TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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第95話『夫婦ゲンカは犬も食わない』

 

「そういやテメェ、アイツらに礼は言ったのか? 派手に命を救ってもらったんだ、仲のいい相手だろうときちんと筋は通しておけよ」

 

「……!」

 

 天元に言われて気づく。

 俺は炭治郎たちに謝ることばかり考えて、禰豆子への感謝が頭からすっぽり抜けていた。

 

 命の恩人に対して、それはたしかに失礼だ。

 けれど、そういう彼はすでに感謝を告げたのだろうか?

 

「うズ、ィさン……ハ、ねズこ……ニ……」

 

「あァん? オレはもう礼を言ったぜ。けど……なんだありゃ? 派手に意味がわかんねェな。アイツに燃やされたと思ったら毒が消えてたんだからよォ」

 

「わタし、モ……」

 

「あァん? いや、テメェはちげェだろうが。テメェを助けたのはアイツじゃなく、テメェの姉貴分たちだろォが」

 

「……!?」

 

 え? 俺は禰豆子に助けられたわけじゃないのか?

 意識を失う寸前、彼女の姿が見えたからてっきりそうだと思い込んでいた。

 

 でも、そうか……。

 考えてみるとそれでは矛盾が出る。

 

 しのぶは「毒が凍っていた」と言った。

 つまり、彼女が俺を治療している段階で体内に毒は残ったままだった、ということ。

 

 ――あれ? もしかして俺……禰豆子に放置されてた?

 

 たしかに彼女とは接点が少なかったが……好感度、足りてなかったりする?

 いやいやいや、そんなことないよね?

 

 俺は大丈夫、と判断して血鬼術を使わなかっただけだよね?

 実際、血鬼術を使われずとも助かっていたわけだし……頼むから、そうであってくれ!

 

「あぁーーーーっ!」

 

 そのとき、大きな声が響いた。

 病室の入り口へと視線を向ける。

 

 そこには須磨が立っていた。

 同じく天元の嫁である、まきをと雛鶴も一緒だった。

 

 須磨は騒がしく「天元さま、天元さま!」と彼の名前を呼びながら近づいてくる。

 そして……。

 

 

 ――ベシーン! と彼の頬を引っ叩いた。

 

 

「天元さまのウワキものぉーーーーっ!」

 

「……は、はァ!? おまっ、いきなり派手になにしやがる!? つーか、だれがウワキだ!?」

 

 俺は横からその様子を眺めながら思った。

 妻が3人もいるのに、むしろウワキ者じゃないわけがないだろ、と。

 

 だが、どうやらそういう話ではないらしい。

 須磨が半泣きになりながら天元をガクンガクンと揺さぶる。

 

「びえぇえええん! い、いったいいつの間に……こんなかわいい子ども(・・・)を作ってたんですかぁー!? いったいだれとの子ですかぁー!? 答えてくださいぃー!」

 

「は……はァあああ!?」

 

 天元がすっとんきょうな声を上げる。

 須磨がビシィッ! と指先を俺に突きつけていた。

 

 まきをと雛鶴のふたりも、ジッと天元を見ていた。

 どこか失望した様子だったり、悲し気な目をしながら。

 

「ちっげーよ!? バカかテメェは!? 派手に誤解してんじゃねェ!?」

 

「でも髪の色が同じじゃないですかぁーっ!? それに炭治郎くんから聞きました! 戦闘中、この子が天元さまを『お父さん』って呼んでいたって! 天元さまも『娘』と言ってたって!」

 

「天元さま、アタシ信じていたのによぉ」

 

「わ、私はそれでも天元さまのことをお慕いし続ける……つもりです。ただ、すこし受け止めるまでの時間をください」

 

「テメェらまでなに言ってやがる!?」

 

 天元が嫁たちに問い詰められていた。

 さしもの彼も3対1では分が悪いらしい。

 

「でも、その子……忍の術を使えるんですよねぇーっ!?」

 

「この時代に忍なんてアタシらの流派くらいしか残ってねぇもんな」

 

「天元さまがじつの娘であるこの子に技を仕込んだ……以外、考えにくいというか」

 

「そ、それは……だァーっ!? おい、まふゆテメェ! 地味に黙って見てねェでオレを助けやがれ! 説明して、この誤解をなんとかしやがれ!」

 

「……」

 

「ほら、まふゆちゃんもウソは吐きたくないって言ってますぅーっ!」

 

「しまった!? そうだった、コイツ今……派手にアゴが潰れてて話せねェんだった!?」

 

「天元さまぁーっ!」「天元さまっ!」「天元さま……」

 

 なんというか、ハーレムって大変なんだなぁ。

 ……爆発すればいいのに。

 

 女の子になってしまって難儀している俺はそう思った。

 そんないつまでも続くかと思われた夫婦ゲンカだったが……とある人物の登場で中断された。

 

「あなたたち――病室で、いったいなにを騒いでいるのですか?」

 

「ひぃーっ!?」

 

 しのぶがうっすらと笑みを浮かべてそこに立っていた。

 そのまったく笑っていない目を見て、須磨が悲鳴を上げていた。

 

「そのぉ~、これはぁ~……やむにやまれぬ事情があったと言いますかぁ~」

 

「で?」

 

「夫婦の重要な問題と言いますかぁ~」

 

「で?」

 

「……あ、あたし用事を思い出したのでお暇します! それじゃあお邪魔しましたぁーっ!?」

 

「あっ、ちょっ……須磨! ったく、じゃあアタシも」

 

「天元さま、私もちょっと今後のことをひとりで考えてきますね……」

 

「あっ、待っ……テメェら!?」

 

 須磨に続いてまきをと雛鶴も病室を去っていった。

 残された天元が助けを求めるように彼女らの背に手を伸ばしたが、だれも振り返らなかった。

 

「……」

 

 シンと静まり返った病室で、しのぶが天元に視線を向けていた。

 彼女からは、上弦の鬼に匹敵しそうなほどのすさまじいプレッシャーが放たれていた――。

 

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