TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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第55話『青色の感情』

 

 まさか、泣いているアオイを見つけてしまうとは。

 さすがにムシするわけにもいかず、声をかける。

 

「あの、どうかしたんですか?」

 

「あはは……バレちゃったか」

 

「えっと、なにか悲しいことでもあったとか?」

 

「ちがうの。ただ、ちょっと悔しかっただけ。自分が情けなかっただけ」

 

「……なるほど。昼間の機能回復訓練ですか」

 

「そうじゃなくて……いや、ううん。それもあるわね」

 

 それからアオイは語った。

 自分は最終選別を運よく生き残っただけの腰抜けだ、と。

 

「カナエさまとしのぶさまは、そんな私にここに居てよいと言ってくださった。けれど、ずっと妹のように思っていたカナヲにあっさり抜かれて」

 

「……」

 

「べつに負けたことは自体は気にしてないの。ただ、そんな才能のあるあの子に嫉妬してしまう自分がイヤになっただけ。あとはまふゆ、あなたにも……ね」

 

 俺もアオイも同じく才能を持たない者同士だが、彼女とちがい俺は運に恵まれた。

 だから、同情する権利はない。

 

 それでも言わなければならないことがある。

 自分のことはどうでもいい、だが……。

 

「ふたりはよく似ていますよね」

 

「だれとだれが?」

 

「カナヲも同じようなことを言ってました。『自分はアオイさんのようにはなれない』って」

 

「えっ?」

 

「カナヲはずっと悩んでいたみたいです。うまく看病や看護ができなくて。勝手に最終選別へ行ったのも『せめて自分にできることがあれば』という想いからだそうです」

 

「カナヲがそんなことを?」

 

「ふたりともお互いに憧れているんですね」

 

「っ……!」

 

 ままならないものだ。

 必ずしも望む才能が、望む者に与えられるとはかぎらない。

 

「でも、みんな思いは一緒です。鬼を倒す――そして、戦いかたはひとつじゃない」

 

 たとえば車が好きな人間がいたとして。

 ドライバーの才能がなかったから、と整備士になるのは夢を諦めたことになるだろうか?

 

 もちろん、才能がなくても努力しドライバーを目指し続ける道もある。

 けれど、俺はどちらも決して道を外れたわけじゃないと、そう思う。

 

「とくにわたしなんてアオイさんに命を救われていますし」

 

「いや、それはしのぶさまが……いや、そうね」

 

 アオイは訂正しようとし、しかしゆっくりと首を横へ振った。

 俺はそんな彼女に……。

 

「アオイさんの想いはきっと――」

 

 そこまで言って、「あっ!?」と気づいた。

 いや、待て待て俺!?

 

 今、つい言いかけたセリフって本来はべつの人間が言うべきものな気が。

 アオイが急に言葉を止めた俺をいぶかしげに見る。

 

「想いはきっと……なによ?」

 

「あっ、えーっと……えーっと!? そのぉ!?」

 

 どどど、どうしよう!?

 今はまだ、アオイは炭治郎と出会っていないわけで!?

 

「……カ、カナヲが持って行ってくれると思います!」

 

 そう言って俺は誤魔化した。

 アオイはそれを聞いてキョトンとし……それから、柔らかく笑った。

 

「ありがとう。それから、まふゆ――あんたも、でしょ?」

 

「えーっと、善処します」

 

「そこははっきりと言い切りなさいよ!?」

 

 アオイはそう言って「あはは」と口を開けて笑った。

 まなじりには先ほどとはちがう涙が浮かんでいた。

 

 彼女は指先でその涙をすくい取る。

 その目はもう、まっすぐに前を見ていた。

 

「……」

 

 これはギリギリセーフ、だよね?

 そこまで大きな歴史の変化になったりしないよね?

 

 俺は内心でダラダラと汗を流していた。

 けれど、ひとつ間違いないことがあった。

 

 それは――アオイは泣き顔より笑顔のほうが似合うということだった。

 

   *  *  *

 

 翌日の機能回復訓練。

 俺は湯飲みの置かれたテーブルを挟んでアオイと向き合っていた。

 

「ねぇ、まふゆ――今日は本気で、あたしと戦ってほしい」

 

「えっ」

 

 アオイは真剣なまなざしで俺を見ていた。

 本気で? まさかバレていたのか?

 

「昨日は毎回、ギリギリあたしに負けるよう手加減してたでしょ」

 

「……」

 

「お願い。知りたいの」

 

「わかりました」

 

 アオイの想いを踏みにじることはできなかった。

 俺は姿勢を正した。

 

「カナヲ、お願い」

 

「……はじめ」

 

 カナヲの合図で訓練が開始する。

 決着は一瞬だった――。

 

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