TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手 作:可愛ケイ@VTuber兼小説家
あちこちからカンカンと鉄を叩く音が聞こえる
それに湯煙が上がっているのも見えた。
「案内ありがとう」
「いえ、縁壱さまのお力になれるならば」
縁壱はここまで案内してくれた、黒子のような恰好をした者に礼を述べていた。
彼らの名は”
鬼殺隊の事後処理部隊だ。
縁壱の兄が当時の当主を殺したことがきっかけで設立された部隊。
たしかに、縁壱は鬼殺隊から追放された。
けれど、いまだにこうして彼を慕う者や……そういった者から教えを受けた人たちが、陰ながら力を貸してくれていた。
「縁壱さま、お待ちしておりました」
ひょっとこの面をつけた大柄な男が出迎えに来てくれる。
というか、この里の男はみんな面をつけている。
「私の刀の手入れを頼むよ。それとこの子に刀をひと振、打ってやってほしい」
「お師匠さま……い、いいんですか!?」
「んじゃ、それワシが打っちゃおうかの」
そこへ俺よりも小さなおじいちゃんがひょこっと現れた。
この小ささ、独特な話しかた……既視感がある。
「さ、里長!?」
出迎えに来てくれていた男が、驚いた様子で言う。
やっぱり!
「ほかでもない縁壱ちゃんの頼みやからね。それに……ちょいと失礼するで」
ペタペタと身体を触られる。
ほかにも手のひらを見られたり、刀を素振りさせられたりした。
「お嬢ちゃん、名前は?」
「まふゆ、です」
「ふむ。まふゆちゃんは、刀を握ってからどれくらいなんぢゃ?」
「1年くらいです」
「ふーむ。自分……ビックリするくらいちっちゃいのー」
「……」
お前が言うな! と思った。
けど、俺は大人なので黙っておいた。
「でも、なるほどぢゃのー」
「……?」
ひとり、納得したようにうなずく里長に首を傾げる。
答えるつもりはないのか、彼は話を次へと移した。
「ふたりとも今日は里に泊まっていきなはれ。縁壱ちゃんの刀の手入れは、それまでに終わらせといちゃる。まふゆちゃんのは半月後には完成させて届けちゃるから、期待しといてええよー」
「ありがとうございます!」
言って、俺たちは宿へと案内される。
縁壱と一緒に温泉に浸かって、旅の疲れを癒す。
齢80を超えているはずなのに、彼の肉体はすさまじい。
全盛期などとっくに過ぎているのだが……なんというか、ムダがない。
俺の肉体が彼に追いつくことは一生ないだろうな。
……え?
そんなことより男女で一緒に入ってるのかって?
まぁ、この時代は混浴が当たり前だからなぁ。
そもそも裸を恥ずかしいと思う感覚が薄い。
往来の場で水浴びをしている姿すら見かけるほど。
最初は俺もちょっと気になったが、すぐに慣れた。
でも、あれ? そういえば男女といえば……。
風呂上がり、部屋へ案内されている途中で気になって口に出す。
「ここでお世話してくださるかたって、みんな男性なんですね?」
中居さんもみんなひょっとこの面をした男性ばかりだった。
というか、この里に来てから一度も女性に遭遇していなかった。
とくに意味があっての発言ではない。
思ったことを言っただったのだが、縁壱に「まふゆ」とたしなめられてしまう。
「えっと、なにかマズかったのでしょうか?」
首を傾げているうちに、俺たちはそれぞれの部屋に到着した。
ひとり1室とは、なんと贅沢な。
畳にごろんと転がって、ぐぐーっと身体を伸ばした。
勝手に声が出た。
「……ふぁぁ~」
思えば遠いところまで来たもんだ。
前世の記憶を取り戻して1年、あっという間だった。
絶望からはじまった旅だったが、その後は幸運に恵まれていた。
縁壱に拾われて、鍛えられ……。
そして、ついには自分の日輪刀まで!
今までずっと借りものだったからなぁ……。
しかも、まさか里一番の刀鍛冶である長の手で打ってもらえるだなんて。
これでまたひとつ……あの『熱』の鬼への復讐に近づいた。
「失礼します」
考えごとをしていたら、ふすまが開けられた。
でも……、あれ?
「女の人?」
この里で俺ははじめて女性に出会った。
男たちとはちがい、ひょっとこの面をつけたりせず素顔を晒していた。
「はい、わたくしめは女でございます。まふゆさまは同性の中居をご希望とのことで、わたくしが担当を代わることとなりました」
「えっ? あっ!?」
そういうことかー!?
ただ思ったことを言っただけなのだが、そういう解釈をされてしまったのか!
どうりで縁壱がたしなめてきたわけだ。
余計な手間をかけさせてしまった。
「お食事はすぐにお持ちいたしましょうか?」
「じゃあ、お願いします」
まぁ、なってしまった以上は仕方ないな。
俺はいっそ開き直って、食事の配膳をしている彼女に問うた。
「ずっと気になっていたのですが……」
「はい、なんでしょう」
「どうしてこの里は男性ばかりなのでしょうか?」
「っ……」
一瞬、ピクっと女性の身体が震え、言葉に詰まった。
えっと、なにか聞いてはいけないことを聞いてしまったのだろうか?
「……鍛冶場は女人禁制ですので」
「あっ」
女性は絞り出すような声で言った。
う、うわー!? や、やっちゃったー!?