TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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第63話『最強の姉』

 

 カナヲに才能ががあるのはわかっていた。

 だとしても、まさかこれほどとは。

 

 い、今の模擬戦……全然、俺の負けもありえたんだけど!?

 どうなってんの!?

 

「私、すこしは強くなったかな?」

 

「う、うん。そうだね。カナヲも強くなったと思うよ。ハ、ハハ……」

 

 あっさり勝ったように見えたかもしれないが、実際は真逆。

 急いで勝負を終わらせるしかなかったのだ。

 

 目がいいからだろう、彼女の剣は的確に急所を狙ってくる。

 ゆえに、たとえ連撃であろうともそのすべてが必殺足りうる一撃となっている。

 

 手加減する余裕なんてなかった。

 受け流したはずなのに、腕がいまだにしびれていた。

 

「次までにいい勝負できるように、私もっとがんばる。それでいつかはまふゆより強くなって、私が守ってあげるの。だって私はお姉ちゃんだから」

 

「そ、そっかー。がんばってね」

 

 ムリムリムリ!?

 次どころか、今からもう1戦やるだけで勝てない可能性まであるんだけど!?

 

 手がしびれまくってるし。

 使い慣れていない普通の長さの刀……この木刀じゃもう厳しい。

 

「す、すっげぇー!? なんだ今の!? オイ、白髪チビ! オマエそんなに強かったのか!?」

 

「あわわわ、まふゆちゃんがおれより強いだなんて、そんなの信じたくない~!?」

 

「俺もまふゆくらい強くなれるようにがんばらないと!」

 

 伊之助、善逸、炭治郎が三者三様に驚く。

 それから炭治郎はとなりに立っていたアオイに尋ねていた。

 

「カナヲに勝てるってことは、やっぱりまふゆももう『全集中・常中』ができるの?」

 

「そうですね」

 

「じゃあ、今もしてるのかな?」

 

「そうだと思います」

 

「……すごいや。あまりに自然体すぎて全然わかんない」

 

 まぁ、俺にとってはむしろこの呼吸こそが”普通”になってしまっているからなぁ。

 なにせ10年以上そうしているのだから。

 

「てことは、あんなに小さな身体であの大きなひょうたんを割ったんだ。すごいなぁ」

 

「いえ、私はまふゆがひょうたんを割るのを見たことがありません」

 

「えっ?」

 

「というより、彼女に割れないほど大きなひょうたんがないんだと思います。そもそも特訓にならないから割る必要もないのでしょう」

 

「ま、マジか!? あの白髪チビ、本当は妖怪かなんかじゃねぇのか!?」

 

「ひぇぇっ!? かわいらしい女の子だと思ってたのにぃ~!?」

 

 なんかいろいろ言われているが、たしかにひょうたんって割ったことってないな。

 縁壱に稽古をつけてもらったときも、彼はそんなの使わなかったし。

 

 とまぁ、そんなこんなで日々が過ぎていき……。

 

   *  *  *

 

「あ、玄弥。来てたんだ? こんにちは」

 

「……おう」

 

 蝶屋敷に玄弥がやってきていた。

 この1ヶ月ほどでまた驚くほどに身長が伸びていた。

 

「今日はどうしたの?」

 

「……オレはその、こんな身体だからな。定期的に見てもらうことにしたんだ」

 

 玄弥は顔をそっぽ向けたまま、目を合わせずに話していた。

 そのわりにはチラチラとこちらを、盗み見るみたいに視線を向けてきていたが。

 

 そんな彼を見て、三人娘が言う。

 

「ちがいますよ、まふゆさん!」

 

「玄弥さんは本当はあなたに会いに来てるんですよ!」

 

「そのためにわざと定期健診をお願いして……」

 

「だァあああ!? っせェぞガキどもォ!? 黙らねェと食っちまうぞォ!?」

 

「「「きゃーっ!」」」

 

 玄弥が三人娘にからかわれていた。

 最初、乱暴者の彼に怯えていたのがウソのようだ。

 

「っと、そろそろ行かねェと。……あ、あのよオレはこれから数日、ここに滞在するから。だからその、えっと……そう! オレと一緒に訓練でもよォ――」

 

「あ、ごめんね。わたし、明日には蝶屋敷を発つつもりなんだ」

 

「んなァっ!?」

 

 ガーン!? と玄弥の表情が絶望に染まる。

 それから、ひどくうなだれる。

 

「任務かァ?」

 

「まぁ、そんな感じ」

 

「そ、そうかァ。それじゃあ仕方ねェよな。はァ……がんばれよ」

 

「うん。ありがと」

 

「クソがァ。なんでオレはこう間が悪いんだァ」

 

「えーっと。診察、行かなくていいの?」

 

「そ、そうだな。それじゃあ、また」

 

「うん、またね」

 

「……ケッ」

 

 玄弥はふて腐れた様子で、立ち去っていく。

 心配ですこしその背を目で追っていると。

 

「あっ」

 

 廊下の向かいから炭治郎がやってきてしまう。

 ただでさえ機嫌が悪かった彼は、ドン! と自ら炭治郎にぶつかっていった。

 

「うっ……ひさしぶり! 元気そうでよかった!」

 

 しかし、炭治郎は気にした様子もなくそうあいさつをしていた。

 なんというかこれは、お互いさまだなぁ。

 

 やつあたりした玄弥はもちろん悪い。

 でも、腕を折った相手に対して平然としている炭治郎も……煽っているようにしか見えない。

 

 ふたりが仲直りするのはもうすこし先のことだ――。

 

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