TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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第89話『新たなる日輪刀の鞘』

 

「氷の呼吸・参ノ型――”雪崩(なだれ)”」

 

 

 堕姫の頸を斬り飛ばした俺はそう、技名を呟く。

 その一撃はこのうえなくきれいに決まっていた。

 

「うううう! また頸斬られたぁ!」

 

 堕姫が落ちた頸を拾おうとしていた。

 かんしゃくでも起こしたみたいな金切り声で俺に叫んでくる。

 

「なんであんた、刀を抜けてるのよ!? この狭い室内じゃ絶対に抜けないはずだったのに!」

 

 それを言うなら、お前だってなんで頸を斬られているのにしゃべれてるんだよ。

 生き死にの問題もそうだが――今は、気管が肺と繋がってないはずなのに。

 

 どうやって声を出してるのかナゾすぎる。

 と思いながら俺は答える。

 

「あいにく、わたしを担当してくれている鍛冶師は前衛的でね。鞘も特別性なの」

 

 持ち込まれた当初、俺の日輪刀は通常の鞘だった。

 だが、その後……初任務で銃弾を防いだときに破損させてしまった。

 

 それで、あの女流鍛冶に鞘の新調を頼んだところ……持ってきてくれたのが、今のコレ。

 その鞘は横開き(・・・)だった。

 

「まふゆさんの身長が足りなくても抜けるように。せめて、曲芸みたいな抜きかたで隙を誤魔化す必要がなくなるように」

 

 と、そう言って。

 聞けば、『蛇柱』の持つ波打っているような形状の日輪刀の鞘を参考にしたのだとか。

 

 たしかに、考えてみるとあの形状の場合、普通に引き抜くのって無理だもんな。

 にしても……と、俺は思う。

 

 刀鍛冶の里の人たち、みんな分業ではなく刀から拵えまで全部ひとりで作ってるのほんとわけがわからないよな。頭おかしい。

 時代がちがえば全員が全員、人間国宝になれるんじゃなかろうか。

 

 まぁ、それはともかく。

 結果として、この狭い室内でも抜けるような作りの鞘になっていたのだ。

 

お父さん(・・・・)、こっちは頸を落としたよ! すぐにそっちへ加勢に……」

 

 

「――逃げろーーーーッ!」

 

 

 天元の叫び声が響いた。

 ポツリ、と妓夫太郎の声が聞こえた。

 

「曲がれ、飛び血鎌」

 

 妓夫太郎の血鬼術――飛翔する血の斬撃が、反転して一斉に俺を狙っていた。

 忘れていた。

 

 仕留めた。

 そう思った瞬間が一番無防備になるものだ、と。

 

「間に合えっ……!」

 

 天元の投げた火薬玉が炸裂した。

 なかば、俺自身すらを巻き込みながらそれは血の斬撃や妓夫太郎たちを吹き飛ばした。

 

 そして、しばしして煙が晴れる。

 ポタリ、ポタリ……と血のしずくが畳にシミを作っていた。

 

「おい、チビ……テメェ」

 

「助かりました、お父さん。おかげで……」

 

 

「――かすり傷(・・・・)で済みました」

 

 

 そう言って、俺は笑った。

 つまり、それは致命傷だった。

 

 あれだけ注意していたのに食らってしまった。

 天元は動揺が顔に出かけたのを押し隠し、「ハッ!」と笑う。

 

「じゃあ、派手に大したことねェな!」

 

「えぇ」

 

「ちぃっ……普通の人間ならそれだけでほっときゃあ死ぬんだがよぉお。おめぇらは忍だからなぁあ。めんどくせぇなぁあ」

 

 妓夫太郎はそう忌々しそうに俺たちを見ていた。

 俺がもう死んでいることに気づかず。

 

 ――あーあ……。

 

 俺はすこしだけ天を仰ぎたくなった。

 戦いの最中だから敵から目を背けるなんてできないけど、それでも。

 

 ようやく大切なものができたのに。

 自分の気持ちが分かったのに。

 

 こんなあっけなく終わり、か。

 でも、せめてできることはしないと。

 

 あとの人たちに繋ぐのだ。

 すこしでも天元や炭治郎たちに傷を負わせずこの鬼どもを仕留め……そして、今後のための戦力や、鍛錬の時間をすこしでも増やしてやるのだ。

 

「今の火薬玉、鬼の身体も傷つけられるとはずいぶんと特殊だなぁあ」

 

 妓夫太郎は己の傷を回復させながら言う。

 たしかに、もしかすると火薬に猩々緋砂鉄か、そこからできた鉄粉……あるいは猩々緋鉱石の粉末でも練り込まれているのかもしれない。

 

「いや、それよりも……おい、おめぇ気づいてるかぁあ?」

 

「なぁに、お兄ちゃん? それよりも早くあいつらをぶっ殺してよ! すっごくムカつくの!」

 

「相変わらず、おめぇは頭が足りねぇなぁあ。あの方に言われたことすら忘れるなんてよぉお」

 

「えっ?」

 

「真っ白な風貌……白い着物に白髪。体躯の小さな女のガキ。それから――『氷の呼吸』」

 

「……えっ? あっ、あぁっ!?」

 

 妓夫太郎の言葉に、堕姫が「ハっ」とした様子になる。

 それからニヤァっと笑みを浮かべた。

 

「そうか。お前か、お前だったのか。あの方が言っていたのは」

 

 彼らの言葉で俺も理解した。

 そうか、ついに――無惨に俺のことが察知されたのか。

 

 とくに今の俺は、髪に合わせた白色の着物を着せられているしな。

 戦国時代――当時、戦っていたときの風体にそっくりだ。

 

「きひひっ、コイツに猗窩座の野郎が返り討ちにあったんだってよぉお」

 

「こんなガキに? アイツ、弱すぎるんじゃない? でも、こんな幸運が舞い込んでくるなんてね。お前を殺せば――”あの方”にいっぱい褒めてもらえるわ」

 

 こうなれば、もう力をセーブする必要もない。

 いや、どのみち……俺はここで終わりなのだから。

 

 もう出し惜しみはなし。

 文字どおり、俺の死力(・・)を尽くして――この鬼どもを狩る!

 

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