TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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第48話『なぜ鬼は銃を使わないのか』

 

 俺はみっともなく地面に転がった鬼に切っ先を突きつける。

 鬼は弾の発射されなかった銃を見下ろしていた。

 

 

「――また(・・)なのか? オレはまた、銃の不具合で……、っ!?」

 

 

 呟いて、それから鬼はハッと自分の口元を押さえた。

 自分で言っておいて、なにやら困惑している様子だった。

 

「『また』ってなんだ? オレはそんな経験、したこと……」

 

 おそらくそれは人間であったころの記憶。

 だが、そんなものは関係ない。

 

「己から目を逸らすな。負けたのは武器のせいじゃない。お前が弱かったからだ」

 

「なんだと? オレは強い! お前だって、あれだけ苦戦していたクセに!」

 

「なにを勘違いしてるの?」

 

 俺は銃を使う鬼に対して「卑怯」だとは言った。

 だが、ただの一度たりともこの鬼を”脅威”だと思ったことはない。

 

「銃を使うという発想、お前は名案だと思ったみたいだけど……はっきり言って、わたしには『バカの考え休むに似たり』に思えた」

 

「なっ!? ふざけるな、オレがほかのザコと同じだと!?」

 

「そうだよ。なぜなら、銃を使うかぎり――その強さの上限は銃の性能で決まってしまうから」

 

「どういう意味だ」

 

「だって、鬼の身体がどれだけ強靭だろうと、傷が回復するとしても……銃そのものは、壊れればそれっきりなんだから」

 

「……っ!」

 

 鬼はその顔に動揺をあらわにしていた。

 気づくのが遅すぎたな。

 

 銃は所詮、人の作った道具だ。

 当然、壊れもするし不具合が起こることもある。

 

 もし時間をかけてもいいなら、こいつはそこらの新米隊士や一般人でも倒せただろう。

 たとえば、人数を揃えてこちらも遠距離から攻撃すればいい。

 

 そして――鬼が持っている武器を破壊するのだ。

 

 鬼の弱いところは単独であること。

 そして、自身の肉体以上に頑丈な物が存在しないことだ。

 

 ゆえに大抵の鬼は己の肉体そのものを武器にするのだと思う。

 あるいは、武器を生み出す異能に目覚める。

 

「お前がバカにしたその『下弦の弐』もおそらく、そのあたりを理解していたからそこまで到達したんだとわたしは思うよ」

 

 その鬼はきっと、銃を生み出すか、銃を大量にストックできる血鬼術を持っていたのだろう。

 というより、そちらが本質。

 

 この鬼が『狙撃”手”』であるかぎり、絶対に強さは頭打ちになる。

 とはいえ、こいつもいずれはその欠陥に気づいて克服していただろう。

 

 大量の人を喰い、その弱点を補うような血鬼術にも目覚めていただろう。

 そうなっていたら、本当に手がつけられなかったと思う。

 

「だが、お前にその機会は2度と訪れない」

 

 そういう意味では、今のうちに討伐できるのは本当に幸運だった。

 鬼は絶望の表情で「くくく」と自嘲するように笑った。

 

「じゃあ、結局は武器のせいじゃないか! オレが負けるのは!」

 

「……そろそろ、会話も終わりだ」

 

 この会話は時間稼ぎだ。

 呼吸を整えるための。

 

 だが、これでもう十分。

 俺は地面に横たわっている鬼に対して、上段に刀を振り上げた。

 

「武器が悪いんだ……あぁ、そうだ完全に思い出した! オレはだから、あのとき(・・・・)武器を作ろうとしたんだ!」

 

 鬼の腕から血管が飛び出し、握っていた銃に絡みつく。

 ドクンドクンと銃自体が脈打ち、肥大化しはじめる。

 

 銃身が赤く発光していた。

 こちらへ掲げられた銃口の奥に弾丸が見えた。

 

 こいつは今この瞬間、血鬼術に目覚めようとしていた。

 だが……。

 

「言ったはずだ。もうお前にその機会はない、って」

 

 

「水の呼吸・捌ノ型――”滝壷(たきつぼ)(モドキ)”」

 

 

 死刑宣告のように技の名前を告げた。

 俺は刃を真下にある鬼の頸へと叩きつけるように、刀を振り下ろした。

 

 鬼の頭が宙を舞った。

 これで、終わりだ。

 

 銃を握っていた腕が地面に落ちた。

 赤い発光は収まり、鬼の身体はボロボロと灰となって崩れていく。

 

 ゴロゴロと転がった鬼の頭を見下ろす。

 そいつの目が俺を見上げていた。

 

「なんでキサマだけが。同類のクセにぃ……」

 

「さっきも言ってたけど、わたしをあなたと一緒にしないで」

 

「きれいごとをぉ……キサマだって、今こう思っているはずだぁ。うまく鬼の頸を斬ってやったぞ! 殺してやったぞ!』って。達成感を覚えているんだろうがぁ……」

 

「そうだね」

 

「オレだって一緒だ。うまく人の脳漿をブチまけられたら『楽しい』、人を殺せたら『うれしい』。軍人なら当然の感性を持っていた、それだけなのにぃ。キサマだって……」

 

「あぁ、そこがあなたとわたしのちがいだね。わたしは一度も楽しんだことはない。よろこぶのは――これ以上、罪のない人が傷つられずに済むから」

 

「この、偽善者がぁ……オレは、オレは……、あ?」

 

 ふと、顔を上げる。

 そこにはおじいさんが立っていた。

 

 女性を逃がし終え、様子を見に戻ってきていたらしい。

 鬼がジッと彼に視線を向け……。

 

「……じい、ちゃん?」

 

 ポツリと呟いた。

 おじいさんの顔が悲痛に歪んだ――。

 

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