、ここのじいさんが先日、その犯人を見たそうなんじゃが……詳しいことはなんも話してくれんでのう」
「老人会の仲間なんじゃから、隠しごとなんざせんでええ言うておるのに」
「じいさんも昔は軍人じゃった。お孫さんはその話を聞いて軍人になることを決めたっちゅうとったからのう。責任を感じとるのかもしれんなぁ」
「そうですか。ちなみに、おじいさんがその犯人を見た場所というのは?」
「えぇっと、どこだったかいねぇ? たしか……」
俺は頭の中に地図を描く。
これは――勝負は今夜だな。