特級呪寿師・そろそろ寿司を食べないと死ぬぜ!   作:蓮太郎

1 / 2
寿司の一番乗りに、私はなりたい。


そろそろ寿司を食べないと死ぬぜ!ついでに渋谷も救うぜ!

 

 寿司、それは命の源。

 

「渋谷に来たぜ!」

 

 1人の外国人が寿司屋の前で叫んだ。

 

 あまりの声量に注目を集めるも、彼は一切気にしていない。

 

 寿司を愛し、寿司と共に生き、そして寿司と共に死ぬ男。ガラガラと勢いよく寿司屋の扉を開けて入店する。

 

「へいらっしゃい!あ、い、お前は…………!」

 

「大将!寿司!」

 

 いきなり席に座ると男はそれだけを言って腕を組んで待つ。

 

「大将、なんですかあれ。追い出しましょうよ」

 

「だからフェスは反対したんですよ。ここ、高級寿司なんですから変な奴が来るって」

 

 従業員が客に聞こえない声量で大将に話しかける。

 

 だが、大将は黙々と寿司を握るのみ。

 

 ただただ数を、しかし質を落とさないように大トロ、はまち、いかと大量にこさえていく。

 

「お前たち、忙しくなるぞ」

 

 大将は従業員に向けて神妙に言った。

 

 その視線の先は声量が大きい男。常に真顔で妙に圧があり、そして微動だにせず静かに席に座っている。

 

「伝説の寿司食いがうちに来るとはな。お前たち、全力で握るぞ!」

 

 だん、と勢いよく男の前に置かれた寿司はまるで宝石のように輝いていた。

 

 作法として男は両手を合わせて感謝した。この感謝がなければ食に移ることは出来ないからだ。

 

 そして、男は手を離して箸を持つ。

 

「寿司を食うぜ!」

 

 瞬く間に寿司は消えた。

 

 醤油を一瞬でつけて一口で頬張り、咀嚼する時間も少ないながらしっかりと噛み締めて味わい、そして次の寿司をすぐに食べる。

 

「寿司!美味すぎる!アアアッ!」

 

 だがやかましい。寿司の美味さに興奮して褒めちぎっているのは間違いないのだが兎に角うるさい。

 

「大将!追い出しましょうよ!」

 

「うるさすぎてかないませんよ!?」

 

「構わん!寿司を出し続けろ!」

 

「寿司!!なぜこんなにも美味しいんだ!」

 

 一気に忙しくなるソレはまさに戦場。あの男を満足させる為に板前たちは忙しなく動く。

 

「寿司!!!美味すぎるだろ!反省しろ!」

 

 もはや理不尽な反省の促しをしているが、褒めちぎっているというのはなんとなく分かるので誰も何も言わない。

 

 言ったところで絡まれて困るだけだ。

 

食べたぜ(GOTISOUSAMA)!」

 

 男の宣言に場は一度落ち着いた。

 

 かなりの勢いで寿司を食べたこの男、既に30貫は食べているがその時間は5分にも満たない。

 

 板前たちもようやく一瞬で寿司を喰いつくすのではないかと思っていた男がゴチソウサマの宣言をしたのだ。

 

 もうお会計を済ませてさっさと出て行くだろう。

 

 そんな雰囲気の中で大将だけは違った。

 

「(伝説の寿司食い男。寿司を食べ続けなければ死んでしまうという話だったが…………)」

 

 鋭い目つきで男が何を考えているのかを推し量る。

 

 長年寿司を握り続け、多くの客を喜ばせるために身に着けた心理学(TRPG感)により男はまだ満足していないと推測した。

 

 ここで終わるようならば伝説には残らない。

 

 多くの寿司を食らい、されどしっかりと勘定して帰っていくと噂されている男なのだ。

 

「寿司も食べたところだが…………」

 

「(この程度で終わるはずがない!)」

 

「そろそろ寿司を食べないと死ぬぜ!」

 

「へいおまち!」

 

 突然の宣言に対応できたのは大将だけだった。

 

 大将の手からミサイルのように飛ばされた寿司。寿司は一直線に男の板の上に形を崩さず着地し、そして即座に男の口へ運ばれた。

 

「オイ!寿司!!こんなに美味すぎていいのか!?」

 

「お前たち!まだ始まったばかりだぞ!」

 

「何なんだよあいつ!?」

 

「もうやだ」

 

「俺は帰るぞ!見てるだけでもう沢山だ!」

 

「寿司!!!美味い!!!オオオッ!」

 

 雄叫びを上げながらも寿司を食い続ける男との戦いは長く続く。

 

 そのはずだった。

 

「一体何が起きているんだ!?寿司が…………消えていくぜ!?」

 

 明らかな異常現象。大将の手から離れて着弾したはずの寿司が当然空気に溶けるかのように消えていく。

 

 他の客に出されていた寿司も、板前たちが握っているはずの寿司も消えていく。

 

「一体どういう…………」

 

 そして、寿司屋を簡単に吹き飛ばす暴風が吹き荒れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死んだぜ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ…………ここはどこだ!?!」

 

 男が目覚めると、そこには何もなかった。

 

「なってこった!渋谷が、寿司が消えてるぜ!」

 

 辺り一面は瓦礫よりも細かく砕かれたものが散らばり、命どころか物すらろくに残っていない状況だ。

 

 とんでもない状況ではあるが、男は渋谷の惨状よりも寿司が消えてしまったことに愕然とした。

 

 このままでは寿司を食えずに死んでしまう。

 

 そう、この男は寿司を愛するあまり寿司を食べ続けないと死んでしまう身体なのだ。

 

 寿司が無ければ死活問題。万事休す!もはやこれまで!

 

『寿司を愛する者よ、私の声が聞こ「誰だお前(えます)は!?」か?』

 

 その時だった!天より寿司のマスコットのような可愛らしいゆるキャラが降臨するまでは!

 

『私は大いなる寿司の意思。「なるほど!」今、この世界の寿司は消滅の危機に瀕し「なにっ(ていま)!?」す』

 

 大いなる寿司の意思と名乗った謎の存在は男に話し続ける。

 

『寿司を憎む邪悪な力によって因果が捻じ曲げられ、今この場所に存在していた寿司が全て消え、そして世界中の寿司も消え「なにっ!(去ろうと)?」しているのです』

 

 大いなる寿司の意思が告げるのは寿司がこの世から消え去ろうとしている事実。

 

 渋谷が丸ごと消えているのだが、相手は一つの概念を消し去ろうとしている巨悪であるため流石の男も驚愕する。

 

『今こそ貴方の想いを力に変える時です。その情熱で世界の寿司を救ってください』

 

 大いなる寿司の意思の言葉は重みがある。何より寿司が意志を持ち男に話しかけているのだから信じることは当然。

 

 大きく貯めて男は言った。

 

「やぁーってやるぜ!!!」

 

 男は駆けだす。世界から寿司を取り戻すために、虚無と化した渋谷を走る。

 

『まずは大いなる寿司の試練を受けるのです。そして寿司ソウルを集めて邪悪な力に対抗しましょう』

 

 そのまま大いなる寿司の意思が召喚したワープゲートに男は突っ込んだ。

 

 寿司を救うために、寿司を食べるために、そして寿司を愛するために男は走る。

 

「そろそろ寿司を食べないと死ぬぜ!」

 

 その後ろで寿司とほとんど関係なく渋谷を消し飛ばした張本人を体に宿している虎杖が曇りに曇っているも知らず、そして虎杖も謎にはしゃいでいる男が居るとも知らずにいろんな意味ですれ違う。

 

 二人の邂逅はもう少し先になる。

 

 





寿司を愛し、渋谷を救いたい人から評価と感想を頂くと続くかも…………しれません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。