TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手 作:可愛ケイ@VTuber兼小説家
俺は那田蜘蛛山で必死にカナヲの背中を追いかけていた。
「マズい、マズい、マズい!?」
カナヲに強化入っているせいでこのままだと狩れてしまう!
彼女は一瞬で炭治郎をのすと、小さくなって走る禰豆子を追いかけた。
そしてあっさりと追いつき、刀を振りかぶる。
直感的にわかった。
――斬れる。
今のカナヲなら、確実にその頸を撥ね飛ばせる。
もし、そんなことになったら……。
なりふり構っている余裕はなかった。
俺は必死に叫んだ。
「カナヲ、お願いっ! 止まってぇーーーー!?」
禰豆子の頸に刃が到達する寸前でピタリ、とカナヲは手を止めた。
それからキョトンとした顔で首を傾げる。
「どうして止めるの? 鬼は狩らないといけないの。それにしのぶさまの指示だし」
「そ、それはそうなんだけど」
言い訳のしようもない。
どうすればいい? どうすれば……!?
そのときだった。
頭上から「カァアアア!」と鎹烏の鳴き声が聞こえた。
「――炭治郎、禰豆子ノ両名ヲ拘束! 本部ヘ連レ帰ルベシ!」
「あなた、禰豆子?」
カナヲがそう訊ね、刃を納めた。
それから理解した、という風に俺のほうを向く。
「狩るんじゃなくて連れ帰る……。まふゆが止めた理由、わかった。止めてくれてありがとう」
「う、ううん。気にしないで」
た、助かったー!? と安堵の息を吐く。
カナヲは俺があの伝令を聞いて、止めに入ったと誤解してくれたらしい。
にしても、危ねぇー!?
強くなって悪いことはなにもないからな、キリッ。じゃねぇーよ!?
問題、ありまくりじゃねーか!?
危うく無惨を倒せなくなるところだったわ!?
「なんだか、まふゆ疲れてる?」
「だ、大丈夫だよ」
まったく、いったいどんなことが歴史に影響を及ぼすのかわかったもんじゃない。
やはりハデなことはできないな、と痛感する。
それこそ、叶うなら『なにもしない』をしたいところなのだが、もはやそれも不可能。
すでにたくさんの変化が起きてしまっており、フォローせざるをえない。
「カナヲ、まふゆ、ご苦労さまでした」
「師範」
振り向くと、しのぶと義勇が立っていた。
ふたりの間には微妙に距離があった。
まぁ、さっきまで敵対していたんだもんな。
それも致しかたないだろう。
「その鬼は私たちが預かります。ふたりは隠の警護と指揮に戻ってください」
「「わかりました」」
そう負傷者の手当てをしていると、視線を感じた。
振り返ると、包帯グルグル巻きになった黄髪の少年がボーっとこちらを見ていた。
『雷の呼吸』の使い手。
先代・鳴柱の継子であり、俺たちの同期でもある。
「なんだコイツ、イノシシの被りもの? ひどい重症だ」
隠たちの声が聞こえたほうを見る。
そこには上半身裸で、腰に蓑を巻いた少年の姿があった。
「こいつも本当は先に手当てしてやりたいところだけど」
それと竈門炭治郎が隠に担がれているのも見えた。
禰豆子の入った背負い箱も一緒に運ばれていく。
物語が大きく動きはじめたのを感じる。
そして、俺自身もまたその大きな渦に巻き込まれつつあった――。
* * *
そして、数日後。
蝶屋敷のベッドに並んで横になっている3人の姿があった。
「しのぶさんは?」
「しばらくは柱合会議で出ずっぱりだそうです。なんでも隊士の質の低下が問題になっているとかで、いろいろと忙しいようです」
アオイの言葉に「そうですか」とうなずく。
そんなわけで、しばらくはカナヲも蝶屋敷に釘づけ……かと思いきや。
「まふゆ」
「ん? カナヲ、どうかしたの?」
「私たちふたりで一緒に任務だって」
「そう、わかった」
彼らにあいさつするのはもうすこしだけあとになりそうだ。
そんなことを考えながら、俺たちは任務へと旅立った。
* * *
それから俺たちはふたりで鬼を瞬殺して回った。
組織改革や柱の不在が影響して人手不足なのか、続々と指令が舞い込んでくる。
任務先から、また次の任務先へ。
休息は『藤の花の家紋』の家でお世話になり、一緒の布団で眠る。
「って、なんでだーっ!?」
遅れて俺は違和感に気づいて飛び起きる。
こ、こんなの……ハレンチだ!?
「どうしたの、まふゆ?」
「いやいや、カナヲこそどうしたの!? なんで当たり前のように同じ布団に入ってるの!?」
「……? カナエさまが姉妹はそうするって」
「あの人はぁーっ!?」
「もしかしてまふゆ、私と一緒はイヤ? ……私はお姉ちゃん失格?」
「~~~~っ! それは、ちがっ、あのっ……わ、わかった。一緒に寝よっか」
「ほっ。よかった」
カナヲはわかりづらいが、安堵したように笑みを浮かべていた。
うぅっ、こんなの断れるわけないだろ!?
とまぁ、そんなちょっとしたトラブルがあったり。
道中の空き時間に、ラムネを買って一緒に飲んだり。
そして、ようやくすべての任務を終えたころには……。
* * *
――2週間が経っていた。
ひさしぶりに帰ってきた蝶屋敷で、アオイたちが出迎えてくれる。
あと、カナエにはきっちりと仕返しをしておいた。
具体的には……。
「カナエお姉ちゃんなんて大キライ! ふんっ!」
と言って、そっぽを向いてやった。
いや、俺もべつにそんな子どもっぽいセリフを言うのはシュミじゃないのだが……。
「がーんっ!? ま、まふゆちゃんに嫌われちゃった~! びぇ~ん!」
カナエにはこれがテキメンに聞くのだ。
そんな彼女を見て……。
「まぁ、自業自得ですね」
アオイは呆れたようにため息を吐いていた。
そこへしのぶがやって来る。
「ふたりとも任務ご苦労さまでした。帰った直後で申し訳ないのですが、アオイと一緒にお願いしたいことがあります」
「なんでしょうか?」
「じつは、入院している患者の機能回復訓練を任せたくて」
俺は「ついに来たか」と思った。
いよいよ、この世界の主人公たちと対峙するのだ――!