TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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第59話『那田蜘蛛山の戦い』

 

 那田蜘蛛山(なたぐもやま)に到着するやいなや、しのぶは方々に指示を飛ばした。

 そこには隠たちがすでに大勢集まっていた。

 

 さすがに十二鬼月が相手だけあって大所帯だな。

 被害者も多いし、当然か。

 

「カナヲは隠たちの護衛と、現場の指揮をお願いします。あなたは私の継子です。できますね?」

 

「はい」

 

「まふゆも護衛と、あとはほかの隠たちと一緒に負傷者の手当てをお願いします」

 

「わかりました」

 

「私たち――柱は山の奥に入り、被害者の救出と鬼の討伐を行います」

 

 言って、しのぶはとなりへと視線を向ける。

 そこに立っていたのは水柱・冨岡義勇その人であった。

 

「……」

 

 なんだか視線を感じる。

 義勇はジッと俺のほうを見ていた。

 

「えーっと?」

 

「お前は」

 

「冨岡さん、気づかれました? あのとき救出した子です」

 

「そうか。無事だったか。隊士になっていたんだな」

 

 俺を400年の眠りから掘り起こしてくれたのは、そういえばしのぶと義勇だったな。

 しのぶはにこやかな笑みで俺を彼へと紹介してくれる。

 

「冨岡さん、冨岡さん。この子の名前――『神崎 鮭大根』って言うんですよ」

 

「なんだと!?」

 

 それまで無表情だった義勇が、目をくわぁっ! と見開いた。

 そして、わなわなと震えながら呟く。

 

「それは……じつにいい。すごくいい名前だ。羨ましい」

 

「ちがいますけど!? わたしは幸代まふゆです!」

 

「ちがうのか?」

 

「ちがいます!」

 

「ちがうのか……」

 

 義勇はめちゃくちゃ落ち込んでシュンとした。

 というか、どれだけ鮭大根が好きなんだ!?

 

 名前にしたいほどなのか!?

 しのぶはそんな彼の一喜一憂を見て「あはははっ」とめっちゃ笑っていた。

 

 ドSだ……ドSがいる。

 それから彼女は俺のほうを見て言う。

 

「まふゆ、今からでも『鮭大根』に改名してもいいのですよ?」

 

「絶対にしませんけど!?」

 

「しないのか……」

 

 あの、お願いだからそんな悲し気な顔しないでもらえませんかねぇ!?

 俺の名前、そんなに鮭大根のほうがよかったかなぁ!?

 

 ごめんなさいね、断っちゃって!?

 と、内心はヤケクソになりながら、改めて彼に礼を告げる。

 

「その節は助けてくださり、ありがとうございました」

 

「礼はいらない。俺はやるべきことをやっただけだ」

 

「そろそろ大丈夫そうですね。私たちも山へ入りましょうか」

 

 周囲の隠たちの動きを見ていたしのぶが言う。

 最低限の配置が整うまで待っていてくれたらしい。

 

「あぁ、行くか」

 

「カナヲ、まふゆ。あとは頼みました」

 

 次の瞬間、消えたかと錯覚するほどの速度でふたりは山へと飛び込んでいった。

 カナヲもすぐに動き出した。

 

   *  *  *

 

 しばらくして、しのぶの鎹烏が飛んでくる。

 指示された場所へ向かうと、黄色い髪色をした少年たちが横たわっていた。

 

 みんな鬼の毒によってクモになりかけていた。

 俺たちを待ち受けていたしのぶが隠たちにビンを手渡しながら言う。

 

「こちらが今、私が調合した解毒剤になります。みんなに打ってあげてください」

 

「はっ、かしこまりました」

 

「鬼はもう死んでいますから、毒も弱まっていますが――」

 

 しのぶはそんなやりとりをしたあと、俺とカナヲを呼び寄せた。

 俺たちが駆け寄ると彼女は言った。

 

「私について来てください。これから十二鬼月を狩りに行きます。ですがふたりは指示があるまで決して前に出ないように。後方に隠れて戦いを見ていてください」

 

「「わかりました」」

 

 柱と十二鬼月の戦いを見せてくれようというのだろう。

 俺たちにとって良い経験となるように。

 

   *  *  *

 

「あら? すでに十二鬼月は狩られたあとのようですね」

 

 俺たちが現場に到着すると、そこに十二鬼月はもういなかった。

 視線の先では着物を踏みつけにする義勇と横たわる炭治郎が、なにやら言い争っていた。

 

「鬼は醜いバケモノだ」

 

「ちがいます。鬼はむなしい生きものだ、悲しい生きものだ」

 

 そして、ふたりのほかのもうひとり……いや、1体というべきか。

 そこには女の鬼の姿があった。

 

 彼女がこそが無惨討伐のキーマン。

 やがて日の光を克服する鬼。

 

 炭治郎の妹である禰豆子(ねずこ)だ。

 と、横からやさしげな……そして、恐ろしく冷たい声が聞こえた。

 

「あそこにいるのは鬼ですね。まったく、義勇さんはどうしてすぐに狩らないのでしょうか。仕方ありません、私がやって差し上げましょう」

 

 ゾクリ、とイヤな予感。

 そうだ、そうだった!?

 

「待っ――!?」

 

 しのぶが飛び出す。

 禰豆子を殺すために刀を突き出し――ガキィン! と義勇の刀とぶつかった。

 

「どうしてジャマをするんですか、冨岡さん? そんなだから、みんなに嫌われるんですよ?」

 

「……俺は嫌われてない」

 

「すいません。嫌われている自覚がなかったんですね」

 

「!?!?!? ……炭治郎、妹を連れて逃げろ」

 

 義勇の言葉で炭治郎はその鬼を連れて逃げはじめる。

 しのぶからザワリと威圧感が放たれる。

 

「隊律違反ですよ、冨岡さん? それと私以外にもいることをお忘れなく」

 

 しのぶが指文字(ハンドサイン)で俺たちに指示を出す。

 命令はシンプルだった。

 

 ――鬼を狩れ。

 

 瞬間、カナヲが地面を蹴った。

 すさまじい速度で炭治郎たちを追いはじめる。

 

「ま、マズいっ!?」

 

 鬼を狩ることに……当然だが、カナヲは一切ためらいがない。

 そして、俺は失念していた。

 

 

 今のカナヲは――本来の歴史よりもずっと強い!

 

 

 このままじゃ確実に禰豆子が狩られる!

 狩れてしまう(・・・・・・)

 

 俺は全力でカナヲの背中を追いかけた――。

 

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