TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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第93話『脱隊と新たなる旅路』

 

「うっ……ウぅん?」

 

「まふゆっ! よかった……起きて。びえぇえええん!」

 

 目を覚ますと、そこは見覚えのあるベッドの上だった。

 どうやら俺は蝶屋敷に戻って来たらしい。

 

 アオイが俺に抱き着きながら、わんわん泣いている。

 と、その泣き声を聞きつけてみんなも病室へとやってきた。

 

 しのぶもカナエもカナヲも、それから三人娘も全員が集まっている。

 どうやら、ずいぶんと心配をかけてしまったらしい。

 

「アオ、ィ……おネ、ちャ……」

 

「しゃ、しゃべっちゃダメ! うぅっ、まふゆは女の子なのに……顔にこんなケガが」

 

「アオイ、大丈夫よ。私がすこしでも傷痕が小さくなるよう、きっちり治療しますから」

 

 また泣きそうになるアオイへ、しのぶがそうフォローを入れる。

 俺としては顔の傷なんて今さらだし、気にしてない。

 

 そんなのより重要なことがあった。

 痛むアゴを動かしながら、それだけは確認する。

 

「わタ……どの、くラい……」

 

「だいたい1週間くらいよ。だから、まだ傷も全然治ってないから、本当に動いちゃダメ」

 

 俺はその答えを聞いて「ホっ」とした。

 もしかして、また2ヶ月とか眠り続けていたんじゃないかと焦っていたから。

 

「ねぇ、まふゆ」

 

「……?」

 

 アオイがぽつり、とこぼすように俺の名前を呼ぶ。

 その表情はどこか……なにかを諦めたかのようだった。

 

「あたし、あんたが戦うところを……すこしだけど見てたわ」

 

「……」

 

「あんた、あんなにもすごい隊士だったのね」

 

 まるで遠いものでも見るみたいな目だった。

 アゴが砕けているため聞き役に徹する俺に、アオイは独白するみたいに続ける。

 

「強いとは思ってたけど、まさかあそこまでとは思ってなかった。みんな言ってたわよ、上弦の鬼を討てたのはあんたのおかげだって」

 

「……」

 

「それと同時に思ったわ。あたしは絶対、あんたや……カナヲ、しのぶさまみたいにはなれないって。炭治郎さんたちみたいにはなれないって」

 

「……」

 

「でもね……」

 

 

「だからこそ――ようやく、決心がついたわ」

 

 

 アオイはその視線をまっすぐ前へと向けていた。

 そこにあったのは諦めたからこそ――切り捨てたからこそ、迷いの消えた目だった。

 

「しのぶさま、今まであたしを鍛えてくださってありがとうございました。カナエさまも……あたしの育手になってくださって、本当にありがとうございました」

 

「……えぇ」「うふふ~」

 

 しのぶとカナエはふたりともやさしい笑みを浮かべていた。

 アオイの決意をすでに察している様子だった。

 

 

「あたしは――鬼殺隊を辞めようと思います」

 

 

「……っ!」

 

 カナヲがその言葉に目を見張っていた。

 どう反応したらいいのかわからないのか、アタフタとしている。

 

「親不孝な弟子でごめんなさい。教えてくださった技術をムダにしてしまうこと、本当に申し訳ありません……」

 

「それで? アオイはこれからどうするつもりなの? どうなりたいの?」

 

 しのぶが続きを促す。

 アオイはその質問に、一切の躊躇なく答えた。

 

「あたしは医療の道に専念したいと思っています」

 

「そうですか、それでは……」

 

 

「――アオイちゃんは今日から私の弟子ね~っ!」

 

 

 しのぶの言葉を横取りするみたいに、カナエが言った。

 やる気満々、といった様子でギュッと拳を握っている。

 

「……えっ? えっ?」

 

 カナエの発言に、アオイのほうが困惑した様子でキョロキョロしていた。

 しのぶは呆れたように笑う。

 

「姉さん……それは、私が言おうとしていたのですが」

 

「うふふっ、ダーメっ。アオイちゃんは私の弟子だもの~。もちろん、しのぶちゃんがアオイちゃんのことを鍛えてあげるのは全然構わないけどね~」

 

「えっ、あっ、その……い、いいんですか? あたし、最悪……この蝶屋敷を出ていくことも覚悟していたんですけれど」

 

「なに言っているのですか。妹を家から追い出す家族がいますか」

 

「そうよ~! そんなことするわけないじゃないの~」

 

「……う、うぅ、うわぁあああん! これから改めて、よろしくお願いします!」

 

 始まりがあれば終わりがある。

 そして、新たな始まりも……。

 

 すこし寂しくなるような気もしたが、これがアオイにとってベストだと思えた。

 迷いを捨てて医学に打ち込む彼女はきっと、今まで以上に多くの命を救うだろう。

 

 いや、「救うだろう」ではなく「救う」だ。

 遊郭で治療を行っていた彼女の姿を思い出し、俺はそう確信した。

 

「……と。そろそろ、みんないいからしら。まふゆの診察と、体調に関して確認することがあるからふたりにしてくれる? みんなは仕事に戻るように」

 

 しのぶがそう言って、部屋からみんなを追い出す。

 ただ、診察するだけではなさそうだ。

 

 その直感は正しかった。

 しのぶはその目を鋭くして、俺へと問うてくる。

 

「まふゆ、あなた――いったいなにをしたの?」

 

「……?」

 

 質問の意図が分からずに首を傾げる。

 いや、だって心当たりが多すぎるからね……。

 

 しかし、しのぶが言ったのは俺が想像していたどれでもなかった。

 

「私が遊郭に駆けつけたとき、あなたの身体は――凍っていたわ」

 

 しのぶまで遊郭まで救助に来てくれていたのか。

 天元が柱に応援を頼んだと言っていたが、その中のひとりが彼女だったのだろう。

 

 にしては、到着が遅かった気がするが……いや、ちがうのか。

 本来の歴史では善逸が攫われた時点で応援を呼んでいたのかもしれないな。

 

 って、んんん?

 凍っていたって、どういうこと???

 

 

「いえ、正確にはあなたの身体に混入していた――毒だけ(・・・)が凍っていたの」

 

 

「……!?!?!?」

 

 はいぃいいい!?

 そんなの俺が一番答えを知りたいんですけどぉ――!?

 

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