TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手 作:可愛ケイ@VTuber兼小説家
俺たちは蝶屋敷の面々は、みんなで夏祭りを見て回っていた。
ときおり、屋台で食べものを買って食べたり……。
「……あっ」
そんな中、ひとつのお店に目が留まった。
水槽の中をきれいな赤くて小さな生きものが悠々と泳いでいた。
――金魚すくいだ。
そういえば蝶屋敷でも金魚が飼われていたな。
しのぶが大切に育てている。
善逸が禰豆子に見せるために勝手に部屋から持ち出して、雷を落とされたりしてたっけ。
にしても知らなかった。
これってもうこの時代からあったんだなぁ。
「まふゆ、やりたいの?」
「え?」
「せっかくだし、挑戦してみなさいよ」
そういうつもりではなかったのだが……。
アオイに促され、水槽の前にしゃがみ込む。
「おじさん、1回お願いします」
「はいよ」
自分の財布からお金を取り出し、渡す。
外見年齢こそ12歳ほどだが、これでもそれなりに給料をもらっているからな。
自分が遊ぶ金くらいは自分で払う。
とくに、最近はまた階級が上がっていたし。
まぁ、その上がった給料が反映されるのは次回の任務からだけれど。
今の時代まだ『労災』なんて概念はなく、休んでいる間は給料が出ないから。
といっても、入院している間の衣食住は保証してくれるし、治療費も不要。
鬼殺隊はかなり時代を先取りした組織だといえるだろう。
「がんばりな、お嬢ちゃん」
ポイとお椀を受け取る。
現代のものとそう変わらないな。
しいて言うなら、ポイの枠が針金でできていることくらい。
そこにピンと張った和紙がつけられている。
そういえばポイの語源は「ポイッ」と簡単に捨てられるから、と聞いたことがあるのだが……。
本当なのだろうか?
「まふゆ、やりかたわかる?」
「大丈夫です」
言って、ポイを水の中へと沈めていく。
ただ、知ってはいても実際にやったことって……じつはほとんどないんだよなぁ。
俺の手元を、後ろからカナヲとアオイが覗き込んでいた。
見られていると、余計に緊張するな。
「そぉーっと、そぉーっと……ていっ!」
「「あっ」」
あ、あれ? あっさりと破れてしまった。
もしかして、俺って金魚すくいヘタなのか?
昔……いや、未来? 現代で挑戦したときはもうちょっとできた気がするのだが。
あるいは、病み上がりだから調子が悪いのか?
「あちゃー。残念だったね、お嬢ちゃん」
「……も、もう1回!」
「おや、お金はあるのかい?」
「あります!」
「ちょっと、まふゆ?」
「まふゆ、私もこのお店はあんまりよくない、と思う」
「止めないでください」
俺は珍しくムキになっていた。
あるいは、この……お祭りの雰囲気にあてられていたのかもしれない。
戦国時代は10年近く、休みなく鬼を狩るだけの生活をしていた。
そのころは復讐のことしか考えられなかった。
それをようやく果たして、この時代に来て……。
思えば、俺は長らく『遊び』というものに触れていなかったのだと気づく。
「もう1回!」
「はいよ」
「もう1回!」
「はいはい、っと」
「もう1回!」
俺は繰り返し挑戦し……。
そして、ついに――。
「……あっ。や、やったぁ~!」
俺はようやく金魚を1匹すくうことに成功する。
お椀の中で、その子はキラキラと赤く輝いて見えた。
年がいもなくはしゃいでしまう。
笑顔でふたりのほうを振り向いた。
「見て見て――お姉ちゃん!」
「「~~~~っ!」」
無意識にそんな言葉が口をついて出ていた。
カナヲとアオイはなぜか頬を赤く染めていた。
あっ、しまった。
ふたりとも、きっと暑かったのだろう。
炎天下の中、待たせすぎてしまった。
ちょっと熱中しすぎたな、と我に返る。
「よかったわね、まふゆ。おじさま、せっかくだからこの金魚を連れて帰りたいのですが」
「……あ~」
しかし、屋台のおじさんはなにかを考えるように視線を斜め上へと向けた。
それから、ニヤッと笑う。
「悪いねぇー。うちじゃ、金魚の持ち帰りはやってないんだ」
そうなのか。
じゃあ仕方ないな。
まぁ、連れ帰ってもあまりお世話できる自信もないしなぁ。
そう思ってお椀を傾けたたとき――パシッ、とカナヲが俺の手首を掴んで止めた。
「まふゆ、大丈夫」
「えっと?」
なにが大丈夫なのだろうか?
そう首を傾げて……ふたりがいつの間にか、剣呑な雰囲気に変わっていることに気づく。
「おじさま、すこしよろしいでしょうか?」
「なんだい?」
「あなたは――ウソを吐いています!」
アオイが言って、ビシィっと屋台のおじさんに指を突きつけた。
いや、ちがう……正確には、彼女の指はそのすぐ脇を指していた。
「そこにあるのは持ち帰り用の缶ですよね。あなた、私たちが女子どもばかりだからって、外見で判断して対応を変えましたね」
「な、なんのことだか」
「それとこのポイも破れやすいように細工されてる」
「カナヲの言うとおりです。まふゆが納得してるみたいだったから、私たちも言わなかったけど……でも、これ以上はもうガマンできません! 姉として、妹が悲しむのは見過ごせない!」
アオイとカナヲ屋台のおじさんに詰め寄る。
あ、あれ? なんかふたりとも――めちゃくちゃキレてる!?