Urban Archive 作:うちげば
「…んく、んく…………………」
砂漠の拠点…といっても、ただのテントだが。ともかくベースに帰る最中、隣でルナがエビ共に貰ったウェルチアースのチェリー味をこくこくと飲んでいる。
「…破片、か。」
「なんでこんなもんを集めようってんだ?」
許しを貰って触らせてもらっている、血が付いた一つの破片
それには花の怪物がのたうち回っている姿がぼんやりと浮かび上がるようにして存在している。
「………」
なにか忘れているんではと思って思い出そうとすると、ふと脳内に声が聞こえた。
『この時間軸は色彩を退けるのに失敗した。』
『破片を繋ぎ合わせて回避できない事は無いが、
『ここで使うわけにはいかない以上…見捨てる他ないか………』
『◇◇◇◇を嵌めたあの日も、今も…。こうも嫌な役をやらなきゃならないなんてな。』
『ラルクス、そう睨むな。俺だってこんなのは嫌だよ、けど…それでも。俺はより良い明日を選ぶために、何かを捨てなきゃいけないんだ。』
「…。」
聞き覚えがある。
だが誰だ?
「……、考えても分からんか。」
「ふぅ。」
「おぉ、どうだった?」
「わるくなかった」
「そりゃよかったな。」
「…もういっぽんは、とっとく。」
銀行での騒動を終えた私たちは今、対策室で会議を行っている。
「――アビドスで約800万近くを収集。その後カタカタヘルメット団に対して回収金の内500万円を任務補助金の名目で提供した…はぁ。」
案の定ではあるが、書類には予想通りの内容しか載っていない。
にしても、子どもたち相手に酷い事をするもんだな……
「分かってはいたけど…やっぱりじゃないの!」
「でもどうして…学校が破産してしまえば貸したお金を集められないはず…。」
「昔はアビドス砂祭りってのがあったし砂漠の街以外に湖みたいなオアシスもあったけど、今じゃ両方とも無いから収入源は少ないしねぇ…。」
「恐らく我々が得ていた情報の通り、探し求めている物の方が本命なのでしょう」
「つまり狙いはやっぱりこの学校自体ではないって事だ。」
「だれ?」
男性の声がした方を向くと、ラルクスがいつの間にか帰って来ていた。
「あっお帰り!」
「おう、ただいま。いや~まさかエビ人間相手に取引をする日が来るとは思わなかったよ。」
「え?えぇ?」
「…あぁいや気にしないでくれ!な!?」
エビ人間ってなに!?
凄い気になるんだけど!?
「まぁいいや…それで、この学校自体ではいっていうのはつまり…」
「…学校というものの機能を欲したか、ここを手に入れた上でなにかに転用するか…それか探し物とかかな。」
学校というものの機能は興味を持つはずがないから違うかな?
でも転用も考えられないし…となると――
「カイザーが動いている以上、何かを探しているというのが最も可能性が高いでしょうね。」
「確かにね…それだと他の情報と辻褄が合うもん。」
「あれ?ちょっと待って、そうなるとカタカタヘルメット団は只の囮って事になるような気がするんだけど……」
「それで間違いないわな。」
「なんでそんな…馬鹿にされてるじゃないのよ!」
「落ち着いて落ち着いて…、いつかは借りを返せるから心配しなくても大丈夫だよー?」
「そう、ですね…。」
「それじゃ、今日はこの辺でおしまい!ヒフミちゃんはちゃんとトリニティへ帰ってね」
「はい!」
◆=◆=◆=◆=◆
「いや~、今日はなんかゴメンね?」
「いえ、こちらこそありがとうございました…それより今回の件についてですが、カイザーコーポレーションが反社勢力や裏社会と何らかの関係性があると言う事の動かぬ証拠になり得る情報です。なので―――」
「みなさんの為にも、トリニティに戻り次第必ずこの実態を報告しておきます!!」
「それとアビドスの現在の状況も――」
そこまで言いかけたヒフミちゃんを遮るようにして、ホシノちゃんが言葉を発した
「うーん…多分ティーパーティーはもう知ってると思うよ~?」
「ティーパーティーはもう知ってる」という言葉。
それを聞いたヒフミちゃんが目を大きくする。
「…えっ?」
「あれほどの規模を持つ学園の首脳部なら、それぐらいはもうとっくに把握してると思うんだよー…みんなも遊んでばかりじゃないだろうしさ。」
「そっそんな…。知っているのに、みなさんのことを…………」
「うん、ヒフミちゃんは純真で良い子だねー…でも世の中、そんなに甘くないんだ」
でも、だからこそ…可能性は捨てきれない。
ホシノちゃんはそう言いたげな表情で話を続ける
「ヒフミちゃんの気持ちはありがたいけど、そっちに知らせたところでこれといった打開策が出るわけじゃないし かえって私たちがパニくることになりそうな気がするんだよねー」
「そ、そうですか……?」
「ほら、今のアビドスって廃校寸前じゃん?トリニティとかゲヘナみたいなマンモス校からの影響をうまくコントロールできる力がないんだよー…言ってる意味、わかるよね?」
「……サポートするという名目で悪さをされても、それを阻止できない……ってことですよね。」
「…そうですね、その可能性もなくはありません。あうう……政治って難しいです。」
「でも……ホシノ先輩、悲観的に考えすぎなのではないでしょうか?本当に助けてくれるかもしれませんし…。」
「いや、借金チャラにする代わりに面倒が増えるのは割かしあり得るぞ?実際前例があるしな。」
ルミスちゃんはそういうと、いつの間にかラルクスの物と同じカバンを持って開け始めた。
そしてその中からメモを取り出して、一つ一つ丁寧に読みだす。
「”23区新店舗『セシュボン・バー』、土地の不正入手が発覚し開店から半日で陥落。組織が負債を請け負う対価にセシュボン・バーの店舗を前哨、偵察用基地兼宿舎として要求”」
「”J社の巣近くの裏路地で事案、原因は加害者と被害者が行った資金の立て替えで起きたいざこざか”」
「…まぁ、こんな事になり兼ねんさな。」
「そうだね…。私は他人の好意を素直に受け取れない汚れたおじさんになっちゃってねー、万が一をスルーしたからアビドスはこの有様になっちゃったんだよー」
ホシノはそう言っていつもの笑顔を見せる
けれど、どこか悲しげな雰囲気があった。
普通であれば高校最後の学校生活…青春だなんて言葉に似合うなにかがあってもいい、だというのに彼女はずっと大人のふりをして戦っている。
周りも信頼できないなかで、ずっと光を前に雁字搦めのまま足踏みししているんだ
だったら…そのしがらみを抜け出せるように手伝ってあげないとね。
「でしたら、カイザーの不祥事についてだけ報告しておきます。あと、ほんのやんわりとですけど…みなさんの事も問題にならない程度に…。」
「そうしてくれると助かるな。銀行強盗の件はこっちで誤魔化しを利かせとくよ。」
「ラルクスホントにできんの~?」
「既に手配はしてある、だろ?スィーネ。」
「ええ。」
「ん、他力本願。」
「あ?」
「あっはは………ではみなさん。これからも大変だと思いますが、頑張ってくださいね…応援してます。さようなら!」
「ラルクス、お前は許してはくれないだろう?」
「俺は…お前に酷な事をしたのだから。」
「なら、せめて…」
「お前の幸運を祈ろう…、俺たちの無意味に流れる事となった血で。」
「お前の答えを見つけよう…、俺たちの無意味となった過去を以て。」
”ふと、シャーレ近くの道の片隅に自販機が置かれているのに気が付いた。 どうやら四つの商品を扱っているらしい。一つ買ってみよう。”(E.G.O.I.S.T選択)
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▼赤い缶 (アビドス)
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▼青い缶(パヴァーヌ)
-
▼紫色の缶(アリウス)
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▼”…。”(別の選択肢が発生)