TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手 作:可愛ケイ@VTuber兼小説家
「キヨシ、お前」
「じいちゃん? オレ、じいちゃんみたいな立派な軍人に……」
最後まで言い切ることなく、鬼は頭まで完全に灰となって消えた。
最後の最後で、人間であったころのことを思い出したのだろう。
この鬼も生前は、祖父のような立派な軍人を目指していたのかもしれない。
灰となった鬼の残骸を見下ろし、おじいさんはポツリと言葉をこぼした。。
「嬢ちゃん、キヨシを止めてくれてありがとう。これでもう、これ以上こやつが罪を重ねることはない。……これまでに犯した罪は、代わりにわしが清算せねばならぬがな」
「おじいさんのせいでは」
「いや、わしにも責任がある。わしはこいつに一番大切なことを教えられなんだ」
「1番大切なこと?」
「……おぬし、わしとばあさんに孫しかおらぬことを不思議には思わなかったか」
「そういえば」
「こやつの両親は強盗に殺された。それも――元軍人の、じゃ」
「……! それなのに、彼は軍人を目指して?」
「いや、キヨシ自身はそのことを最期まで知らなかった。いや、わしらが隠していた。そのせいで、わしらはこやつに間違えさせてしまった」
「……」
「わしは暴力の――銃の”強さ”は教えた。だが、大きな力は”弱者”を守るために振るわねばならぬのだ、と……そう告げることができなかった」
そんなことがあったなら、言いづらかったのは仕方のないことだろう。
だが、彼を討ったのは俺自身。
俺にはおじいさんに言葉を返す権利がないと思った。
だから、ただ静かにその話を聞いていた――。
* * *
「もう行くのかい」
「えぇ、お世話になりました」
「……なにかあったら、うちに来い」
「そのときはぜひ」
おばあさんとおじいさんに見送られる。
昨日……というか、もう今日だけれど「うちで休んでいけ」とおじいさんに家に誘われ、お世話になっていたのだ。
傷もおばあさんが手当てしてくれた。
と、彼女が「道中で食べなさい」とお弁当を渡してくれながら耳元で囁く。
「ありがとう。孫のことも、あの人のことも……」
「えっ?」
驚いて顔を見るが、おばあさんはやさしい笑みを浮かべたままそれ以上なにも言わなかった。
まさか、知っていたのか?
いや、むしろ気づかないわけがないのか。
ふたりはいったい何年、一緒に連れ添っているんだろう。
おじいさんはおばあさんを想い、ひとりで抱える決断をした。
おばあさんはおじいさんの決断を尊重し、なにも知らないフリを続けた。
このふたりの間には見えず言葉にはできない……しかし、たしかな絆があった。
いつか俺も、そんな信頼をだれかと築けるのだろうか?
「気をつけてね」
そんな言葉を背中に受けながら、俺はその家をあとにした。
「ん、ちょっと遠いな」
そうなると一度、蝶屋敷に戻って荷物を整理してからのほうがよさそうだ。
カナヲもきっと今ごろ……。
「っと、そうだ。ほかの、わたしと一緒に最終選抜を突破した新米隊士たちはどう? みんな、無事に最初の任務を成功させたのかな?」
「カァアアア! 栗花落カナヲ、任務達成! 現在、蝶屋敷デ休養中!」
「そっか、よかった」
俺の知るかぎりでは、カナヲはここで死ぬ運命にはない。
だが、すでに歯車は狂いはじめている。
彼女には才能があるし、強い。
それでも万が一を考えるとどうしても心配になってしまう。
「ほかの人たちは?」
「”竈門炭治郎”同ジク任務達成!」
「……!」
そうか、炭治郎もか。
彼こそが”この世界”の主役。
幸い、今のところ彼には大きな変化は起こっていないようだ。
そう安堵の息を吐き……。
「現在、次ノ任務ノタメに”浅草”ヘト移動中!」
「浅草?」
その瞬間、頭痛が起こった。
ブワァアアアっっと記憶が蘇る。
「そ、そうだ……なんで今まで忘れていた!? クソっ!」
今からでも間に合うか?
いや、いずれにせよ行動しないわけにはいかない。
「すぐに柱全員に伝えてください! 今、浅草に――鬼舞辻無惨がいる!」
俺はそう、鎹烏に叫んだ――。