TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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第72話『恋のライバル?』

 

「俺じゃなく、まふゆこそが煉獄さんの継子になるべきだと思う!」

 

 俺は炭治郎にとんでもない高評価をされていた。

 と、それを横で聞いていたカナヲが……。

 

 ――ぷくーっ!

 

 と、頬を膨らませていた。

 なんて珍しい表情……これはもしかして、嫉妬!?

 

「なるほど! そうか、そうか!」

 

 俺は完全に理解した!

 きっとカナヲは、好きな男が目の前でほかの女をべた褒めするもんだから、気が気じゃなくなったんだ!

 

 つまりあのとき、きちんとフラグは立っていた、ということ!

 いやぁ~、若者同士の恋愛はなんとも初々しいのう!

 

「わ、私だって強くなるもん! まふゆを守れるくらいに! そのためにいっぱい訓練するし!」

 

「うんうん、そうだね。わかるよ、わかるわかる」

 

 カナヲはどこか怒っているみたいに言う。

 きっと、自分のほうが炭治郎に近いんだ、とアピールしているのだろう。

 

 ただ、自分の感情がまだわからないんだろうな。

 ふっ、そうやって人は成長していくのさ……とか考えていたら、彼女はベッド脇から手を伸ばしギュッと俺に抱き着いてきた。

 

 ……ん? んんっ?

 これは……なんだろう? 彼女なりの恋敵への攻撃なのだろうか?

 

「絶対に渡さない、から」

 

「あはは、心配しなくても大丈夫だよ」

 

 言われなくても、炭治郎()取るつもりなんてない。

 あいにく、俺に男色の気はないから。

 

 でもカナヲ……あの、ちょっと。

 俺はポンポンと、彼女の肩を軽く叩いて言う。

 

「ちょっと離れてもらえると助かるかも」

 

 俺が眠っている間に2ヶ月も経ち、季節も真夏になっていた。

 おかげで、そう引っ付かれると暑くてかなわない。

 

 そんな俺の言葉に、カナヲは「ガーン」と顔を青ざめさせた。

 わなわなと震えながら呟く。

 

「やっぱり、まふゆ……私より炭治郎のことを」

 

「え?」

 

「ま……まふゆのバカーーーー!」

 

「ちょっ!?」

 

 そのままカナヲは病室を飛び出していってしまう。

 いやいや、「バカー」って……。

 

「……あんたたちなにやってるの?」

 

「あ、アオイさん」

 

「まふゆ、体調はどう?」

 

「はい、もうかなりよくなりました」

 

 この眠っていた2ヶ月でケガ自体はすでにほとんど治っている。

 だから、起きてから必要なのはあくまで落ちた体力や弱った胃腸の回復だけだったし。

 

「そう、それはよかったわ。じゃあ、せっかくだし今日は蝶屋敷のみんなで出かけましょうか」

 

「出かけるって、どこへ?」

 

「それは……」

 

   *  *  *

 

「――夏祭りよ!」

 

 アオイはすこし得意げに答えを言った。

 まだ明るい時間帯だが、すでに大勢の人が行き交っていた。

 

 屋台からいろんな食べものの匂いが漂ってきている。

 まぁ、この時代……屋台はお祭りじゃなくても、いつもやっているが。

 

 けれど、今日はいつにも増して多い。

 俺たちの装いもお祭りに合わせたものになっていた。

 

「やーん! アオイちゃん、浴衣とってもかわいいわ~」

 

「カナエさまも、とてもステキだと思います」

 

 みんな浴衣などの和装だ。

 いつも隊服の上から看護師服を重ね着しているアオイの和服姿は、ちょっと珍しい。

 

「姉さん、お祭りだからってはしゃぎすぎちゃダメですからね」

 

「そんなに心配しなくても大丈夫よ、しのぶ。姉さん、とーっても元気なんだから」

 

「まふゆも今日はまだ、あまりムリをしてはいけませんよ」

 

「わかりました」

 

「すみ・きよ・なほの3人もはぐれないよう、ちゃんと私について――」

 

 そう、しのぶがみんなを仕切ってくれていた。

 炭治郎も禰豆子とふたりで店を冷やかしていた。

 

 その間に、俺はちょんちょんとなりに立っていたカナヲの脇腹を突っつく。

 カナヲが「ひゃうっ!?」と予想外にかわいいリアクションを見せた。

 

「ビックリした……どうしたの、まふゆ?」

 

 昼間は怒らせてしまったからな。

 ここらで仲直りをしておきたかった。

 

「わたし、本当はまだちょっと調子がよくなくて。今日は一緒にいてほしいなって」

 

「えっ!? だ、大丈夫なの!?」

 

「あっ、そこまでヒドイわけじゃないよ。ただ、不安だから念のために」

 

「わかった。私、まふゆから離れないよ」

 

 言って、カナヲが俺と腕を組んでくる。

 ふわりとなんだかいい匂いがして……。

 

「っ……」

 

 俺は不覚にもすこし、ドキリとしてしまった。

 カナヲの横顔は本当にきれいで、かわいらしかった。

 

 それに和服もすごく似合っていた。

 俺の視線に気づいたのか、彼女がコテンと首を傾げて尋ねてくる。

 

「まふゆ、どうかしたの?」

 

「な、なんでもないよ」

 

「やっぱり、ちょっと顔が赤いかも。体調が悪化したらすぐに言って」

 

 そうじゃなくて、これは……えっと、そう!

 アレだ! 全部、夏のせい!

 

「わたし、じつはあまり夏場の強い日差し……というか、暑いのが得意ではなくて。平熱が低いせいなのかな? すこし疲れやすくって」

 

「……雪女? でも、まふゆとくっついてるとひんやりして、気持ちいいかも」

 

「うへぇ~」

 

 カナヲがピタっと頬っぺたまで引っ付けてくる。

 おいコラ、暑いって言ってんだろーが。

 

「……あんたら最近、仲良すぎない?」

 

 俺たちを見ながらアオイが言ってくる。

 ちがう! そういうのじゃないから!?

 

 俺はクイっとあごで前を示した。

 そこにはカナエにピッタリと寄り添うしのぶの姿があった。

 

「……あ~」

 

 アオイはなにかを察したように額を押さえた。

 きっと、カナヲはあれを見て育って……影響を受けているのだと思う。

 

 しのぶは鬼殺隊士として仕事をしているときはすごく凛々しい。

 しかし、姉と一緒のときはベッタリだ。

 

「きっと、アレが普通の……姉妹の距離感だと勘違いしてるんだと思います」

 

 カナエが一度死にかけたのが理由だろう。

 ツンケンしていたしのぶが、あぁなったのは……いや。

 

 ――戻った(・・・)のは。

 

 まるで子供のようだ、と俺は思った。

 今のしのぶは、俺の記憶にある……まだ鬼に両親が殺される前の、甘えんぼだったころの彼女の姿と重なって見えた。

 

「そう、それなら納得ね……って、なるわけないでしょうが! あたしだってカナヲのお姉ちゃんのはずなんだけど!?」

 

 ちっ、誤魔化されてはくれなかったか。

 余計な波風は立てたくないし、仕方ない。

 

 ここはバランスを取るためにひと肌脱ぐとしよう。

 俺はひとりで寂しそうなアオイに近づくと、ギュッと彼女に抱き着いた。

 

「……アオイお姉ちゃん、大好き」

 

「~~~~!?!?!?」

 

 よし、これで――万事解決だな!

 

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