TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手 作:可愛ケイ@VTuber兼小説家
そんなこんなで俺とカナヲが炭治郎たちの筋トレに付き合うようになって数日。
伊之助が俺を見下ろしながら言った。
「オマエ、いくらなんでも弱すぎねぇか? 本当に鬼殺隊員か?」
「ぜぇっ、はぁっ……ぜぇっ、はぁっ……」
「まふゆ、大丈夫?」
俺は地面にぶっ倒れていた。
伊之助がツンツンと拾った木の棒で俺を突いてきていた。やめい。
「ふははは! もっと肉を食え! そうすりゃオレみたいに強くなれるぜ!」
「おいコラ、伊之助! まふゆちゃんをイジメてんじゃねえよ!」
「あぁん!? イジメてなんかいねぇだろーが! 弱いから、弱いって言っただけだ!」
「ふたりとも、そのくらいに」
言い合う伊之助と善逸を、炭治郎が仲裁していた。
うぅっ。悔しいが実際、この中で俺が一番腕力がないからなぁ。
そのままの流れでみんなは訓練所へと移動し、機能回復訓練をはじめる。
かまぼこ隊の面々も着実に力をつけていた。
「今日はこれで2勝ですね」
「まぁ、18敗もしちゃってるけど」
「いえ。あのカナヲ相手に2回も勝てるだなんて本当にすごいと思います」
「そうかな」
アオイに褒められて、炭治郎が照れたように頬をかく。
俺の記憶とはやけに戦績がちがう気もするが、おおむね俺の知っている歴史のとおりだな。
「……」
「カナヲ、どうかしたの?」
アオイがそう声をかける。
見ると、カナヲは自分の手を見下ろしながらなにかを考え込んでいる様子だった。
「まふゆ、勝負して」
「え? わたし?」
メキメキと実力を伸ばしてくる炭治郎たちにカナヲも刺激を受けたのかもしれない。
自分が停滞しているような、そんな焦燥感を覚えたのかも。
それはとても良いことだ。
成長のきっかけは、たとえどんな理由だろうと逃すべきではない。
「おい、オマエ! 知らないのか! そーいうのって弱い者イジメって言うんだぜ! ふんっ、男なら弱いヤツじゃなくて強いヤツと戦おうとしやがれ!」
「伊之助、カナヲもまふゆも女の子だよ」
「そうか! でもダメだ! この白髪チビは弱っちいからな!」
「……? まふゆは私よりもずっと強いよ?」
「えぇっ!?」
「またまた~、カナヲちゃんも冗談がうまいな~。継子であるカナヲちゃんより、まふゆちゃんのほうが強いなんて……そんなわけないじゃーん」
伊之助も、炭治郎も、善逸もちっとも信じていなかった。
まぁ、普段の筋トレの様子を見られているしなぁ。
しかし、カナヲは気にした様子もなく改めて俺に言う。
「まふゆ、お願い」
「……わかったよ」
あまりに真剣なまなざしで、俺にはそれを拒絶することができなかった。
俺は諦めて、湯飲みの置かれた机の前へと座ろうとし……。
「ちがう。こっち」
しかし、カナヲは広間のほうを指さす。
あぁ、反射訓練じゃなくて全身訓練……鬼ごっこがしたいのか。
そう思ったが、それもちがった。
彼女はポイっとなにかを投げてくる。
「おわっと」
パシッ、とキャッチしてみればそれは木刀だった。
まさか……。
「模擬戦。炭治郎たちにまふゆの強さをわかってもらう。それから、私も……どれだけまふゆに追いつけたかも知りたいし」
「いや、それは」
さすがに困る、と言おうとした。
お遊び程度の訓練ならいいが、炭治郎たちに俺の実力をあまり見せると歴史への影響が心配だ。
だが、それよりも早くカナヲは床を蹴っていた。
開始の合図もなかった。
「のわっ!?」
恐ろしいほどに鋭い一撃。
慌てて身を逸らして躱す。
実戦と同じだ。
だれかが「よーいドン」を言ってくれたりしない。
カナヲは本気だった。
勘弁してくれ、成長した彼女の攻撃をまともに食らえばタダじゃ済まないぞ!?
「花の呼吸・伍ノ型――”
まるで開いた花弁のごとく上下左右から俺へと刃が迫る。
すさまじい連撃。
「あぁっ、もうっ!?」
その攻撃は俺を取り囲むかのように放たれている。
ゆえに躱すことは困難だ。
かといって腕力のない俺にはすべてを刀で受ける選択肢もない。
そんなことをしたら、手がしびれて刀を取りこぼしてしまう。
ゆえに受け流す一択。
カナヲが「くっ」と歯を食いしばる。
「は、速ぇ……なんだ、この攻撃は。全然見えねぇ」
「や、やばいよ炭治郎。あんなのまふゆちゃんが死んじゃうよぉ!」
「でも、まふゆはすべての攻撃を受け流してる。むしろ、苦しそうなのはカナヲのほうだ!」
最小限の動きで攻撃を受け流す俺に対して、全力で刀を振るい続けているカナヲ。
どちらが先に体力や呼吸が切れるかは明白だった。
カナヲはこの状況を打開せんとしてか、構えを変える。
べつの型へと切り替えようとした。
「――ダメだよ」
「あっ……」
カナヲの口から声が漏れた。
俺は型と型の合間――その隙に一歩踏み込んでいた。
小さな体躯を利用して、彼女の懐……間合いの内側へと入る。
俺はピタリ、と彼女の首元に木刀を添えて動きを止めた。
「カナヲは目がいいんだから、”後の先”を取らないと。相手の隙を見抜いて、それから攻撃しないと……こうやって逆に、自分が動けないタイミングで相手から仕掛けられちゃうよ」
「ぷはっ……はぁ、はぁ。……私の負け」
「そうだね。せっかく目がよくたって、身体が動かなきゃないのと同じだから」
「うん」
「でも、わたしも危なかった」
言いながら身を引く。
それでカナヲも気づく。
俺の羽織の端が破れていた。
彼女の刀を躱しきれずに引っかけてしまったのだ。
「私の刃、まふゆに届いたんだ」
カナヲがうれしそうに微笑んでいた。
そんな彼女を見ながら、俺は内心で……。
――て、天才恐ぇえええっ!?
と戦慄していた。
いやいや、いくらなんでも強くなりすぎなんだけど!?