TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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第76話『音柱・宇随天元』

 

 『氷の呼吸』を俺向けにアレンジしたのは、縁壱だ。

 

 自分で呼吸を作るなんてのは、それこそひと握りの天才だけができる偉業。

 あいにく俺にそんな才能はないからな。

 

 ゆえに、俺は本来の『氷の呼吸』がどんなものか知らない。

 もしかしたら、俺の呼吸は本家とはまったくの別物になっているのかもしれない。

 

 かなり使い手の少ない呼吸らしく、俺も自分以外の使用者に会ったことがないし……。

 すでに伝承が途絶えている可能性も高い。

 

 もう答え合わせができる機会は一生ないのかもしれないな。

 と、そんなことを考えていると「あれ?」とアオイが首を傾げた。

 

「そういえば、まふゆの使っている呼吸って……」

 

「あっ!? いや、その……えーっと!?」

 

 そういえばアオイには説明していなかったっけ。

 というか、まだだれにも言ってなかった。

 

 ど、どうしよう?

 今ここで打ち明けるべきだろうか? そう迷っていると……。

 

「はぁ、まったく」

 

 アオイは呆れたように嘆息した。

 それから「そういえば」と口を開く。

 

「炭治郎さんたち、今ごろどうしているんでしょうね」

 

 と、アオイはあからさまに話を変えてくれた。

 「さっきの件は話せるときが来てからでいいわよ」とでもいう風に。

 

 俺はそんな、アオイのやさしさに甘えることにした。

 彼女の話題に乗っかる。

 

「たしかに。炭治郎さんたちが蝶屋敷を発ってからもう2ヶ月ですもんね」

 

「まさか炎柱さまの継子になるだなんて思わなかったから、本当にビックリしたわよ」

 

 俺の見舞いに来たあと、炭治郎はすぐに杏寿郎の継子になった。

 それに伴って拠点も煉獄家の屋敷へと移している。

 

 善逸と伊之助もそれについて行っており、最近は会っていない。

 けれど、ときおり手紙はくれていて……。

 

「みんな、元気でやっているそうですよ。まぁ、炭治郎さん……煉獄さんのお父さんに初対面でぶん殴られたらしいですけれど」

 

「えぇっ!? それって元・炎柱さまよね!? だ、大丈夫なの!?」

 

「あはは、大丈夫だと思いますよ。最近はすこしずつ仲直りしているみたいですし」

 

 杏寿郎の父――煉獄槇寿郎(しんじゅろう)は『日の呼吸』への劣等感に囚われている。

 そして、炭治郎はまさにそれの使い手だからなぁ。

 

 逆鱗にダイレクトアタックだ。

 ただ、槇寿郎はかわいそうな人だと思う。

 

 もちろん、どんな理由があろうと他者にやつあたりしていいわけはないが……。

 『日の呼吸』について知ってしまったタイミングで、妻の病死まで重なった。

 

 酒におぼれ、ひどく荒れてしまうのもムリはない。

 だが……。

 

「あ~」

 

「どうしたの、まふゆ?」

 

「いえ、なんでもその仲直りにわたしがひと役買ったとかで。ちょっと気恥ずかしいというか」

 

「へぇー」

 

「あぁ、それと炭治郎さんたちですが、近々こちらに来るとも言ってました。わたしが全快したことを伝えたら『手合わせをお願いしたい』って」

 

「じゃあ、ごはんをいっぱい用意しておかなきゃね。とくに伊之助さんはよく食べるから」

 

 そうアオイは持ち前の面倒見のよさを見せる。

 手のかかる子ほどかわいい、というやつかもしれない。

 

 彼女と彼の間にも知らず知らずにフラグが立っているのだろうか?

 そんなことを考えていると……。

 

「あれ? なんだか玄関のほうが騒がしいですね」

 

「ほんとね」

 

 ウワサをすればというやつかも。

 俺たちはそう、炭治郎たちが来たのかと思いふたりでそちらの様子を見に行く。

 

 

「――なんだなんだ、どいつも地味な顔をしやがって。もっと”派手”にオレを歓迎しろ!」

 

 

 そこにいたのはやけに目立つ美丈夫だった。

 筋骨隆々な肉体に、金剛石のような意匠をちりばめた額当て……。

 

「お、音柱さま!?」

 

 その姿を見てアオイが驚いたように声を上げる。

 彼こそが音柱――”宇随天元(うずいてんげん)”。

 

 『音の呼吸』を得意とし、祭りの神を自称する元忍だ。

 背中には鎖で繋がれた、特徴的な二本一対の刀を背負っている。

 

「今日はお前らに派手に任務をくれてやろうと思ってな」

 

「……!」

 

 そうか、ついにこのときがきたのか。

 玄関にはすでにカナヲや三人娘も集まっていた。

 

 ここで、アオイと……えーっと、三人娘のひとりが一緒に連れて行かれそうになるのだ。

 すまん、さすがにだれかまでは覚えてない。

 

 そして、それをカナヲが引き留めてくれる。

 銅貨を投げるのではなく、自分の意思で助けようとしてくれる感動的なシーンで……。

 

「じゃあ、コイツと……よし、お前でいいか」

 

「……えっ?」

 

 ひょいっと俺の身体が持ち上げられていた。

 アオイと一緒に選ばれたのは、俺でした。

 

「えぇえええ~!? ま、待って待って! ちがう! 間違ってます、宇随さん!?」

 

「あん? おっと、そうだっけか? テメェが胡蝶の継子だったか?」

 

「あ、いや。そうではないんですけれど」

 

「じゃあ、合ってるじゃねェか。地味にウソを吐くんじゃねーよ」

 

「で、でも……」

 

「オレは任務で女の隊員が必要なんだよ。継子じゃねェヤツは胡蝶の許可を取る必要もない。テメェらふたりとも隊服着てんだろーが。隊員なら上官の命令には従いやがれ」

 

 ……た、たしかに!?

 三人娘のだれかを連れて行くよりも、圧倒的に正しいことを言ってるな!?

 

「じゃあ、説明も済んだしもういいな? オレたちは派手に任務へ向かうぞ」

 

 そう言って、天元は俺たちを抱えたまま歩き出す。

 アオイの顔がサァーっと恐怖で青ざめる。

 

「……か、カナヲっ!」

 

 アオイはまだ鬼へのトラウマを払拭できていない。

 彼女は助けを求めるようにその手をカナヲへと伸ばした――。

 

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