TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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第71話『煉獄杏寿郎の継子』

 

 俺が2ヶ月ぶりに目を覚ましてから、カナヲはかいがいしく俺の世話を焼いてくれていた。

 彼女は、ムフーっとやる気いっぱいに鼻を鳴らして言う。

 

「私、まふゆのお姉ちゃんだから」

 

 と。

 ……うん、やる気があるのはいいんだけどね。

 

 カナヲはさっそくやらかしてくれた。

 重湯を作って持ってきてくれたのだが、それをひっくり返して俺は頭からぶっかけられる。

 

「カナヲ、あんたなにやってるのー!?」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

 横から見ていたアオイがわりと本気でカナヲを叱る。

 もし、俺じゃなかったら――『氷の呼吸』で熱を逃がせなかったら大惨事だったからなぁ。

 

「わたしは大丈夫だから。でも本当に気をつけてね? お願いね……マジで」

 

 カナヲは相変わらずの看病ベタだった。

 いつかは彼女も看病がうまくなる日も来るのだろうか?

 

 俺が彼女の看病で殺されるよりも先に、上達してくれるといいなぁ。

 それに、気持ち自体は本当にうれしかったから――。

 

   *  *  *

 

 そんな日々を過ごしていると、俺のもとへ見舞客がやってきた。

 その人物とは……。

 

「炭治郎さん、来てくれてありがとうございます」

 

「まふゆ……! よかった、本当によかった! 俺……ごめんっ、ごめん!」

 

 炭治郎は俺の顔を見るやいなや、手を握りしめてボロボロと泣きはじめてしまう。

 彼にはなんの責任もないというのに。

 

「俺がもっと強ければっ。まふゆを助けられるくらいの力があればっ」

 

「そんな、気にしないでください! これは自分がムチャをした結果なので!」

 

 むしろ、こっちが罪悪感を覚えてしまいそうだ。

 本当に心のきれいな、やさしい少年だと思った。

 

「でも、あのとき……もしも、しのぶさんたちがすぐに来てくれなかったら、キミはっ!」

 

「そうですね。運がよかったです」

 

 俺は万が一に備えて保険を打っておいた。

 それこそがしのぶの存在だった。

 

 理想をいえば猗窩座との戦闘にも参加してもらい、2対1や3対1の状況を作りたかったところだが……そこまでうまくはいかなかった。

 

「ままなりませんね……」

 

「ん?」

 

「あ、いや。なんでもないです」

 

 どうしてもある程度の偶然性は必要だ。

 まだ、こちらが向こうの動きを把握していることを知られてはいけない。

 

 俺たちにはまだ”次”の戦いがあるのだから。

 もしもここに来るのが無惨なら……なりふり構わず情報もすべて晒して全戦力を投入していい。

 

 けれど、今回はそうではない。

 浅草のときとは状況がちがうのだ。

 

 せめてあのとき無惨を発見できていれば。

 拠点まであとをつけ、万全の準備をした状態で包囲してこちらから仕掛けることもできていただろうに。

 

「……これで2回、か」

 

 思えば、しのぶに命を救われるのはこれで2度目だ。

 いつか、彼女には恩返しをしなければならないな。

 

「それより炭治郎さんたちは最近どうですか? みんな元気にしていますか?」

 

「うん、元気だよ。じつは俺たちも、今はここでお世話になっていて……」

 

 と炭治郎が説明してくれる。

 彼らは今、蝶屋敷を拠点にして毎日鍛錬をしながら……合間に来る鎹烏から指令に従い、任務へ繰り出す日々を送っているそうだ。

 

「無限列車での戦い以降、ひとりで行く任務のときも善逸はダダをこねなくなったし、伊之助は以前よりなおさら猪突猛進になって……」

 

「そっか、みんながんばっているんですね」

 

 俺の記憶どおりで安心する。

 本来であれば杏寿郎の死で変わるはずだった彼らの意識が、俺の昏睡で変わったというちがいはあるけれど……おおむね同じだ。

 

「……」

 

「炭治郎さん、どうかされましたか?」

 

 なにか悩んでいる様子の炭治郎に声をかける。

 彼は「いや」と言いよどみ……しかし、しばしののち意を決したように口を開いた。

 

 

「じつは俺――煉獄さんに『継子にならないか?』って誘われてるんだ」

 

 

「そ、そうなんですか!?」

 

「うん。もともと、無限列車で顔を合わせたときも誘われてて。てっきり冗談だと思っていたんだけど、あの戦いが終わったあと改めて……真剣に尋ねられて」

 

「すごいじゃないですか!」

 

 本来の歴史にはなかったできごとだ。

 これは杏寿郎が生き残ったからこそ起こった変化だろう。

 

 炭治郎がより強くなれるチャンス。

 俺としてもその展開は願ったり叶ったりだ。

 

「でも……」

 

「……?」

 

 炭治郎はしかし、あまりうれしくなさそうだった。

 普段の彼ならば一も二もなく飛びつきそうなものなのに。

 

「俺は……煉獄さんの継子にはふさわしくない」

 

「えっ?」

 

「だって、俺はすごく弱いんだ。情けないくらい弱い。あのときもなにもできなかった。今だって、毎日稽古してるけど亀みたいに成長が遅い」

 

「そんな!」

 

 慌てて炭治郎の言葉を否定する。

 彼には強くなってもらわねば、俺が困るのだ。

 

「人間は鬼とはちがうんです。一朝一夕では大きく変わりません。毎日の積み重ねが、あるときいきなり花を開くことはあれど」

 

「わかってる。でも、まふゆは俺よりもずっと小さいのに、俺よりもずっと強い」

 

「それは、まぁ」

 

 

「俺は――まふゆこそが、煉獄さんの継子になるべきだと思う!」

 

 

「え……えぇえええっ!?」

 

 い、いったいなにを言い出すんだお前はー!?

 

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