TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手 作:可愛ケイ@VTuber兼小説家
俺が鬼どもに攻撃を仕掛けようとした、そのときだった。
建物の外から叫び声が聞こえてきた。
「オレを忘れちゃいけねぇぜ! この伊之助さまと、その手下がいるんだぜ!」
炭治郎、善逸、伊之助の3人がそこに集合していた。
ナイスタイミングだ。
鬼たちの意識がわずかにそちらへと向く。
俺は「スゥゥゥ」と全集中の呼吸を行った。
「氷の呼吸・弐ノ型――”
兎のごとき軽い足さばき。
トンっと跳ねるように堕姫へと接近した俺は、そのまま刀の峰で……斬れたままだった頸を思いっきり打ち飛ばした。
「ぎゃっ!?」
堕姫が悲鳴をこぼす。
その頭部はまるでホームランでもされるみたいに飛んでいく。
そしてポスンと伊之助の手元に収まった。
俺は叫んだ。
「伊之助さん! その頸と一緒に逃げて! この鬼は両方同時に頸を落とさないと倒せない!」
「ぬぉおおお、任せろ! くっつけらんねぇように、持って遠くへ走るぞ!」
「はぁっ!? ちょっ!? クソいのしし! 放しなさいよ!」
堕姫の身体が、頸を持って走る伊之助を追いかけようとする。
そこへ炭治郎と、眠ったままの善逸が立ちふさがる。
「善逸! 俺たちはこっちの胴体を抑えるぞ!」
「ええいっ、ジャマよ! どきなさい!」
頸を斬られて弱体化した堕姫。
それを炭治郎と善逸のふたりで押さえている間に、俺と天元は妓夫太郎と向き合っていた。
「おめぇら、よくも妹をイジメてくれやがってよぉお!」
「「うおぉおおおッ!」」
俺と天元のふたりで妓夫太郎を攻め続ける。
それを横目で見ていた炭治郎がつぶやいていた。
「す、すごい天元さんも……それにまふゆも、すごく速い。目で追うのがギリギリだ。俺、煉獄さんの屋敷で修行して追いついたと思ってたのに」
しかし、いずれ炭治郎は俺なんて悠々と追い越していくだろう。
俺は今が全盛期……いや、最期。一方の彼はこれからもっと強くなり続けるのだから。
「音の呼吸・伍ノ型――”
火薬玉と、鎖で繋がれた二刀一対の日輪刀を使ったコンビネーション攻撃。
それによって壁を破壊しながら、爆発とともに建物の外へと妓夫太郎を押し出した。
狭い空間では人数の有利を活かせない。
道具も、空間も、勝つために使えるものはなんでも使う。
そして、伏兵や毒ですらも。
いやむしろ、それらこそが忍の
ビィン! という音とともに無数のクナイが降り注いでくる。
屋根の上には大仰な装置を構えたくのいち――天元の嫁のひとり”
「なんだクナイか。こんなもの当たったところで……いや」
「血鬼術――”
一瞬で油断を引き締め、妓夫太郎は血の斬撃で天蓋を作った。
そして、次々とクナイを打ち落としていく。
と、そこへ俺たちは突っ込んでいた。
自分たちの身体にクナイが刺さるのにも構わず。
俺は地を這うような低い姿勢から、担いでいた刀をするりと肩口のほうへとズラす。
そこを支点にして、テコの原理を使って相手の足元をブォン! と薙ぎ払った。
「棒術・応用――”だるま落とし”」
棒術における”
妓夫太郎の両足――そのスネから先を斬り飛ばす。
それで彼のバランスが崩れた。
同時に、その頸へとクナイが突き刺さった。
「足が再生しない。身体がしびれ……」
妓夫太郎がクナイに塗られた毒の性能に驚いたのか、目を見張る。
たしかあれは、ザコ鬼であれば半日マヒさせられるほど強力なものだったはず。
耐性がなければ、下弦の鬼にすら通用する毒だ。
藤の花から抽出されたそれは上弦の鬼の動きさえも一瞬、封じた。
「食らいやがれェえええッ!」
同時に天元の日輪刀が妓夫太郎の頸へと届いていた。
そして両断する――と思われた、その瞬間。
ドン! と地面を踏みしめる音が聞こえた。
妓夫太郎の足がすでに再生していた。
「――”
まったくのノーモーションから発生した血の斬撃が俺たちに襲いかかっていた。
だが、すでに天元の日輪刀は妓夫太郎の頸をなかばまで切断している。
このままいけば両断することができる。
しかし、そのために彼は今、動くことができない。
だから――俺がこの攻撃を防ぐ!
俺は「スゥゥゥ」と息を吸い込み……。
――ごぱっ。
と、口から血がこぼれた。
その瞬間、全集中の呼吸が途切れて俺は完全に無防備になっていた。
まさか、毒がもうこんなにも回っていた……?
完全に俺の失態だった。
「チィッ!」
天元はこのまま妓夫太郎の頸を刎ねるのはムリだと判断したのだろう。
剣を引いて退避しようとする。
だが、俺のせいで――このまま攻め切ろうとしていたため、完全に逃げ遅れていた。
彼は妓夫太郎の攻撃を受けとめる以外の選択肢がなくなっていた。
「くっ、音の呼吸・肆ノ型――”
鎖で繋がった日輪刀を前方囲で振り回す。
だが、あまりに敵との距離が近すぎて……そしてなにより、背後でうずくまる俺を守るためにはその場から一歩も動けず。
――ブシュウウウ!
と、天元の身体中から血が噴き出した。
彼は無数の斬撃をその身に受けてしまっていた。
当然、その攻撃にはすべて毒がある。
俺のせいだった。
そのことに俺は激しく動揺した。
今さら気づく。俺は……。
――だれかと一緒に戦った経験がほとんどない。
唯一、何度も戦場をともにしていたのは最強の剣士――継国縁壱だけ。
しかし、当然ながら彼が傷つくことなんて一度もなかった。
だから、知らなかったのだ。
自分のミスで、自分ではない――ほかのだれかが傷つくことがある、ということを。