TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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第61話『最速の男』

 

 訓練所にアオイとカナヲと俺と三人娘が集まっていた。

 それから……。

 

「はじめまして、俺は竈門炭治郎って言います!」

 

「……オレは嘴平伊之助(はしびらいのすけ)

 

 炭治郎と伊之助が正座していた。

 こうして彼らと向き合っていると、すこし感慨深いものがあるな。

 

「たしか、キミとは最終選別のとき一緒だったよね」

 

 炭治郎がカナヲを見て言う。

 それから俺に視線を向け、クンクンと鼻を鳴らした。

 

「あっ、やっぱり! そっちの女の子も……!」

 

「こんにちは、炭治郎さん。わたしは幸代まふゆです」

 

「ふたりとも蝶屋敷の人だったんだね」

 

「はい。しのぶさんにお世話になっています。伊之助さんも、はじめまして」

 

「……アぁ」

 

 今の伊之助は鬼にボコボコにされたうえ、のども潰れているせいでかなりおとなしい。

 心がポッキリと折れてしまっていた。

 

「おふたりにはこれから――」

 

 アオイが機能回復訓練について説明する。

 それから炭治郎と伊之助のふたりは、アオイやカナヲと反射訓練や全身訓練を行った。

 

 俺は柔軟の手伝い担当だ。

 ちなみに彼らの戦績はというと……。

 

「はぁっ、はぁっ……全然勝てない」

 

「ぜぇっ、ぜぇっ……勝てねぇ」

 

「おふたりとも、もう終わりですか」

 

 アオイに全敗していた。

 まぁ、最初はこんなものだろう。

 

 慣れの問題もあるし、ふたりもまだ本調子ではないし。

 それでも、女の子相手に手も足も出なかったのはかなりショックだったらしい。

 

「そういえばまふゆは次の任務とか、大丈夫? 忙しかったらこっちは気にしなくていいから」

 

「はい、当分はお休みなので」

 

 しのぶの継子であるカナヲは当然として……。

 俺もしばらくは蝶屋敷でのんびりできそうだった。

 

 なんでもこれは半分、俺たちの休暇も兼ねているそうだ。

 ここ最近ずっと働きづめだったから。

 

 鬼殺隊にもちゃんと休暇という概念は存在する。

 給料だって出るし、仕事内容以外は普通のサラリーマンとそう変わらない。

 

「それは助かるわ。これからしばらく手伝いをお願いね」

 

 そうして炭治郎たちの機能回復訓練を手伝う日々がはじまった。

 彼らは着実に力を取り戻し、同時に新たな力を身につけつつあった。

 

 だが、なかなかアオイには勝てずにいた。

 というか……。

 

「はい、もう1回!」

 

 アオイがそう声を張り、炭治郎が挑む。

 うーん……なんかアオイ、強くね?

 

 いや、本来の歴史でも炭治郎たちに勝っていたけど。

 にしても、あまりに彼らが勝てなさすぎるというか。

 

「アオイが私の特訓に付き合ってくれたの」

 

「な、なるほど」

 

 そういうことかぁ……。

 カナヲも本来以上に強くなっている。

 

 彼らが彼女たちと自分を比べて、本来の歴史以上に自信を失わないか心配だな。

 と、そんなことを思っているうちに2週間が経過して――。

 

   *  *  *

 

「かかか、かわいい女の子が1、2、3、4、5……6人もいるぅ~!」

 

 一番重症だった善逸も傷が癒えてきて、訓練に参加できるようになっていた。

 炭治郎と伊之助を「お前ら、女の子とキャッキャウフフしてたのかぁー!?」と怒鳴りつけた直後が、これだった。

 

「改めて、はじめまして。かわいらしいお嬢さん。病室ではチラチラとすれちがっていたけど、こうして話すのははじめてだね。おれの名前は我妻善逸。よ・ろ・し・く・ね☆」

 

 善逸は俺の手をそっと握ってキメ顔を作っていた。

 なんでこう、彼は残念なのだろうか。

 

「はじめまして、幸代まふゆです。あなたはわたしの担当患者ではなかったので」

 

「そういうことだったのかー。にしても……まふゆちゃん、ね。なんて愛らしいんだ。どうか、おれと結婚を前提に――」

 

 そうプロポーズしようとした善逸の手を、アオイがバチコーン! とはたき落とした。

 頬をひきつらせながら、彼に怒りのまなざしを向ける。

 

「善逸さん、あたしの妹に手を出したら絶対に許しませんからね!?」

 

「ふっ、嫉妬しているのかい子猫ちゃん。大丈夫さ、おれはキミのことも……」

 

「こ、この人はっ」

 

 ビキビキとアオイの顔に血管が浮き上がっていた。

 しかし、深呼吸して言葉を飲み込んだ。

 

「はぁ……もういいです。それよりも早く訓練をはじめましょう」

 

「ぜひぜひ!」

 

 善逸はそして、柔軟を笑顔で耐え抜いた。

 さらには反射訓練と全身訓練でもアオイに勝ってしまう。

 

 善逸は『雷の呼吸』の使い手だ。

 いくらアオイが成長しているとはいえ、さすがにその速さには勝てなかったようだ。

 

「オレもやるぜーっ!」

 

 やる気を取り戻した伊之助もアオイに挑み……ギリッギリで勝利をもぎ取る。

 しかし、やっぱりというかなんというか。

 

 全員、カナヲには負けっぱなしだった――。

 

   *  *  *

 

 それから数日間の間に、善逸と伊之助の心が折れて訓練所に来なくなったり……しのぶに煽られてまたやる気を取り戻したりしていた。

 庭で筋トレに励む彼らを見ながら、しのぶが言う。

 

「カナヲも同期なんだから、一緒にどう?」

 

 きっとカナヲは断るんだろうな。

 あるいは銅貨を投げて決めるのだろうか?

 

 そんなことを想いながらボーっとしていると……。

 彼女はぎゅっと俺の、服の裾を掴んできた。

 

「――まふゆと一緒なら。まふゆも同期だから」

 

 ……ん? あれ?

 このシーンってこんなんだっけ!?

 

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