TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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第8話『刀鍛冶の里』

 

 あちこちからカンカンと鉄を叩く音が聞こえる

 それに湯煙が上がっているのも見えた。

 

「案内ありがとう」

 

「いえ、縁壱さまのお力になれるならば」

 

 縁壱はここまで案内してくれた、黒子のような恰好をした者に礼を述べていた。

 彼らの名は”(カクシ)”。

 

 鬼殺隊の事後処理部隊だ。

 縁壱の兄が当時の当主を殺したことがきっかけで設立された部隊。

 

 たしかに、縁壱は鬼殺隊から追放された。

 けれど、いまだにこうして彼を慕う者や……そういった者から教えを受けた人たちが、陰ながら力を貸してくれていた。

 

「縁壱さま、お待ちしておりました」

 

 ひょっとこの面をつけた大柄な男が出迎えに来てくれる。

 というか、この里の男はみんな面をつけている。

 

「私の刀の手入れを頼むよ。それとこの子に刀をひと振、打ってやってほしい」

 

「お師匠さま……い、いいんですか!?」

 

「んじゃ、それワシが打っちゃおうかの」

 

 そこへ俺よりも小さなおじいちゃんがひょこっと現れた。

 この小ささ、独特な話しかた……既視感がある。

 

「さ、里長!?」

 

 出迎えに来てくれていた男が、驚いた様子で言う。

 やっぱり!

 

「ほかでもない縁壱ちゃんの頼みやからね。それに……ちょいと失礼するで」

 

 ペタペタと身体を触られる。

 ほかにも手のひらを見られたり、刀を素振りさせられたりした。

 

「お嬢ちゃん、名前は?」

 

「まふゆ、です」

 

「ふむ。まふゆちゃんは、刀を握ってからどれくらいなんぢゃ?」

 

「1年くらいです」

 

「ふーむ。自分……ビックリするくらいちっちゃいのー」

 

「……」

 

 お前が言うな! と思った。

 けど、俺は大人なので黙っておいた。

 

「でも、なるほどぢゃのー」

 

「……?」

 

 ひとり、納得したようにうなずく里長に首を傾げる。

 答えるつもりはないのか、彼は話を次へと移した。

 

「ふたりとも今日は里に泊まっていきなはれ。縁壱ちゃんの刀の手入れは、それまでに終わらせといちゃる。まふゆちゃんのは半月後には完成させて届けちゃるから、期待しといてええよー」

 

「ありがとうございます!」

 

 言って、俺たちは宿へと案内される。

 縁壱と一緒に温泉に浸かって、旅の疲れを癒す。

 

 齢80を超えているはずなのに、彼の肉体はすさまじい。

 

 全盛期などとっくに過ぎているのだが……なんというか、ムダがない。

 俺の肉体が彼に追いつくことは一生ないだろうな。

 

 ……え?

 そんなことより男女で一緒に入ってるのかって?

 

 まぁ、この時代は混浴が当たり前だからなぁ。

 そもそも裸を恥ずかしいと思う感覚が薄い。

 

 往来の場で水浴びをしている姿すら見かけるほど。

 最初は俺もちょっと気になったが、すぐに慣れた。

 

 でも、あれ? そういえば男女といえば……。

 風呂上がり、部屋へ案内されている途中で気になって口に出す。

 

「ここでお世話してくださるかたって、みんな男性なんですね?」

 

 中居さんもみんなひょっとこの面をした男性ばかりだった。

 というか、この里に来てから一度も女性に遭遇していなかった。

 

 とくに意味があっての発言ではない。

 思ったことを言っただったのだが、縁壱に「まふゆ」とたしなめられてしまう。

 

「えっと、なにかマズかったのでしょうか?」

 

 首を傾げているうちに、俺たちはそれぞれの部屋に到着した。

 ひとり1室とは、なんと贅沢な。

 

 畳にごろんと転がって、ぐぐーっと身体を伸ばした。

 勝手に声が出た。

 

「……ふぁぁ~」

 

 思えば遠いところまで来たもんだ。

 前世の記憶を取り戻して1年、あっという間だった。

 

 絶望からはじまった旅だったが、その後は幸運に恵まれていた。

 縁壱に拾われて、鍛えられ……。

 

 そして、ついには自分の日輪刀まで!

 今までずっと借りものだったからなぁ……。

 

 しかも、まさか里一番の刀鍛冶である長の手で打ってもらえるだなんて。

 これでまたひとつ……あの『熱』の鬼への復讐に近づいた。

 

「失礼します」

 

 考えごとをしていたら、ふすまが開けられた。

 でも……、あれ?

 

「女の人?」

 

 この里で俺ははじめて女性に出会った。

 男たちとはちがい、ひょっとこの面をつけたりせず素顔を晒していた。

 

「はい、わたくしめは女でございます。まふゆさまは同性の中居をご希望とのことで、わたくしが担当を代わることとなりました」

 

「えっ? あっ!?」

 

 そういうことかー!?

 ただ思ったことを言っただけなのだが、そういう解釈をされてしまったのか!

 

 どうりで縁壱がたしなめてきたわけだ。

 余計な手間をかけさせてしまった。

 

「お食事はすぐにお持ちいたしましょうか?」

 

「じゃあ、お願いします」

 

 まぁ、なってしまった以上は仕方ないな。

 俺はいっそ開き直って、食事の配膳をしている彼女に問うた。

 

「ずっと気になっていたのですが……」

 

「はい、なんでしょう」

 

「どうしてこの里は男性ばかりなのでしょうか?」

 

「っ……」

 

 一瞬、ピクっと女性の身体が震え、言葉に詰まった。

 えっと、なにか聞いてはいけないことを聞いてしまったのだろうか?

 

「……鍛冶場は女人禁制ですので」

 

「あっ」

 

 女性は絞り出すような声で言った。

 う、うわー!? や、やっちゃったー!?

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