第1話 狼男改と謎の仮面ライダー
「この本によれば、普通の高校生常磐ソウゴ、彼には魔王にして時の王者「オーマジオウ」となる未来が待っていた。初恋の人物に再会した彼の前に突如飛来した謎の戦士、「仮面ライダーギンガ」は圧倒的な力を見せて一度は退けられる。そして、常磐ソウゴと仲間達、更にはその敵をも巻き込んだ激戦の末に仮面ライダーギンガは倒され、私ウォズの元にギンガミライドウォッチを遺したのでした」
「と、ここで公式(オフィシャル)での仮面ライダーギンガの活躍は途絶えています」
「しかし、一冊の本などにはまとめられない程、ライダーの歴史は豊潤にして深淵です。公式(オフィシャル)、非公式(ノンオフィシャル)を問わず、仮面ライダーに魅了された者達によって今この瞬間も新たなライダーの物語は紡がれていきます」
「これから画面の前のあなた方が目にするのは、歴史の闇に埋もれた仮面ライダーの新たなる物語です」
◇ ◇ ◇
時は1972年。世界征服を企む秘密結社ショッカーに改造されながらも、ショッカー打倒に動き出す英雄『仮面ライダー』の誕生した翌年である。
日本国内のとある山中を、2人の若い男が道なき道を進んでいた。
「隕石が落ちた場所ってのはこの先か?」
「ああ、そうだ。公式には発表されて無いが間違いない」
と会話する男達。今から40時間前、地球に隕石が落下しこの土地に落ちたのだが、どうにも様子が変らしい。観測された隕石の大きさに対し明らかに落下時の影響が小さいのだ。
これをショッカーが絡んでいるものと睨んだ彼らは、落下現場のある山中に踏み込んだのだ。
「しかしショッカーめ、ゾル大佐が倒されてしばらくは大人しくしているかと思ったら、直ぐに新たな動きを見せるとはな」
と、言う男の名前は一文字隼人。カメラマンにして仮面ライダー2号と呼ばれる『改造人間』である。そして、もう1人の男の名前は滝和也。隼人と志を同じくするFBI捜査官だ。
「ヨーロッパの方で本郷が活躍しているし、他の大幹部が来るまでは大きな動きは見せないと踏んだが……。もしかすると今回の隕石は連中にとってもイレギュラーな事態なのかもしれんな」
と滝。隼人は滝に言う。
「だとしたら、連中の計画が狂うくらいの予想外の事態だって事だな」
「ああ。ショッカーにとっては最悪の事態だが、我々にとってはチャンスだ」
そして2人は更に先を進む。そうして目的地の辺りにたどり着くと、何人もの黒ずくめのタイツを来た怪人達が、隕石が落ちたであろう地点を中心に土木作業を行っていた。2人にとっても馴染み深いショッカー戦闘員達だ。
そして、その戦闘員達の指揮を狼と人間を合成した様な怪人が執っていた。
「作業ペースを上げろ!早く隕石を収容するのだ!」
と指示を飛ばす怪人。それを見た隼人は小声で
「狼男か」
と言う。隣の滝は
「狼男?ゾル大佐は倒したはずじゃ?」
と返す。隼人はそれに
「いや、ゾル大佐ではなくその前に取り逃がした方の狼男だ。まさか生きていたとはな」
と答える。そう、その怪人は先の戦いで倒されたゾル大佐=黄金狼男ではなく、そのゾル大佐の計画によって生み出され、生き延びた実験用狼男を強化改造した、狼男改という存在だった。
今回の隕石落下を受けて、ゾル大佐を失い大きく動けないショッカーが急遽現場指揮官として用意していたのだった。
「なるほどな」
と言う滝。そして、
「それでどうする?やはりと言おうか、奴さんの狙いは隕石のようだが」
と隼人に問いかける。隼人もそれに答える。
「ああ、どうせ向こうも俺達が来るとは読んでいるだろう。正面から行くか」
滝も、
「そうだな、そうしよう」
と頷く。そうして、2人はその現場に向けて足を進めて行く。
そして、狼男改の前まで来た所で言う隼人。
「ショッカー!何を企んでいるかは知らんが、俺達の目の黒いうちは日本で勝手ができるとは思わないことだな!」
狼男改は、その言葉に驚きもせずに言う。
「やはり現れたか。仮面ライダーにFBIの犬め」
そして隼人達に向き直る。
「隕石を収容し次第お前達を始末する予定だったが予定変更だ!お前達を殺し、隕石を手に入れる!行け、戦闘員達よ!」
そうして戦闘となる2人。ショッカーの戦士達が、2人に襲いかかって来る。だが隼人と滝も負けてはいなかった。
「イーッ!」
と叫びながら襲い掛かってくる戦闘員達を次々と捌いていく2人。ここまで経験を重ねて来た彼らには戦闘員など敵では無かった。
そして、何人か戦闘員を倒した隼人は変身ポーズをとり、ジャンプする。すると、腰に装着されたベルト、タイフーンの風車が回転し一文字隼人は仮面ライダー2号に変身した。
「とう!」
そして、滝と共に戦闘員達を倒していく2号。業を煮やした狼男改も戦闘に参加する。2号と狼男改は格闘戦を行う。2号と狼男改の格闘戦。その戦いは互角に行われていた。そして、2人は同時に格闘戦をやめ、お互いに距離を取る。
「なかなかやるな、仮面ライダー2号」
と言う狼男改に、2号は返す。
「お前もな、ショッカーの改造人間」
両者、しばし睨みあうが今度は狼男改の方が先に攻撃に移る。素早く手刀を繰り出し2号を切り裂かんとする狼男改だったが、それを2号は躱す。そして狼男改の腕を掴んだ2号は、そのまま地面に叩きつけた。
「ぐう!」
ダメージを受けた狼男改はそのまま転がって2号から距離をとる、そして起き上がりざまに指先から弾丸を発射する。しかし、2号はそれを危うげなく躱した。
(やはり、黄金狼男ほどではないな)
2号は先に戦ったゾル大佐こと黄金狼男のことを思い返していた。ショッカー大幹部であった黄金狼男は2号を苦しめるパワーを発揮していた。
そして、今相対している狼男改は実験用狼男から確かにパワーアップしているようだが、それでもスペック・技量ともにゾル大佐の黄金狼男には及ばないようだった。
そして、2号は狼男改に言う。
「パワーはあるが、動きは直線的だな。これでは確かにパワーはあっても当てる事はできない」
2号の言葉に激昂する狼男改。
「言わせておけば!」
2号は続けて言う。
「その攻撃もワンパターンだ。相手の次の行動を予測して動いているようだが、相手に動きを読まれてしまえば同じことだ」
2号の指摘に一瞬ひるむがすぐに反論する狼男改。
「そんなことはわかっている!所詮俺は急場しのぎの戦力よ!しかし、例え俺を倒してもショッカーにはまだまだ強豪が――」
狼男改がそこまで言った時だ、発掘現場で掘り出されかけたまま放置されていた人間程の大きさの隕石が空に浮かび上がった。
「!?」
「なに!?」
急な事態に動揺する2号や滝にショッカー達。隕石は怪しげな光を放ったかと思うと、ひびが入り砕けた。そして、その内部から人型の存在が姿を現した。
『ギィンギンギラギラギャラクシー!宇宙の彼方の!ファンタジー!仮面ライダー!ギンガ!』
そんな大きな音声が辺りに響き渡り、その存在は地に降り立った。それは頭の部分が、円盤のような形状をしており、星空や宇宙を思わせる衣装に身を包み、黒いマントを羽織っていた。
「なんだありゃあ……」
と滝。狼男改はその人物に
「きっ、貴様何者だ!?」
と言う。その存在は
「仮面ライダー……ギンガ!」
と答えた。その答えに2号は
「仮面ライダーだと!」
と驚く。仮面ライダーの名は自分と、仮面ライダー1号である本郷猛が持っている。実際本来この時点で仮面ライダーはこの2人だけのはずだった。この仮面ライダーギンガを名乗る存在は何者だと言うのか?
「……」
無言のまま腕をショッカー戦闘員達の方へ向けるギンガ。
「イー?」
すると、ギンガの手から疑似惑星弾『エナジープラネット』と呼ばれる。エネルギー弾が放たれ、戦闘員達は吹っ飛ばされた。
「イーッ!?」
「うおおっ!?」
戦闘員達の近くに居た滝はその攻撃を危うく躱した。その後2号と狼男改の方へ向くギンガ。狼男改は本能的にこのままではやられると思い、ギンガに弾丸を発射する。するとギンガはマントに力場のようなものを帯びさせ、弾丸による攻撃を防御した。
「うおおおおおっ!」
狼男改は次にギンガに殴り掛かる。が、今度はギンガは両手に重力の力場のようなものを発生させ、あっさりとその攻撃を受け止める。そして、反撃とばかりに狼男改に掌底を打ち込む。
「ぐはあっ!」
と狼男改は吹き飛ばされた。更にギンガは腰に巻かれているベルト、『ギンガドライバー』を押し込む。
『ギガンティックギンガ!』
その音声と共にギンガの手から大きな破壊光弾が放たれ、狼男改に命中した。
「ぎゃああああああ!?」
狼男改はその威力に耐え切れず、爆発してしまった。
「強い……!」
とその光景を見ていた2号。ギンガは今度は2号の方へ向く。2号も身構える。2号は心の中で冷や汗をかく。
(この仮面ライダーギンガ……。敵か味方かは分からないが、敵だとしたら今までにない強敵だ……!)
そんな2号に対し、ギンガは歩み寄ろうとして、
「うっ!うぐ!?」
急に頭を抱えて苦しみだした。
「むっ?」
と訝しむ2号に、
「今度はなんだ!?」
と滝。その内ギンガはその場に倒れ込んでしまい、動かなくなった。死んではいないようだが……。変身を解いた隼人と滝はギンガの元へ行く。倒れているギンガを見下ろしながら滝は、
「さて、こいつはどうする?ショッカー怪人をあっさり倒した奴だ、個人的には今のうちにとどめを刺した方がいいと思うが」
と言う。彼にしてみれば危うく殺されかけたのだから、当然と言えば当然の反応だ。隼人は少しの間考えると、
「いや、こいつは連れ帰ろう」
と答えた。
「なに?」
滝は、隼人の言葉に少し驚く。自分が戦った狼男改をあっさり倒したのだから、そのギンガという奴はかなりの強敵だと思われる。そんな奴を本部である立花レーシングクラブに連行するとなれば、かなりの大ごとになる。
滝のそんな考えを見透かしてか隼人は言う。
「まあ聞けよ。確かにこいつは強いし危険な存在だが……、俺はこいつにはショッカーに敵対する意思があると見た。それに、こいつが何者か調べる必要もある」
「……確かにな」
滝は、隼人の意見を肯定する。そして2人は、ギンガを抱えて帰路に着くのだった。
◇ ◇ ◇
俺の意識が覚醒する。まだ寝ていたいという気持ちもあるが。なにか話し声が聞こえてくる。
「しかし、こいつを連れて帰ってきた時は腰を抜かすかと思ったぞ。それに本当に仮面ライダーだと名乗っていたのか?」
「すみませんね、おやっさん。はい、確かに『仮面ライダーギンガ』とは言ってました」
「隕石の中から出て来たし、地球外生命体だと俺は思うんですがね。しかし、本当に仮面ライダーだと名乗ったのが気にかかる」
「そうだな滝。仮面ライダーは人々の自由の為に戦う戦士の称号のはずだ。なんで宇宙人がそう言ったんだ?」
「それをこれから聞こうと思うんです」
そんな話し声を聞きながら、俺は自分がベッドに寝かされているのに気づく。ここは、何処だ?いや、ていうか俺は誰だ?そんなことを思いながら俺は身体を起こす。
「ここは……」
と声が出る。あっ、杉田智○の声だ。自分の今までを思い出せないのに自分の声が杉田という声優の声だという知識はある。辺りを見回すと、3人の男がこちらを見ていた。
俺はこの男達を知っている。特撮作品の金字塔、『仮面ライダー』に登場する一文字隼人に滝和也、立花藤兵衛だ。彼らに関しての知識が頭にある。
「目覚めたようだな」
一文字。俺は
「あなた達は?」
と言う。知ってはいるのだが、俺が知っているのはおかしい気がして一応言った。すると滝が、
「おいおい、俺達を攻撃しておいて言うのかよ仮面ライダーギンガさんよ」
と呆れたように言う。仮面ライダーギンガ……その知識も俺にはある。仮面ライダージオウという作品に登場する仮面ライダーの1人だったはずだ。俺が?
「俺が?すみません、俺は何をやったか何も覚えていないんです」
と半分嘘をつく。色々知識はあるが、俺が今までどういう存在で何をしてきた等とまるで記憶にない。
「えっ?お前さん記憶喪失なのか?」
と立花。一文字が
「それじゃあ、さっきお前が隕石の中から登場してショッカーの怪人を倒したことも覚えてないのか?」
と言う。えっ?何それ知らない。俺は一文字の質問に対し
「はい、覚えてないです」
と答えた。すると滝は嫌そうな顔をして
「記憶喪失の宇宙人とは厄介なことになったな」
と言う。記憶喪失は宇宙人に多い設定なのかな?そして立花は俺に
「じゃあ、お前さんの名前と何処から来たかは?」
と言う。俺は少し考えた後、こう答えた。
「自分が仮面ライダーだってことは何となく分かるけど……宇宙か未来から?」
「おいおい、マジで記憶喪失かよ……」
と滝が言う。一文字がそんな滝を窘めて言う。
「まあそう言うなよ滝」
そんなやり取りをしている2人を見ながら俺は思う。
(おそらく今の俺には分からない事だらけだ)
だが今俺は自分の置かれた状況を楽しもうと、そんな風に感じていた。
そして俺は
「すみませんね、色々と迷惑をお掛けして」
と言った。
現時点の時系列は仮面ライダー39話「怪人狼男の殺人大パーティー」と40話「死斗! 怪人スノーマン対二人のライダー」の間辺りです。
駄文閲覧ありがとうございました。ご感想お待ちしております。