世界が待ってる この一瞬を(絶望)   作:リョオオオオイキテンカァァァ!!

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区切りをつけたら短すぎたので、連投です


18話

 駅構内を全力で駆け抜ける。走って、階段を下り、柱の影を縫うように駆けていく。

 

 しかし途中、背後から迫って来る呪力の気配。俺は足を止めずに、背後を振り返ってその正体を探る。

 

 「こォこ、どォォこォォォ?

 

 呪力の気配の正体、それは飛来してくる石ころサイズの改造人間であった。

 

 (改造人間!話には聞いていたがあのサイズまで圧縮できるのか!)

 

 俺は飛んでくる圧縮された改造人間を頭を振って躱す。躱した改造人間は俺を追い越し、やがて体積を急激に膨張させ始める。

 

 「!!」

 

 広がり始めた改造人間は、やがて壁の様に形を変え、俺の行き先を防ぐ。これにより、俺の足は完全に停止させられる。

 

「いやー、逃げるねぇ。俺の術式、知ってる感じだもんね、そりゃ逃げるか」

 

 そして逃げる俺の後方より呪霊、真人が現れる。俺は逃走の際収めていた刀を再び抜き、真人と相対する。

 

「でもさ、逃げてどうするの?アンタじゃ俺を殺せないけど、このままじゃジリ貧だ」

 

 そう言って真人は己の口へと腕を突っ込み、喉奥から小石サイズに貯蔵していた改造人間を取り出す。

 

 特級呪霊真人、推定される術式の能力は、”自身や触れた他者の魂の形を自在に操る”というもの。

 

 術式の幅は異様に広く、自身の四肢を馬などの他生物のつくりに変形させたり、他者を改造人間として扱う事もできる。

 

 また凶悪な点を挙げるなら、それらの発動条件は触れる事だけ。つまり一度でも触れられてしまえば誰でもあの改造人間達の様に姿を変えられてしまうということだ。

 

 加えて、相対した術師の報告曰く、奴は魂の形を常に保っているらしく、例え心臓や頭を貫いたとしても、奴の魂に響かない限りは全くの無意味であるという。

 

 要は現状の俺からすると奴は”一撃必殺の攻撃を持っていて"且つ、”攻撃を悉く無力化される”という、全く抗いようのない相手であった。

 

 そのことを真人自身も理解しているのだろう。ニタニタと余裕そうな笑みを浮かべながら、攻撃を重ねてくる。

 

 真人は手にした石ころサイズの改造人間を手に握り、勢いよく投げ飛ばしてきた。

 

 改造人間は変形するまでどの様な形になるか分からない。俺は刀を構え、迎撃に備える。

 

 数瞬後、改造人間はサッカーボール程度の大きさの球体となり、その後爆発する。爆発したその体内からは、なんと複数の石ころ程度の改造人間が姿を見せる。

 

 圧縮した改造人間の内部に、更に圧縮した改造人間を詰め込み、数を誤認させる攻撃。

 

 複数の改造人間は針の様に此方へと延び出て、俺の身体を貫こうと迫る。

 

「ッ!!」

 

 俺は咄嗟に刀を使って受け止めるが、すべての攻撃を受け止めきる事は出来ない。側頭部や腿を針が掠め、痛みと共に血が流れ出る。

 

「ははっ!これは効果有りか!いいね、続けてこう!」

 

 まるで幼子が新しい玩具で遊ぶ時のよう、無邪気で残忍な笑みの真人はそう言って攻撃のテンポを上げる。

 

 今度は自身が飛び込みその左腕を巨大な棘付き鉄球に変化させ、俺へと振り下ろす。

 

 俺は横跳びにそれを躱すが、今度は回避した俺を追うように右腕が伸びる。()()()()()、俺は咄嗟に掌印を結び叫ぶ。

 

「っ『掩蔽(えんぺい)』!!」

 

 直後俺へと掌が触れる寸前、真人の掌と俺の身体との間に無数の細かい鎖が現れ、接触を回避する。

 

 もしあの掌が接していたら、その時点でアウトだ。体は魂ごと変形され、異形の姿となる。

 

 仮に奴の術式で改造人間とされた場合、それは()()()()()可能性がある。

 

 そうしたら俺はどうなる?今までは無いことにできた死だが、改造人間となればその命が消えるまで、永劫に改造人間として蘇り続けるのではないか?

 

 そう思うと背筋が冷える。俺はより一層掌へと警戒を重ねて、真人の動向を伺う。真人は伸ばした腕を元に戻し、退屈そうな表情で話出す。

 

「うーん、警戒するのは結構だけどさ、そろそろ止めにしない?このまま続けても退屈なだけだしさ、さっさと死んでよ」

 

「……随分よくしゃべるんだな。人間の真似事か?」

 

 俺がそう言うと、真人はニヤリと笑みを浮かべてから口を開く。

 

「真似、ね。そいつは違うさ。俺は、いや俺とオマエらは鏡だ。だがアンタには見えてないのさ、鏡に映る自分の魂ってやつがさ」

 

 だから、と真人は言葉を続ける。

 

「アンタは俺に傷すらつけれないよ……ぉおえ!」

 

 そう言い切るや否や、真人は自分の両手に貯蔵していた二つの改造人間を吐き出す。それからそれらを重ね合わせる様に掌を合わせると、改造人間達に変化が起きる。

 

「『多重魂(たじゅうこん)』 『撥体(ばったい)』!」

 

 それから真人自身の呪力が込められると、それらは反発しあい、拒絶しあい、膨大な質量となり暴れ始める。

 

 まるで巨大な蛇が暴れだすように、横長の姿に変えられた改造人間達は真っすぐに、急激なスピードで俺の元に迫る。

 

「ッ!」

 

 先程までの改造人間を投擲するだけの遠距離攻撃とはわけの違う速度と質量。それが二体。

 

 鎖での防御も間に合わない、俺は咄嗟にその場を駆け出し、攻撃を躱そうとする。

 

 しかし改造人間の壁で制限された空間、もともと広い訳でもない室内では躱すことも難しい。伸び出る改造人間の内一体が俺の足を捉える。

 

「ぐぅ…!?」

 

 口の部分で噛みつかれたらしい。鋭い痛みが足首から伝わる。慌てて足に嚙みつく改造人間を斬り落とそうと刀を振るおうとするが、今度はもう一体の改造人間に腕をかまれる。

 

 そのまま壁際まで押し飛ばされ、磔のようになる。俺は体の自由を取り戻すため、嚙まれていない方の片手で掌印を結ぶ。

 

「『穿孔(せんこう)』!」

 

 叫ぶと同時に、握っていた刀が空へと浮かぶ。そのまま遠隔で刀を操り、腕に噛みつく改造人間を斬り落とす。

 

 そのまま俺は解放された片手で刀を握りなおすと、足の方に噛みつく改造人間の首も斬り落とす。

 

 これで漸く自由に動けるようになった俺は気づく。いつの間にか改造人間を放った本人、真人の姿が消えている。

 

 一体どこに行ったのか、辺りを見渡そうと首を動かそうとした時だった。

 

「はい、おしまい」

 

 耳元からその声が聞こえた。視線だけ声の方向に動かすと、いつの間にか俺の傍まで移動していた真人が、その掌を俺の腹部へ這わせ、触れていた。

 

 術式の発動条件は、掌が対象に触れる事。

 

 俺はすぐさま肘を抜き出す。真人の顔面目掛けて肘打ちを行い、引きはがそうとする。

 

 だがもう既に俺の腹部へと触れられている掌、段々と呪力が集まりやがて術式が発動し_____________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

________________________________

 

 

 

 

「はい、おしまい」

 

 「多重魂」「撥体」、二つ以上の魂を重ね、その際に生じた拒絶反応を利用し、巨大な質量として相手にぶつける技。

 

 真人はそれらの魂を利用し(むすぶ)の足止めを行い、自身は忍ぶようにして結の近くへと近づいていた。

 

 それから自身の四肢に噛みつく改造人間に気を取られ、気づかない結の腹を、真人は自身の掌で触れた。

 

 それが表すのは、即ち死であった。

 

 (こいつは高専の術師か、改造人間としてストックしとけば虎杖と戦う時使えるかな)

 

 自身の勝利を確信した真人は、内心そう考える。漸く自身の接近に気づいた術師が距離を取るため、真人を引きはがそうとするが、間に合わない。

 

 案外、あっけない相手だったな。と、真人は特に感情を動かすでもなく、退屈な戦いへ幕を降ろす。

 

 『無為転変(むいてんぺん)』。魂の輪郭を理解する真人だからこそ十全に扱う事の出来る術式。触れた者の魂の形を変える。

 

 真人は掌に呪力を集中させ、術式を開放する。そのまま結の魂の形を変えるべく、その輪郭を___

 

 

 

 

 

「は?」

 

 思わず声を漏らす真人。驚き、呆然と空を見つめるその顔面に、結の肘打ちが繰り出される。

 

 防御をするでもなく、もろに肘打ちを喰らった真人は吹き飛び、地面を転がる。しかし、その目線はまだ空を見つめたままだ。

 

 (……どういう事だ?アレは……アイツは……!!)

 

 思い出すのは先程の光景、術式を使用し結の魂へと干渉しようとした時だった。魂を触れようとした瞬間感じた違和感、それは感触だった。

 

 硬い、()()()があった。魂を覆う、ナニカが奴の中に巣食っている。

 

 初めての経験であった。これまで何百回と魂に触れ、改造人間達を生産してきた、そんな真人でも見たことのない、異様な魂の形。

 

「死んで……ない…?」

 

 倒れたまま、目線を結へと向ける。視線の先、何故か無傷である事に戸惑う青年の、その奥、魂へと目を凝らす。

 

 真人の目に映ったのは、呪霊の自身の目から見ても身の毛がよだつような、捻じれた魂の形。

 

 常軌を逸しているのは形だけではない。その魂を覆うようにナニカが……鎖の形をしたソレがうねり動き続けていた。

 

「………ははっ、はははっはは!!」

 

 むくりと起き上がった真人は思わず高笑いをする。それは好奇心に近い感動であった。自身の知らない、観測出来てない魂の領域を、目の前の術師は持っているのだ。

 

 だが、実際に魂へと触れた真人は本能的に結の性質に気づく。その輪廻の異常性に。

 

「オマエ……もう人間じゃないな?」

 

 その言葉に、びくりと肩を震わせる。

 

 真人は気付いたのだ、結の異常性、()()()()()()()()()()であることに。

 

 それと同時に、意気込む。殺す。殺してやると。

 

「安心しろよ……俺なら殺してやれる。オマエの魂を、書き換えてやる……!」

 

 だらりと、その鼻から()()()()。現れたのは凡庸な術師ではなかった。虎杖悠仁以外に存在していた、無意識に魂の輪郭を理解している者。

 

 互いに天敵。その戦いの火蓋が再び、切って落とされた。

 

 

 

 

  

 

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