TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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第64話『新たなる任務へ』

 

 俺は玄弥とすれちがった炭治郎をそのまま目で追っていた。

 どうやら彼は蝶屋敷の面々にあいさつして回っているらしい。

 

 ……な、なんて礼儀正しいんだ!?

 

 かまぼこ隊の面々が全快したから、ここを出ていくそうだ。

 と、炭治郎は庭で洗濯物を干しているアオイを見つける。

 

「アオイさん、俺――」

 

「そうですか、もう行かれますか」

 

 ここは名シーンのひとつ。

 アオイが内心を吐露し、それを炭治郎が励ますところで……。

 

「では、お気をつけて」

 

「うん! それじゃあ、またね!」

 

 ……ん? あれ? あっれぇー!?

 な、なんで!?

 

 アオイは晴れ晴れとした笑顔であっさりと炭治郎を送り出してしまう。

 どうしてこんな変化が……。

 

「あっ!?」

 

 いや、考えるまでもない。

 俺のせいだ!?

 

 すでにアオイの想いは俺とカナヲのふたりが戦いの場へ持って行っている。

 だから、炭治郎に託す必要がなくなっているのだ。

 

「ま、マズい!? まさか!?」

 

 俺は慌てて炭治郎を追いかけた。

 ここでは名シーンがもうひとつある。

 

 彼の、次の目標はカナヲだった。

 縁側で話しているふたりを見つける。

 

「さようなら」

 

「今のはお金?」

 

「さようなら」

 

「なんで投げたの?」

 

「……どうでもいいことはこれを投げて決めるの」

 

「この世にどうでもいいことなんてないと思うよ。カナヲは心の声が小さいんだろうな。それ、貸してくれる? 投げて決めよう。表が出たらカナヲは心のままに生きる!」

 

 炭治郎がカナヲから借りた銅貨を、親指で天高くまで弾く。

 クルクルと回転してそれは彼の手の甲へと着地した。

 

「表だぁー!」

 

 炭治郎が飛び跳ねてよろこぶ。

 カナヲは驚いた様子で尋ねる。

 

「なんで表を出せたの?」

 

「偶然だよ。それに裏が出ても表が出るまで、何度でも投げ続けようと思ってたから」

 

「……!」

 

 俺はホッと息を吐く。

 どうやらここは、本来の歴史どおりに……。

 

「――大丈夫」

 

 やさしい笑みを浮かべながら、そうカナヲは炭治郎に返していた。

 えっ、そんなセリフを俺は知らない。

 

「本当に大切なことはちゃんと自分で決められるから。昔はわからなかったけど、今はちがう。カナエさまが私をたくさん大切にしてくれたおかげ」

 

「そっか!」

 

「それに師範も、アオイも、きよ・すみ・なほも。それから――まふゆも。みんないるから」

 

 俺は気づいた。

 今のカナヲの心は、本来の歴史よりもずっと強いのだ。

 

 それはカナエが生き残った影響。

 あとは、俺という妹の存在――守るべきものができたから、というのもあるかもしれない。

 

「……でも、ありがとう」

 

「あぁ! 元気で!」

 

 言って炭治郎が去って行ってしまう。

 これは……どっちなんだ?

 

 ふたりの間にちゃんとフラグが立ったのか、どうなのか。

 よくわからない微妙な結果になってしまった――。

 

   *  *  *

 

 そんなこんなで、かまぼこ隊の面々が蝶屋敷の玄関に集まっていた。

 みんな体調は万全、装備も整え終わっている。

 

 それから大きなひょうたんを抱えていた。

 『全集中・常中』習得における、最後の試験だ。

 

「「「フゥウウウ~っ!」」」

 

 その大きなひょうたんが彼らの呼吸によって……。

 パァーン! と内側から砕け散る。

 

 どうやら全員、きっちりと習得に成功したらしい。

 三人娘からお弁当としておにぎりをもらい……。

 

「冨岡さん!」

 

 炭治郎が気づいて振り向く。

 そこには見送りにきた義勇の姿があった。

 

「炭治郎、それとお前は……鮭大根か」

 

「ちがいますよ!?」

 

 義勇は炭治郎を見たあと、近くに立っていた俺を見てそう呼んだ。

 あれ、もしかして本名を覚えられてない!?

 

 鮭大根によって俺の名前が……記憶が上書きされているんだが。

 好きにしても、ほどがあるだろ!?

 

「まふゆも行くの? まだ新しい指令が来たわけじゃないんでしょ?」

 

 炭治郎が義勇と話しはじめた横で、俺はアオイに声をかけられていた。

 じつは彼女の言うとおり、まだ次の任務が決まったわけではない。

 

 だから、蝶屋敷でゆっくりしていようとすれば全然できる。

 けれど、どうしても行かなければならない理由が俺にはあった。

 

「すいません。次の指令が来たとき動きやすいように、ちょっと……」

 

「わかったわ。でも気をつけなさいよ。そして絶対に帰ってくること」

 

「大丈夫です。それに任務ならこれまでだって何度も――」

 

「いつだって心配してるに決まってるじゃない」

 

「……! そうですね。わかりました、絶対に帰ってきます」

 

「よろしい」

 

 と、どうやら義勇との話も済んだらしいな。

 かまぼこ隊の面々が歩き出す。

 

「それじゃあ、みんな……行ってきます!」

 

 俺は彼らを見送ったあと(・・・・・・)、追いかけるように歩き出した。

 ……え? 一緒に行かないのかって?

 

 こちらにも事情があるから、仕方ない。

 彼らとの別行動は必要なことなのだ。

 

「いよいよだな」

 

 彼らの目的地は駅だ。

 正確にいえば……。

 

 

「――”無限列車”」

 

 

 俺はずっと実力を隠しながら鬼と戦い続けてきた。

 それもすべてはこのときのため。

 

 今回の旅で、俺は本来の力を振るうことになるだろう。

 絶対に奇襲を成功させなければならない。

 

 

 そして、必ずや現段階で――上弦の鬼をひとり、削ってみせる!

 

 




以上で『立志編』は完結です!!
次話より『無限列車編』に突入です!!

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