TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手 作:可愛ケイ@VTuber兼小説家
ぼ、房中術だって!?
俺は今さら天元に「都合がいい」と言われた理由を理解する。
この話をするために、アオイがいないほうがよかったのだ。
だが……。
――俺だってそんな経験、あるわけないんだけどぉおおお!?
忍から教わったのはあくまで戦闘に関わることだけ。
だって考えてもみろ。
鬼に『おいろけ』なんて技、通じるわけないじゃん!?
必要がなければ当然、学ぶはずもない。
戦国時代は復讐心から鬼を狩ること以外なにも考えていない生活だったし。
「まふゆ、どうしよう。私……私……」
アオイが泣きそうな顔で俺に尋ねてくる。
瞬間、俺は「ハッ」とした。
アオイはまだ17歳やそこらの女の子だ。
一方で俺はもう成人している。
――お前が引き受けてやれ。
天元の言葉が脳内で反響する。
そうだ、アオイにそんなことをさせるわけにはいかない。
やるしかないのだ、俺が。
俺は彼女にそっと寄り添って声をかけた。
「アオイさん、大丈夫です」
「まふゆ……?」
アオイは困惑した様子で俺を見ていた。
* * *
「アオ子の代わりにわたしをお客さんの前に出してください」
「……はぁ~、なにを言うかと思ったら」
俺はやり手ババアに直談判をしに来ていた。
しかし、彼女は呆れたように嘆息する。
「まぁ、たしかにあんたもアオ子と同じくらい物覚えはいいけどね。あんたはまだ若すぎるし、もうちょっと教育を受けてからでいいだろう?」
「いえ、じつはわたしは……見た目こそ幼いですが、本当はすでに大人です」
「……」
やり手ババアはジトーっとした目で俺を見てくる。
ちっとも信じていない様子だった。
やっぱりダメか。今まで信じてもらえたことないもんな。
そう諦めかけたとき……。
「ま、構わないけどね」
「えっ!?」
意外なことにやり手ババアはそうあっさり認めてくれた。
それにはむしろ俺のほうが困惑した。
「い、いいんですか!?」
「好きにすりゃいいよ。やる気のないやつより、あるやつを優先するのは当然だしね」
「でも、若すぎるとダメなんじゃ」
「あんたはもう大人なんだろ?」
「えっ。は、はい!」
「それにダメとは言ってないよ。そもそも”
「……んんん?」
「なんだい、もしかしてあんたなにか誤解してないかい?」
「えっと?」
「『客前に出す』って話は、あくまで手伝いや雑用をして実際の仕事を”見習い”してもらうって意味だよ。勝手もまだわからないのに、いきなり客と寝ろだなんて言いやしないよ」
「えぇえええ!?」
俺はあんまりな勘違いにヘナヘナと崩れ落ちた。
* * *
「というわけで安心してください、アオイさん」
「な、なんだそういう意味だったの!? はぁ~、もう! あたしてっきり……」
アオイは緊張が一気に緩んだのか、恥ずかしさを誤魔化すみたいにプンスカと怒り出していた。
まぁでも、結果オーライだ。
一連の騒動でアオイではなく俺が見習いに行くことになってしまったが……。
前世でえっちなビデオくらいは見たことがあるし、彼女とちがって耐性があるから平気だろう。
「あはは、あんたらそんな勘違いをしてたのかい」
横で話を聞いていたのか、先輩遊女が話に加わってくる。
もとはといえばあなたのせいなんですが……。
「でも、ふたりとも。いつかは必ずお客さんを取るんだからね」
「そ、そうですね」
まぁ、そうはならないのだけど。
それまでには俺もアオイもこの妓楼を出ているだろうから。
「それに、あたしはあんたらはいいセンいくと思うんだよね。普通は幼いころから教育を受けないと難しいんだけれど、ふたりなら花魁にだってなれるかもしれないよ」
「花魁ですか」
遊郭で最上位の遊女に与えられる称号のようなものだ。
そういえばこの妓楼にもひとり、花魁がいるんだったか。
ちなみに、俺とアオイが潜入しているここは『
天元曰く「ここが一番、本命である可能性が高い」そうだ。
ただ、俺はまだあいまいにしかこのあたりの記憶を取り戻せていない。
わかるのは、遊女の中に上弦の鬼がいるということくらい。
だからしらみつぶしにこっそりと、ひとりひとり確認して回っていたのだが……。
そういえば、花魁にはまだ一度も会えていなかったな。
「ここの花魁ってどんな人なんですか?」
「――っ」
質問した瞬間、先輩遊女の顔に激しい動揺が走った。
強張った表情で、声を潜めながら忠告してくる。
「……あの人にだけは絶対に逆らっちゃダメ。ものすごいべっぴんだけど、ものすごい性悪なの。これまでも何人もイジメ殺されてる」
「なっ!?」
「けど、この妓楼の経営が成り立ってるのはその人が稼いでるおかげだから……
「ちなみに、その花魁の名前って」
「――”わらび姫”花魁だよ」
瞬間、ぶわぁっと俺の記憶が蘇りはじめる。
どうやら俺は大当たりを引き当ててしまったらしい――。