TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手 作:可愛ケイ@VTuber兼小説家
俺は涙目になりながら、コーヒーでやけどしてしまった舌を突き出していた。
しのぶは「まったくもう」と呆れたように笑い、それから姿勢を正した。
「ところで、まふゆ」
「はひ?」
「あなたが鬼舞辻の情報をどうやって得たか、について」
「……っ!」
いよいよ問い詰められるときがきたか。
俺の緊張が伝わり、手に持っていたカップがカチャリと音を立て……。
「――今はまだ、聞かないでおきます」
「え!? ど、どうして!?」
「私としては今すぐにでも問いただしたい気分ですけれどね」
「……?」
じゃあ、問いただせばいいと思うのだが。
そう首を傾げていると、しのぶは衝撃のひと言を放った。
「――お館さまの指示です」
「お、お館さまの!?」
「まったく、いったいどうしてなんだか」
「……まさか」
心当たりは――あった。
俺は本名をそのまま使っているから。
いや、たしかに。
考えてみると今回の件、まだ確証もない段階で柱がふたりも動いている。
俺は足りないと思ったが、たとえ無惨に関する情報であったとしても破格だったのでは?
もし、それが”彼”の口添えの結果なのだとしたら……。
「だから、今は聞きません。ですが、まふゆ。もしあなたが話したいと思ったら、そのときはいつでも聞きますからね」
「……ありがとうございます」
俺がいつ真実を伝えるのか。
もしかしたら、そのタイミングが非常に重要になってくるのかもしれない。
と、俺たちがそんなマジメな話をしている横でカナヲはもくもくと……いや、もぐもぐと?
クリームソーダのアイスを頬張っていた。
俺の視線に気づいたらしく、ピクリと彼女は視線を上げた。
それから……。
「あーん」
「うぇっ!?」
スプーンですくったアイスを差し出してくる。
困惑しているとカナヲは言った。
「私はお姉ちゃんだから。分けてあげるの」
もしかして、さっきの話か!?
いや、アレは冗談で……。
「ほら、妹なんですから。お姉ちゃんに甘えておいてはどうです、まふゆ?」
「しのぶさん!?」
「あーん」
「う、うぅ……あ、あーん」
「どう? おいしい?」
「……甘くてヒンヤリして、おいしいです」
「そう、よかった」
カナヲが満足そうに頷く。
おいしいけど、それ以上に恥ずかしいんだが!?
そんなカフェでの一幕を終えて……。
* * *
「えぇ〜!? しのぶたちだけでカフェーに行ってきたの〜!? ズルいっ、姉さんも行きたかったのに〜!」
蝶屋敷へと帰ってきた俺たちを待っていたのはそんなカナエの叫びだった。
こういうカンは、ほんと鋭いな。
寄り道がバレ、めっちゃ羨ましがられた。
アオイもムッスーとしていた。
「私も行きたかったです」
「姉さん、大人げない……アオイも。はぁ~、わかったから。また今度、みんなで行きましょう」
「しのぶのおごりね! やったわ〜!」
「そこまでは言ってないけれど!?」
次がいつになるかはわからない。
だが、俺もすこしだけいつか来るそんな日が楽しみだった――。
* * *
その翌日、蝶屋敷に新たな患者がやってきた。
顔を合わせた瞬間「あ」とその人物は、俺のとなりに立っていたカナヲを見て声をこぼした。
「テメェは、最終選抜のときの」
「……?」
カナヲはキョトンと首を傾げる。
あっ、これ覚えてないな。
「はじめまして、わたしは
促すとカナヲはぺこりと頭を下げた。
それから俺は彼に確認する。
「あなたは
側頭部を刈りあげたトサカのような髪に、頬から鼻にかけて刻まれた大きな傷跡。
なるほど、行冥がしのぶに頼んだ人物というのは、彼のことだったのか。
「なんでオレのことを知ってやがる? だれだ、テメェ……いや、そうかァ」
玄弥は眉をひそめて俺を見たあと、マフラーへと視線を落とし納得したような顔になる。
そういえば最終選抜のときは、顔を隠していたもんな。
「あのとき、そいつと一緒に合格してやがったヤツか」
「えぇ、お元気でしたか?」
「ケッ」
しかし、やけに敵対的な態度だな。
俺たちになにか恨みがある……わけじゃあ、ないか。
きっと、だれにでもそうやって食ってかかっているのだろう。
玄弥は俺のマフラーとカナヲの髪飾りを見ながら言う。
「テメェらここのヤツらだったのか。チッ、サボってねーでとっとと次の任務に行きやがれ」
「えーっと」
俺も本当はそうするつもりだった。
しかし浅草の件があり、もともと予定していた任務はほかの隊員に引き継がれてしまったのだ。
そのため、しばらくはここで待機になっていた。
そして、カナヲもしばらくは蝶屋敷にいるらしい。
初任務こそひとりでこなしたが、継子として今後はしのぶと一緒に行動するとのこと。
現在、しのぶは蝶屋敷に戻ってきており、必然的にカナヲもここで待機になる。
つまり、俺たちはみんな、しばらくここで一緒に過ごすことになるわけで。
蝶屋敷に新たな波乱が起こりそうな、そんな予感がした――。