TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

48 / 136
第47話『武器は持ち主を選ぶ』

 

 元軍人のおじいさんは、鬼となった我が孫を俺に任せるという。

 自分で討ちたいだろうに……。

 

 俺たち鬼殺隊はそんな思いを背負って戦っている。

 その思いを絶対に裏切るわけにはいかない。

 

「……わかりました。あちらの若い女性のこと、お願いします」

 

「あぁ」

 

 小声でのやり取りを終えて、俺たちは鬼に向き直る。

 鬼は「くくく」と笑った。

 

「作戦会議はもう終わりか?」

 

「わざわざ待ってるなんて、ずいぶんと余裕だね」

 

「はっ、隙を見せたら即座に斬りかかるつもりだったクセに、よく言うぜ。女の、しかもガキのクセにそこいらの軍人よりよっぽど狂暴じゃねぇか」

 

 狂暴とは、失敬だな。

 鬼なんて一部の例外を除き、ことごとく滅ぼしてしまえばいいと思っているだけなのに。

 

 そんな会話をしながら、鬼はジリジリと俺たちから距離を取ろうとしている。

 会話はただの時間稼ぎだ。

 

「知っているか? 過去、オレと同じように銃をエモノに選んだ鬼は”十二鬼月”になったそうだ。といっても下弦の弐止まりだがな」

 

 十二鬼月――鬼の中でもとくに強い者たちのことだ。

 上弦6体、下弦6体。合わせて12体。

 

 戦国時代にはまだ、そういった区分はなかった。

 とはいえ当時にも、無惨に選ばれ、特別に多くの血を分け与えられた鬼は存在したが。

 

「しかし、聞けばその下弦になった鬼というのも、本当に得意だったのは銃ではなく刀だったそうだ。それが転身したのだと」

 

 俺は鬼の会話を聞きながら、間合いを測っていた。

 それは鬼も同じだ。会話をエサにして、俺の隙ができるのを待っている。

 

 鬼とちがって人間には疲労がある。

 ずっと集中や緊張を強いられれば、どうしたってボロが出るのは人間のほうだ。

 

「では、オレならどこまで強くなれると思う? 銃の扱いに長けた――才能と経験を備えたオレなら、鬼としてもっと上までいけるとは思わないか?」

 

「べつに思わない」

 

「”あの方”もそれを期待して、オレを鬼にしたのだろう」

 

「なら期待外れだったね。お前は今日、ここで終わるんだから。無名の鬼のままで――ねっ!」

 

 言って、俺は地面を蹴った。

 同時に鬼も飛び退って、俺から距離を取ろうとする。

 

 さすがに追いかけっこになると、鬼に分がある。

 しかし……。

 

「キヨシ、逃がさんぞぉっ!」

 

 バァン! と発砲音。

 鬼の足を銃弾がかすめ、一瞬だが逃げ足が遅くなる。

 

「ええいっ、このクソジジイめ! どこまでも忌々しいっ!」

 

 鬼は牽制するようにおじいさんのほうへ銃口を向け……。

 しかし、彼らのことは撃たずにそのまま後退を続けた。

 

 弾丸が残り少ないから、気軽に撃てないのだ。

 おじいさんの言っていたことは事実だった。

 

 そして、鬼の視線が突進していく俺へと集中している間に、おじいさんは若い女性を促してひそかに後退をはじめる。

 俺はこっそりと拾っていた鞘の破片を手裏剣のように投擲する。

 

「このっ、小癪なマネを!」

 

 顔面へと飛んでいったそれを、鬼が払い落とす。

 なにかダメージがあるわけじゃない。

 

 だが、鬼の視界を一瞬封じた。

 そのまま俺は型を使って、連撃を繰り出す。

 

 

「水の呼吸・肆ノ型――”()(しお)(モドキ)”」

 

 

 よどみない動きでの波状攻撃。

 鬼の注意をこちらへと向けさせ続ける。

 

 距離があったこともあり、鬼にはいずれの斬撃も届かない。

 どころか身体能力の差もあり、先ほどよりも鬼が遠ざかってしまう。だが……。

 

「あん? あのジジイども、どこへ行きやがった?」

 

 鬼の目を引き、おじいさんたちを退避させることに成功していた。

 これで思いっきり戦える。

 

「よそ見している余裕なんてあるの?」

 

「このっ……ええいっ、うっとうしい!」

 

 バァアアアン! と発砲音。

 俺は一気に距離を詰めるため、回避を最小限――首を傾けるだけにして突っ込んでいく。

 

 銃弾は眼球のすぐそばを掠めながら飛んでいった。

 顔からブシュウウウ! と血が噴き出す。

 

「なんなんだよ、お前はぁ!? 普通、そんなとこに弾が飛んでくりゃまばたきくらいはするだろうが!? いや、そうじゃなくても痛みで多少は顔を歪めろよ! 怯めよぉ!」

 

「あいにくだけど、わたし痛覚が鈍いの。悪かったね」

 

 身体の表面を凍らせたりした後遺症だ。

 俺は痛みに顔を歪めるどころか、笑みを浮かべてやった。

 

「ひぃいいいっ!?」

 

 なぜか鬼のほうが人間である俺に怯えて、悲鳴を上げていた。

 つくづく失礼なやつだ。

 

 俺はただ、これ以上離されると再装填のスキを与えてしまうから……。

 ここで決めるため、合理的に判断しギリギリまでリスクを負っただけなのに。

 

「”弱者”はお前のほうだ、鬼」

 

 鬼も自分に死が近づいていることをようやく悟ったのだろう。

 その表情が恐怖に染まっていく。

 

「い、イヤだ……死にたくない! う、うわぁあああっ!?」

 

 俺の刃が鬼に届きはじめる。

 ガキン、ガキンと鬼はギリギリで攻撃を銃身で受け止める。

 

 だが、それも次第に追いつかなくなっていく。

 鬼は恐慌したように叫びながら、銃口をこちらへと向けた。

 

「く、来るなぁあああっ!? お前だって、人のカタチをしたものを壊すのが好きな同類のクセに! なんで、なんでお前だけがぁあああっ!?」

 

 鬼は引き金を引き――カチリ、とむなしく音が響いた。

 最後の1発は、躱す必要すらなかった。

 

「……は? 不発? そ、そんな……最後の最後で?」

 

「お前は弱者を切り捨てた。だから、最後はお前も見放された。銃にすらも」

 

 何度も俺の斬撃を銃身で受け止めていた。

 それでガタがきていたのだろう。

 

「これで終わりだ」

 

 俺はそう鬼に告げた――。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。