Urban Archive 作:うちげば
依頼人の突拍子もない提案で紫関ラーメンに来た俺たちは、完全に調子を崩され感覚が乱されてしまったセリカに雑に案内された席に着いてメニューを見ていた。
「おじさんはもう決まったけど、みんなはどーぉ?」
「俺は決めたぞ。」
「私は~…あっこれにしよ!」
一人ずつそう声を上げて注文を行う。
それをセリカが嫌そうな顔をしながら黙々とメモを取っていく。
「大丈夫そうか?もしあれならこいつを黙らしとくけど――」
「無理に決まってるでしょそんなの!だってさっきからずっとニヤニヤしてるのよ!?」
「…悪かった。が、私語は慎んだ方が良いんじゃないか?」
「だいじょーぶだよ~、いつも通り接客出来てるからねー」
はた迷惑な奴だな、と零しそうになったが言葉を飲み込む。
「お…お待たせしました。柴崎ラーメン、です……」
「わぁ~ありがとー♪」
「すごーいおいしそ~、ところでルナちゃんおいてきてよかったの?」
「唐突だな…まあなんだ、何か調べたいことがあるらしいからな。置いてきた。」
「ん、危険じゃない?」
「最終手段もあるし戦えもするから心配すんなって譲らなかったからなぁアイツ…。」
「まあでも、俺も考え無しにチビ助を危険区域に置き去りにする馬鹿じゃないから、いざという時のために救難信号装置を付けといたさ」
「救難信号装置…あんな小さな子に扱えるんでしょうか……」
「そこんとこは大丈夫だ、あれは特異点技術っていうスーパーテクノロジーが使われてるから…危険が迫ってきてる時点で勝手に起動してくれるよ。」
間に合うかどうかは分からないけどアイツが戦える以上は大丈夫だろ。
「もしもの事があったら2時間お説教コースだからね?」
「2時間はきついが…でも善処はするよ。」
「うへぇ、おじさんも万一があったら参加してもいいかな~?」
「だから善処するって――」
「へぇ、随分と美味しいんだねここ…、あぁあんた、餃子ももらえないかい?」
「ぎょ、うざですね…分かりました、しばらくお待ちください!」
「あぁあとそれと―――」
「…嫌な声がしたな。」
「誰かご存じの方の声なんですか~?」
「ああ…。」
「紫の涙だよねー…ホント人の事なんだと思ってるんだろ……」
「紫の…涙?」
「へぇ~…どんな人なのさ?」
「次元を越えれるくそったれの未来予知女。噂じゃ生き別れの息子と再開するために滅茶苦茶やってるらしいぞ?」
「ラルクスさんをこっちに連れてきた人でもあるんだよねー、でも人のトラウマをちょっぴり刺激したりして酷いことをする人だよ」
「うへぇー悪い大人だねぇ…。」
さっすが分かってるじゃねえか。特色は大抵ろくでなしだ。
「先生は何でご存じなんですか?」
「ラルクスがね~電話口で嫌な話をされてたみたいだから覚えちゃったんだよ。」
「生徒たちの安全の為にも、ヘンな人たちは覚えとかないとだし……」
「あんたも十分その変な人達…おおっと?!」
駄弁を垂れていたせいか、はたまた油断のせいか、ともかく俺の体が急に持ち上がった。
「ラルクス!?」
あぁ、くそっ。後ろから首袖をつかまれてるなこれ…にしても――――
「…ぐぉっ。勘弁してほしいんだけどな、こういうの。」
「あっはは!別にいいじゃないか…それよりも、久しぶりだねぇ……?」
「こっちは久しぶりたくも無かったよ…。」
「紫の涙、申し訳ないのですがお戻りになられてくださいませんか?」
「えぇ~?つれないこと言わないでよ…、折角遠路遥々来てやったっていうのに。」
「それよりあんた、息災だったかい?」
「お陰様で食事が邪魔され見たくもねぇ面も見せられたもんで絶賛最悪ですよ紫の涙様…。」
「あらぁ?会えたのに嬉しくないのかい?にしてもまさかご飯中だったとは思わなかったよ。」
冗談はそのにやけ面だけにしろって……
「うへ、一丁前に剣を3本も身に着けちゃってさぁ…やる気?」
「まっさかぁ、いいかいホシノ。もしその気だったらこんな挨拶もせずに…さっさとコイツの首をはねてるよ。」
紫の涙はそう言って片手に持った自前の刀剣を俺の首にあてがい、俺を降ろした事で自由になったもう片方の手でレイピアを依頼人に向けた。
「ッ!それ以上動くなよ。」
「おやぁ?ただの冗談のつもりだったんだけどな…あ、そうそう」
「アンタ、こっちじゃラルクスを名乗ってるんだってね?」
「…誰から聞いた?」
「おちびちゃんだよ…あの子、あたしも知り合ってるからねぇ。」
「何故アイツを知ってる。あんたとアイツはグルか?」
「グルではないけど…でも、ここで全部本当のことをくっちゃべったらつまんないと思うんだ。」
「チッ…やっぱりアンタはくそ野郎だな。」
「あーあ、そう睨まなくたっていいじゃないか。」
「じゃ、そういう事だから…。私はそろそろ来てる餃子を食べてくるよ、じゃーねー。」
散々俺たちを煽って満足したのかトンチキ女は去っていった…ただ、張り詰めた空気だけを残して。
「……、向こうに行ったね。」
「ホシノ先輩、大丈夫ですか?」
「…うん、大丈夫だよぉ。にしてもなんか腹黒な雰囲気の人だったねぇ~。」
「…来るんじゃなかったな、こんな所。」
「…!ち、ちょっとぉ~今は休憩中なんだし楽しもうよー!ね?」
「あぁ、悪い。そうだな。」
◆=◆=◆=◆=◆
外に出ると日が落ち始めていた。どうやらあの後談笑をしすぎたらしい。
「あ~…俺たち昼を食いに来てたんだよな?」
もしこれがシャーレでなく親指だったなら今頃やばかった…怠慢でギッタギタに罰せられてたろうな。
「予想よりも長居しちまったな…どうする、依頼人さんよ?」
「うーん…アロナ、今日のこの後の予定って何かあったっけ?」
『はい!アビドスでのこの後の予定は設定されていないので…ありませんね』
「そっか。じゃぁ今日の残りの用事は無いし、これにて解散って事で良さそうだね。」
「えっとぉそれなんだけどね、おじさん達で先生の帰りの護衛しようって事にさっき決まったんだけど……」
まあ、どっかで野垂れ死にそうだもんな。
「俺も行くよ。こっちまで戻ってくるのが大変になる以外のデメリットはないし。」
「え?でも私――」
「ん、先生は弱いから護衛は必須。」
「ですね~」
「へぇ?仲良しこよしで護衛任務かい?」
「…失せろ蛇野郎。」
「ひっどいなぁ…まいっか。それじゃぁね~。」
なんで自分も混ぜてくださいみたいな顔で話に入って来たんだ、アイツ。
翌朝、早朝。
「おぉ……足が痛え……………」
全力で護衛と帰宅をこなした肉体を無理矢理起こしながら欠伸をする。
テントのぺらっぺらの扉のチャックを開け、外に出る。
誰もいない校内の敷地で軽い運動を行い、業務連絡と今日の用事を確認。モモトークももちろんだ。
「ほう…、こういう事案は裏路地だけだと思ったんだけどな。」
見つけたのは、依頼人から俺宛のチャット。
そこにはこう書かれていた。
『たいへん』
『セリカがどこかわからないってみんなから連絡が来た』
『すぐにみんなと合流して 私もすぐ行くから』
「行方不明、か。」
「俺はセブン協会じゃないんだけどなぁ……」
”ふと、シャーレ近くの道の片隅に自販機が置かれているのに気が付いた。 どうやら四つの商品を扱っているらしい。一つ買ってみよう。”(E.G.O.I.S.T選択)
-
▼赤い缶 (アビドス)
-
▼青い缶(パヴァーヌ)
-
▼紫色の缶(アリウス)
-
▼”…。”(別の選択肢が発生)