TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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第44話『銃は剣よりも強し?』

 

 俺と銃を使う鬼との戦いがはじまって数分。

 何度も発砲音が鳴っていたせいだろう。

 

「さっきからいったいなんの音だ!? 銃声か!?」

 

 ちらほらと明かりが点き、様子を見ようと外へ出てくる者が現れはじめていた。

 ま、マズい!?

 

「だれか憲兵を呼びに……」

 

「危ないからだれも外に出ないで! 家に入っていてください!」

 

 俺はそう叫びながら道を駆け続ける。

 足を止めると、せっかく縮めた距離がまた広がってしまう。

 

 幸いにも敵は俺に狙いを定めているらしく、ほかの人間を撃とうとはしなかった。

 非常にプライドが高いようだ。

 

 自分の銃弾を躱されたことがよほど気に食わないらしい。

 一度狙った獲物は絶対に逃さない、という意志を感じる。

 

「わたしだけを狙ってくれるのは助かるけど……きっついなぁ、もう!?」

 

 次第に距離が近づいていく。

 それにつれ発射から着弾までの間隔も短くなっていく。

 

 だが、これまでの射撃で身体が慣れてきたおかげで回避し続けられていた。

 そして、ついに……。

 

「見えた!」

 

 人影が屋根の上に佇んでいるのがチラリと見えた。

 発砲のあとすぐに隠れてしまったが。

 

「逃がさない!」

 

 俺は足を踏み込んだ。

 あと1回……いや2回、銃弾を躱せばヤツに届――。

 

「……ぇ?」

 

 次の瞬間、俺の眼前に弾丸があった。

 バァン! と、ほぼタイムラグなしに銃声が聞こえていた。

 

 衝撃で俺は吹き飛ばされ、地面を転がった。

 額からダラダラと血が流れ……。

 

 しかし、力強く立ち上がった。

 銃弾はたしかに直撃していた。

 

 ただし――刀の鞘に。

 

 額の傷は砕けた鞘の破片が掠めたせいだ。

 あ、危なかったっ!?

 

「こんのっ!」

 

 ヤツはこれまでずっと撃つたびに俺から離れていた。

 だから、次もそうすると思い込んでいた。

 

 だが今回、相手は離れるどころか逆に近づいて(・・・・)きやがったのだ!

 俺が反応してからでは躱わせない位置にまで。

 

「……なぜわかった?」

 

 鬼はすこし驚いた表情で訊ねてくる。

 結果的にお互いに目視できる――会話できる距離にまで近づき、俺たちは対峙していた。

 

「なに? 防がれたことがそんなに意外? あなたの腕が悪いだけでしょ」

 

「キサマぁ、オレの射撃を侮辱するかぁっ!」

 

 煽られて鬼が怒りをあらわにする。

 が、正直に言うと今の一撃を防げたのは偶然だ。

 

 見てからでは絶対に間に合っていなかった。

 ただ、最初からそうすると決めていただけ。

 

 50メートル以下の距離では銃弾を避けられない。

 ならば……。

 

 ――最初から躱さなければいい、と

 

 ゆえに、逆に防ぐことができた。

 俺はかついでいた刀を身体の前面に回して、正中線を守っていたのだ。

 

 避けられないが、これで確実に一撃は防げる。

 コイツの射撃が非常に正確だからこそ、取れた手段だ。

 

 本当は50メートルにまで近づいたときのための策だった。

 ただ、その数字にあまり自信がなく、すこし早めに実践しはじめたのが功を奏しただけ。

 

「……」

 

 つーっと冷たい汗が流れる。

 もし、俺が刀を掲げるタイミングがあとすこし遅ければ、死んでいたかもしれない。

 

「んんんっ? その服……くくく、そうか。キサマ、鬼殺隊か。ついにオレを狩りに来たか!」

 

「そういうあなたは元軍人?」

 

「見てのとおりさ」

 

 この距離にまで近づいたからこそわかる。

 その鬼はまるで軍服のような衣装を身に纏っていた。

 

 どうりで戦い慣れすぎていると思った。

 生前からその道に通じていたのだろう。

 

「まさか、こんな卑怯な戦法を使う鬼がいるなんてね」

 

「卑怯? 戦場にそのような言葉は存在せぬ。あるのは生者と死者のみ」

 

「ここは戦場じゃない、平穏な町中だ。お前さえいなければ」

 

「いいや、この世に戦場でない場所などありはしない」

 

「……やっぱり鬼とは話が通じないな」

 

 俺はゆっくりと腰を落とし、地面を蹴る準備をする。

 鬼もまた、それに合わせて後退する姿勢を見せた。

 

「また逃げるの? それで遠くから銃を撃って、って……臆病者にもほどがあるでしょ」

 

「むしろ、オレにはなぜほかの鬼どもが銃を使わないのかがわからぬな。どいつもこいつも生前はよほどバカだったにちがいない」

 

「まるで自分はかしこいみたいな口ぶりだね」

 

「そうは言ってないさ。オレ以外にも銃を使う鬼はいたそうだしな。ただ、オレほどこいつの扱いに長けた鬼は後にも先にもいない、とそう言いたいだけ――だっ!」

 

 次の瞬間、鬼は発砲した。

 だが、さすがにこの距離ならその予備動作がはっきりと見えている。

 

 俺は先ほどと同じように刀を掲げ、防いでいた。

 銃弾は鞘に命中し、その破片をまき散らしながら逸れていく。

 

 同時に俺は地面を蹴っていた。

 鬼は後方へと飛び退りながら、ガシャコンとボルトを操作し排莢と次弾の装填をするが……。

 

「追いついた」

 

 俺は刀を振るった。

 これまでの愛刀ならば届かなかった。だが、この刀なら……。

 

「はっ、鞘に収まったままの刀をぶつけられたところで!」

 

 そう、この刀は長すぎてとっさに抜くことができない。

 だが問題はない。

 

「なっ!? しまっ――!?」

 

 鬼の顔に焦りが見えた。

 パカッと鞘が真ん中のつなぎ目からふたつに割れて、中から刀身が現れていた。

 

 これまで2発の銃弾を受け止めた影響だ。

 そして、以前も言ったが刀というのは鞘の内にあるときが一番弱い。

 

 だからこそ、日本刀の鞘はあえて割れやすく作られているのだ。

 いざというとき、壊れることで『刀を抜く』という手間を省けるように――。

 

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