TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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『遊郭編』開幕!!


~遊郭編~
第79話『遊郭潜入大作戦』


 

 俺とアオイはわけもわからぬまま、天元に遊郭へと売られ……。

 そして、潜入任務がはじまった。

 

「あんたら、いつまでボーっと突っ立ってるんだい」

 

「「は、はいぃっ!」」

 

 やり手ババアから鋭い声が飛んできて、俺たちは揃ってビクゥっ! と肩を跳ね上げた。

 ちなみに『やり手』というのは役職の名前だそうだ。

 

 遊女たちを管理する役割だとか。

 とはいえ、実際かなりのやり手(・・・)ではありそうだったが。

 

「ついてきな」

 

 やり手ババアの背中を慌てて追いかける。

 心細さから、俺たちはお互いを抱きしめるみたいに引っ付いていた。

 

「お、おぉ~……」

 

「あ、あわわわ!?」

 

 俺もアオイもキョロキョロと落ち着きなく店内を見渡しながら歩いていた。

 いろいろと派手だし、なにより次々に色気を漂わせる美女とすれちがうのだ!

 

 店内はお香が炊かれているのか、甘ったるい匂いが満ちていた。

 なんだか頭がクラクラした。

 

「あの、アオイさんは遊郭に遊びに来たことがあったりは……?」

 

「あるわけないでしょ!? あたし女だし!?」

 

「ででで、ですよね!?」

 

 ヒソヒソと小声でやり取りする。

 アオイが話すたびに吐息が耳にかかって、ムズムズした。

 

 ここの空気にあてられたのだろうか?

 俺までちょっと変な気分になってきそうだった。

 

「入るよ」

 

 やり手ババアがふすまを開けて、ひとつの部屋に入っていく。

 そこには何人かの遊女がたむろしていた。

 

「新入りだよ。ほら、あんたら。みんなに自己紹介しな」

 

 やり手ババアに言われて、俺たちは頭を下げる。

 ええーっと、これから吉原の遊女になるわけだから……。

 

「あ、あちきはまふゆ……じゃなかった、”ふゆ子”といいんす! これからお頼ん申しいす!」

 

 俺は精いっぱいに遊女っぽい言葉づかいをイメージしてあいさつをした。

 そのとき、やり手ババアは目を鋭くして俺に言い放った。

 

 

「あんた――いつの時代(・・・・・)の人間だい?」

 

 

「……え?」

 

 ブワッと汗が噴き出した。

 まさか、この優秀なやり手は俺が戦国時代からやって来たことに気づいて……!?

 

「今どき、そんなしゃべりかたしてる遊女なんていないよ」

 

「……あ~! そっちか~!?」

 

「ほかになにがあるんだい」

 

「ななな、なにもないです!」

 

 紛らわしい言いかたをしないでほしい!

 心臓に悪いから!

 

「でも、たしかに言われてみると」

 

 先輩遊女たちはみんな”くるわ言葉”ではなく普通に話していた。

 そっか、大正時代にはもう廃れてしまっているんだな。

 

 まぁ、普通に話していいなら楽だし助かるけれど。

 ようやく大正時代の言葉に慣れたばかりなのに、また新しいのを覚えるのは大変だし。

 

「それで、そっちのあんたは?」

 

「あ、あたしはアオ子です! これからよろしくお願いします!」

 

 アオイのあいさつに、先輩遊女たちが「よろしくね」とやさしく返してくれる。

 もっとギスギスしているのを想像していたから、ホッとした。

 

「これからあんたらはここで雑用として働きながら、ほかの遊女から立ち居振る舞いや読み書き、芸事を学びな」

 

「「は、はい」」

 

「自由になりたきゃ金を稼ぐんだよ。だれかに”身請け”してもらうにしても、まずは立派な遊女にならなきゃだれも買ってはくれないからね」

 

「「が、がんばります」」

 

「それじゃあ、あとのことは任せたよ」

 

 そう先輩遊女たちに言って、やり手ババアは部屋を去っていった。

 残された俺たちはすぐさま彼女たちに囲まれる。

 

「ねぇ、ふたりはどこから来たの?」

 

「今、何歳?」

 

「それよりもまず聞くことがあるでしょ?」

 

「「たしかに」」

 

 

「ふたりは――”姉妹”なの?」

 

 

 そう先輩遊女たちは興味津々に問うてくる。

 もしかしたら、姉妹まとめて売られてくるのは珍しいのかもしれない。

 

「えっと、どうしてそう思ったんですか?」

 

「だって髪色がそっくりだし。同じ柄の装飾品をつけているし」

 

 先輩遊女たちが俺たちふたりを見比べながら、そう問うてくる。

 今の俺はアオイとそっくりな黒髪になっていた。

 

 それと愛用の、蝶柄の髪飾りと襟巻き(マフラー)

 俺はギュっと彼女の腕を取って言った。

 

 

「う、うん! そうだよ! ねっ――お姉ちゃん(・・・・・)!」

 

 

「そそそ、そうね! 妹!」

 

 俺たちはぎこちなくそう誤魔化した。

 「妹」呼びはおかしいだろ! と思ったが、先輩遊女たちは「やっぱり!」と騒ぐのに夢中で気づかなかったようだ。

 

 俺たちは潜入中は本物の『姉妹』で通すことになっていた。

 きっかけは天元との会話だ。

 

『おい、そっちのチビっこいの。テメェは髪色が派手すぎるな』

 

『たしかに。じゃあ、染め粉を使って目立たない色にしておきます』

 

『だったら、いっそそっちの青っぽいのと同じ髪色にすりゃあいい。ついでに姉妹で通せ。地味にいい目くらましになるだろうよ』

 

 とのこと。

 もちろん、頬の『雪の結晶』のような傷痕も化粧で隠している。

 

 こんな大きな傷があったら商品にならないし。

 もし、やり手ババアにバレたら怒られるのもわかっているし。

 

「それじゃあ、ふたりとも。これからよろしくね」

 

「「こちらこそ、よろしくお願いします」」

 

 こうして、俺とアオイは……いや、ふゆ子とアオ子は遊郭で働きはじめた。

 そして……。

 

   *  *  *

 

 

「――アオ子ちゃんには今晩から、お客さんの前に出てもらいます」

 

 

 翌日、先輩遊女がそう言った。

 いつだって、トラブルは想定外の方向からやってくる――。

 

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