Urban Archive   作:うちげば

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任務 - アビドス ≪太陽みたいに暖かい夢 - Ⅳ≫【20】

 

「…………………………。」

 

起き上がる。

 

「…なに、これ。」

 

周囲を見渡す。

 

「煤?」

 

室内が、まるで火災でも起きたのではと思える程に煤けている。

 

「あちっ!…も~なんなのさぁ…。」

「あれ?」

 

拘束器具も熱で溶けたかあるいは歪んだのか、何故かはずれている。

 

「んー…。」

 

 

『覚悟しろ。』

『今日、都市の星が1つ沈むことになるだろうから。』

 

 

「なんだっけ?」

 

何が何だか分からない

でも、ひとつだけ判るのは――――

 

「皆を、自分から手放しちゃったなぁ。」

 

「…許してはくれないだろうね~。」

 

夢の中で、私は確かにユメ先輩もどきを黙らせた

お陰で暗い考えはもうない…けど、可愛い後輩も、先生も、みんなを。

只の気の迷いのせいで、自ら捨ててしまった。

 

でも――

 

「あ、れ?」

 

「あは…なんでさ。」

 

なのに不思議だ、生まれたての小鹿みたいに立ち上がって、出口へ向かってる。

 

「ん…爆弾設置。」

 

「3、2、1…」

 

「…まずくない?」

 

爆発と何かを叩き壊す音、そして光。

 

「―え…?」

 

夢だ。これは。

自ら捨て去ったものがかえってくるだなんて――

 

〔ホシノ先輩!〕

 

「…ホシノ先輩、その赤いドレスどうしたんですか?銃も色味と形が少しだけ変わっていますし……」

 

「ぅぉぁ、あが…、爆発に突っ込むのは愚策だったか…腕は残ってるよな?」

 

「ほほ…ラルクス、お前まだそんなバカをできるのか。」

 

「へいへい…おいぼれには真似できない絶技でござんせんこと?」

 

「…あ~、眩しいんだけど?てかみんななんで来たのさ…。」

 

「なんでって…私たちの太陽(家族)を取り戻しに来たんだよ!」

 

みんなの背から、後光が追いかけてくる。

そしてその光が、私の眠った心を再び揺らがせた。

 

「みんな…そっか。」

 

「お…おかえりっ、先輩!!」

 

「ああー!セリカちゃんに先を越されてしまいました、わたし一番に言おうと思ってたのにズルいです!!」

 

「うっうるさいうるさい!別に順番とかどうでもいいでしょ!?」

 

「ホシノ先輩…、おかえり!」

 

〔おかえりなさい、ホシノ先輩!!〕

 

「おかえりなさい、です!」

 

再会も早々に飛び込まれ、思わず体勢を崩してしまう。 するとその上から雪崩れる様にほとんど全員が倒れこんで抱きついてきた。

あたたかい…これが、私たちか。

 

「うぇへへっ、みんな――」

 

「ただいま。」

 

◆=◆=◆=◆=◆

 

『少し、待ってもらおうか。』

 

ホシノとみんなが再会の喜びを分かち合っているのを見ながら関係各所に連絡を入れていた所、ふいに後ろから誰かが声をかけてきた。

 

「ッ!あんたは、PMCの!」

 

『ふん…元気な様でなによりだな。』

 

『――今しがた、援軍を呼んだ…切り札も切った。お前達はいずれ、ここアビドスの砂地の養分となるだろう。』

 

「へぇ、じゃ今から来るやつらを全部蹴散らせばいいんだね?」

 

『出来るのか?ガキ共と便利屋風情に!!』

 

ガキ共ねぇ。

ホシノちゃんの前でそんな言い方、やめといた方が良い気がするんだけどな。

 

「…やってやる。」

 

『はぁ?』

 

「やってやるって言ってるんだよ!!」

 

ほらぁ、怒っちゃった。

まぁPMC理事長の事は放っておいて、準備しよーっと。

 

「はっ、決まりだな…。

おいイオリ、どうせ見てるんだろ。少し手伝ってくれないか?」

 

「あら、嬉しいねぇ~初めて名前で呼んでくれたじゃないか♪」

 

「うるせ、さっさと準備に行け。しっしっ。」

 


 

時は進んで。

外にはPMC理事長が言っていた通り、カイザーPMCの援軍が群れを成して来ていた。

 

数は多いし何より怯む事が無い兵隊たち相手、苦戦はしなくとも厄介…そんなのを相手に戦う事がどれ程きついかは目に見えて理解できる

強力な助っ人が3人から4人、いや紫の涙も含めれば5人に増えたお陰で押される事はないが、それでも頭の回転を止めればすぐに巻き返されるだろうと。

 

『やつだ、生徒より先に!あのコマンダーを先に始末しろ!!』

 

「え?!なんか敵の動きが変わったよ!?」

 

「あの方向、まさか…先生!!」

 

あーはいはい、そう来るよね。

でもこっちには秘策があるんだよ

 

「アロナ。」

 

シッテムの箱(アロナ)がね。

 

『んなっ…!?』

 

「ねぇどうした!?まさかこれが予想外だったとかないよねぇ!?」

 

『ングッ…ええぃ、ゴリアテだ!ゴリアテを出せ!!』

『はぁ?!』

 

『知らんっあの先生とかいう女とて質量には耐えまい、出せ出せ出せェ!!

…だ・か・ら、知るかそんなの!いいからさっさと引っ張り出してこいダボ共ォ!!』

 

「賑やかだな、あれじゃPMCってよりチンピラじゃないか。」

 

「紫の涙さん辛辣っすねぇ~…。」

 

『だぁーれがチンピラだとぅ!?』

 

そんなこんなでゴリアテ…、両腕に三連ガトリング砲、頭部には大口径カノン砲を搭載した戦車にも勝るであろう兵器がやって来た、がしかし―――

 

 

 

「ホシノ、盾構えて!アルちゃん準備!!」

 

『なんの…まだ――』

 

「あ…火、着いてない?」

 

あっさりと落ちた。

 

〔えぇっと…みなさんが囲んで戦ったせいで直ぐに大破しましたね。〕

 

『は?』

 

…いや「なにこれ?」みたいに言われても困るんだけど?

 

「でもまだ動いてるよ!?」

 

『ふ、ん˝ん!当然だ、なにせゴリアテだからな!!』

 

「ムツキちゃんが爆弾仕掛けたからすぐダメになるだろうけどね~♪」

 

『…。』

 

〔撃って…も良いのよね?〕

 

「うん。多分ね。」

 

スコン、と腑抜けた被弾音。

 

数秒後、爆発。

 

最早困った時の爆破オチめいた形で、PMC戦は終幕した。

 

◆=◆=◆=◆=◆

 

あの後、私たちはスクラップになったゴリアテからPMC理事長を引き抜いて交渉のテーブルにつかせた。

 

「さて、交渉の時間だよ。」

 

「まっ待て、一旦落ち着こうじゃないか…。」

 

「そんならアビドスから撤退して土地の所有権を全部元に戻してついでにあの子らの借金も無くしな、そしたら考えてあげる。」

 

紫の涙が萎縮といえる程に縮こまって話す理事に対して出した条件は、即ち「全て手放せ」というもの

勿論相手が飲む筈は無い。

 

「ふざけてるのか…?そんな条件に首を振れる訳が――」

 

メキャッ

 

鈍い音と共に、鉄が潰れる音が鳴る。

 

「…次は薬指だよ、アビドスから撤退して土地の所有権を全部元に戻すんだ。ついでにあの子らの借金も無くしな」

 

「くっ…」

 

「繰り返す、アビドスから撤退して土地の所有権を全部元に戻せ、ついでにあの子らの借金も無くすこと。さもなきゃ薬指も無事じゃすまないだろうね。」

 

「わ、わかった!すぐに上に掛け合って土地の所有権と借金はどうにかする!!」

 

「先生、録音はしたかい?」

 

「うん、ばっちり。」

 

「録音!?」

 

なぁなぁに処理して誤魔化すつもりだったのか、理事がそう言って驚く。

 

「そうともさ、特色は忙しいから…下手こいたら頭を潰しちゃうかもね?」

 

「まぁいい…本社にはまだ――」

 

「あぁそれね…もう言ってあるから、心配しないで頂戴な。」

「きっと今頃、もう二人の私のどっちかが本社に行ってるだろうしぃ?」

 

ん?もう二人の私?

…ま、いいか。

 

「さてあとは――、ッみんな逃げて!!」

 

みんなが撤退した直後、轟音と共に砂漠から大きなシルエットが飛び出す。

 

「…何が起きたの?!」

 

「切り札だ…デカグラマトンめ、今になって動いたか……。」

 

「アヤネ!」

 

〔はい、…………北方に巨大な機影を確認しました!〕

 

「全員行っといで、こっちはどうにかするから。」

 

「うん、ってルミスちゃん?」

 

「ラルクス!さっきのやつにホイールズ・インダストリー製ので勝てるかなぁ?!」

 

「攻撃次第だが、まぁ…行けるだろ。」

 

「よっしゃぁ!行こうぜ依頼人!!」

 

押さないで押さないでこけるから~…力つっよ!?

 


 

『驚きましたね…まさか予測通りの時間にデカグラマトンが起動するとは……。』

 

『私が先生に対して言い放った内容と本来の内容…貴方の言葉を借りるならば「セリフ」、その相違といい……やはり貴方の仮説通り ”物語” の進みが狂っているようですね、カンパネルラさん。』

 

「あっは…そうだろ?全部僕の言った通りだ。」

 

「――ある日、誰かが無断で連邦生徒会長が青い顔してぶっ倒れそうなことをしだした。」

 

『確か、「たった二人の姉弟の人生の軌道修正の為に無断でこの地をターンテーブルとして利用し始めた」のですよね?では何故?何故ここは無事なのです?』

 

「あっはは、そう焦んないでよ……。その全貌はこの生徒たちの為の都市「キヴォトス」に細工をしつつ、「キヴォトス」の ”修正力” のようなものを応用して、自分たちにとって最高のハッピーエンドを手繰り寄せるっていう物だった。」

 

『――成程。()()故に此処が犠牲となっては困ると…、そしてそうならない様に彼らが何かしら手を回した。と。』

 

「正解♪でもその細工はお粗末で、徐々に狂いだした…色んな部分がね。」

 

「あぁほら、此処は例えるならメビウスの輪っかなんだろ?だったらあいつらの一連の細工や行動は、壊れそうな()()を誤魔化すためのもの…言わばテセウスの船って事だよ。」

 

『尤も、誤魔化しきれていない…クククッ、随分焦りが見える所業ですね。』

 

「きっとドタバタしてたんだろうね。ところでさ…果たして此処はキヴォトスって言えるのかな?」

 

『…テセウスの船の特徴の話ですか?そうですね…残念ながら、あの説に則るのであればキヴォトスとは言えないでしょう。

 

ですが、ええ。ここは間違いなく誰が何と言おうとキヴォトスです。』

 

「あっははは、最高だねその考え方!!…っと、落ち着かないと。」

 

 

『しかし良いのですか?』

 

「何がさ。」

 

『レミントンです。彼は恐らくもう使い物になりませんよ?…何せラルクスを始末しに行く道中で紫の涙に伸されたようですから。』

 

「別に?いいでしょ」

「期待もしてなかったし。」

 

 

「キミらもそうだろ?」

 

 

「あ、ああ、そ、そうだな…あ、あまり強そうではなかったし。」

 

「そ、それより!も、もしこの後のき、奇襲が上手く行けば…ほ、本当にカフェのチケットをく、くれるんだよな?!?!そ、それとももしかして、し、新メニュー試食券とか!?」

 

「こ、この脳みそすっからかんが!ど、どうして私たちがこんなみじめな依頼をするのか、わ、分かってるんだろうな!?」

 

「く、クッソ高くてさ、こ、高性能な義体が手に入るんだろ?が、頑張らないとだよな!」

 

 

『私が言えた話ではないですが…随分酷い騙し方をなされたのですね。』

 

「ま、そういうもんじゃないか?人生って。」

 


”ふと、シャーレ近くの道の片隅に自販機が置かれているのに気が付いた。 どうやら四つの商品を扱っているらしい。一つ買ってみよう。”(E.G.O.I.S.T選択)

  • ▼赤い缶 (アビドス)
  • ▼青い缶(パヴァーヌ)
  • ▼紫色の缶(アリウス)
  • ▼”…。”(別の選択肢が発生)
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