Urban Archive   作:うちげば

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かつての愛 - Ⅰ


シャーレと契約し、無駄に強すぎる青髪の奴が所属する看護学校に連行された翌日、俺は病室内で自分の鞄の中身を確認していた。

 

「――案外量が多かったな、これじゃアイツに怒られるか。」

 

いつもそうだった。

突撃捜査の依頼で、何から何までカバンにぶちこんでそそくさと撤退する俺の事を、アイツは白い目で見ていた。

 

『泥棒の様な所業ですね…もう少し丁寧に入れられるよう訓練してはいかがです?』

 

「ぐっ…少しくらいは荷物整理やってみるか。」

 

嫌なものを思い出した。ったく…。

時計。ペンダント…あぁなんでまだ入ってたんだ?…他にもいろんな物が詰め込まれていた。

 

「…なんだこれ?」

 

PAD…しかも随分と質のいい。

連絡手段には困らないだろうが…これこっちでも使えるんだろうな?

そう思いながら出せるものをありったけ出しては丁寧にしまっていく。

 

「とりあえずこれでいいだろ。まぁ、本当は次元カバンだから中身を整理しなくてもいいんだけど。」

 

「しっかしこれもこれで何なんだろうな?」

 

そう言って一冊のノートを手に取る。

随分としっかりした作りだが、J社の特異点、それも高級品である非民間用のガッチガチの錠前で施錠されている。

 

「…なんか見覚えがあるんだよな。」

 

ま、いずれ分かる事か。それよりも――

 

「チビ、面白いもんはなんもないぞ?」

 

「…ムフー。」

 

「あっおい、近づくなって…それと少し黙っててくれないか?」

 

「ぬけだすんだ。へ~…?」

 

何で分かった。こわいな。

 

「な?頼むよ…依頼人と約束しちまったから出ないとなんだ……」

 

「そっか、それじゃぁわたしもいらいする。」

 

「…報酬は?」

 

「…報酬は、私の知りうる限りの全ての情報。」

 

なんだ?急に流暢にしゃべった気が…まあいいか。

 

「依頼内容は簡単。必要最低限以外の無理はしないで。」

 

「やっぱり流暢に喋ってんじゃねえか!?」

 

「うぬ?」

 

どうなってやがる…様子を見るに特定の言葉か何かがトリガーか?

くそっ、こういうときにあいつが居ればな……

 

「まあ、なんだ…分かったよ。」

 

「なにが?」

 

「あぁ、いや、気にしないでくれ。じゃ俺は出てくからな、静かにしてろよ?」

 

まずは邪魔なものを外す。

出口は近くの窓。勢いよく走るだけではバレる可能性があるから、しっかりとクリアリングを行いながら近づいていく。

 

「はぁ…こういう慎重なのは苦手なんだがな。」

 

ほざいたとこで救いはない、そも今の俺は脱走者だしな。手際よく鍵を開錠し窓も開けてそのまま降りる。

幸い依頼の事を知っている連中が『回復して手続きを終え次第すぐ出口に向かえるように』と一階の病室に入れてくれたんでダメージは少ない。

 

「脱走経路はいくつかあるからたどり着くだけだな」

そう言って走り出そうとした矢先、後ろから音がした

 

「―お前も逃げんのか…。」

 

「どこから出るの?」

 

これ怒られるんじゃないか?いや絶対怒られるな。終わった。

 

「まあいい…、この地図分かるか?」

 

「うん。」

 

「オーケー、んじゃ、ここのルートで行こうか。この曲がり角で――」

 

◆=◆=◆=◆=◆

 

どうにか出れたな。厄介なオマケ付きで。

とりあえず歩きながらPADの確認でもするか。

 

「えぇっと、アプリの類は…おぉ。大量だな、モモトークとかってのも入ってる。」

 

これは当たりだな。このチャットアプリがあればどうとでもなる。

とりあえずユーザー登録をしておこうか。

 

「ふぅ、ついたな。」

 

「おっ、来てくれたね」

 

「依頼すっぽかしてるようじゃまずいからな…あんたの書類もそうだろ?」

 

「そうだね~…。」

 

コイツ…まあいいか、今は関係のない事だ。

 

「ああそうだ。合流場所がここだけどさ、今からちょーっとシャーレの方に移動できないかな?」

 

「いいぞ?けど何でだ?」

 

「ええっとね…ユウカが……」

 

ユウカ?ユウカって確かシャーレの……

おいおいおいおい、まさか依頼費に…あちらさん(シャーレ)の費用を使ったんじゃないだろうな?

 

 

 

 

「経費の事で聞きたいことがあるって。」

 

 

 

 

 

「心当たりは?」

 

 

 

 

 

「今回の件の依頼費。」

 

 

 

 

 

 

マジかぁ。

 

◆=◆=◆=◆=◆

 

「先生。お分かりですよね?」

 

「はい。」

 

「経費まわりが、何故か、許容値を、少量ながらも、越しています。上回っているんです。」

 

「そう、ですね。」

 

「心当たりは?」

「ええ。」

「そうですか。では、何か言う事はありますか?」

「返す言葉もございません。」

 

「そうじゃないでしょうが!」

 

「誠に申し訳御座いませんでしたぁ!!」

 

あのヴェンとかいうおいぼれのとこの方がましだったかもしれない。どうして…どうして……。

 

「それとそこの貴方、あなたにもいう事があります。」

 

「あー…チビ助か?」

 

「それもですが――

 

 

 

 

 

何故怪我が完治していないにも関わらず、しかも脱走して、ここにいるんです?!

 

ばれたかあぁぁ!じゃねえやなんで知ってるんだコイツが!?

 

「情報元は?」

 

「トリニティですよ!ついさっきセリナさんが血相変えて電話をかけてきたんですからね?!」

 

「怪我ぐらいは治してから来てほしかったかなぁ!?」

 

「経費を使い込んだおバカさんは黙っててください!!」

 

「さーせんっしたぁ!」

 

「あーもう、とんでもねぇな。」

 

「誰のせいだと…!」

 

 

ピピピピピピッ

 

 

鳴った。

俺の、PADが連絡音を鳴らした。

 

「…誰だ?」

 

「えちょっ、出ない方が良いよ…多分詐欺だと思うし……」

 

 

 

出てみるか。

 

 

 

 

 

「誰だ?」

 

<<はぁ~い?哀しい哀しい復讐者さん、元気にしてるかい?>>

 

「…紫の涙ッッ?!」

 

「え…?紫の、涙?」

 

 

あり得るはずがない。だって――

ここは”都市”とは違う都市だ。

なのに……

 

 

<<ちょっとした情報をくれてやろうと思ってね、電話をかけてみたんだ。>>

 

<<アンタ……ねじれ、って知ってるよね?実はアビドスってとこなんだけど……>>

 

 

情報?

 

<<そう、情報さ。 実はなんだけどねぇ――>>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<<あんたの討ち逃がしたやつが、ねじれになって…アビドスでお待ちになってるかもよぉ?>>

 

”ふと、シャーレ近くの道の片隅に自販機が置かれているのに気が付いた。 どうやら四つの商品を扱っているらしい。一つ買ってみよう。”(E.G.O.I.S.T選択)

  • ▼赤い缶 (アビドス)
  • ▼青い缶(パヴァーヌ)
  • ▼紫色の缶(アリウス)
  • ▼”…。”(別の選択肢が発生)
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