【悲報】一般サラリーマン、目を覚ましたら厳つい男たちに囲まれてた 作:モモンガ大好き倶楽部
第1話
1:スレ主
たすけてください
2:スレ主
あの、誰かいませんか? これ、5ちゃんねるのスレとかそんな感じですよね? 本当にたすけてください……怖くて動けないんです。
死んだフリで誤魔化してるけどもう限界なんです
3:名無しの転生者さん
聞こえていません。もっと大きな声で言ってください
4:名無しの転生者さん
この感じ……スレ主は転生したてじゃな(名推理)
>>1 ちゃんと聞こえてるよ、スレ主さん。死んだフリ継続したまま頭の中で呟くだけでここには書き込めるからさ。落ち着いて落ち着いて
>>3 新スレに張り付いて嫌がらせはやめーや。この前の進撃世界に転生した人、それに騙されて大声出して巨人に見つかって死んでたやんけ
5:名無しの転生者さん
なんかヒント無いの? とりま状況説明してみ? あ、余裕あったらで良いからね。マジで覚醒したてのスレ主ってすぐ死ぬから
6:スレ主
死ぬ!? 死ぬの俺!?
あー……気付いたらなんか狭い箱の中みたいなとこにいて。やたら揺れるし周りが騒がしかったから見つからないように静かにしてたらいきなり箱が開けられて。
そしたら赤い髪の人を筆頭に荒くれ者って感じの格好の人たちが周りにいっぱいいたからそのまま死んだフリをしたんですよ。
今も周りはまだザワザワしてますけど、一応放置されてる感じです
7:名無しの転生者さん
なるほど。絶体絶命ってやつじゃな?
8:名無しの転生者さん
懸命やな。転生あるあるそのいち。監禁スタートなんて珍しくもない。下手に動くと殺されるやーつ。
9:名無しの転生者さん
そのまま何とか周りの状況探れんか? どの世界に転生したかわからんと俺らもアドバイスできんよ
10:名無しの転生者さん
一瞬見えたのが『赤い髪』と『厳つい格好のやつら』だけじゃなあ。そんな作品腐るほどあるし。他には?
11:スレ主
えっと……結構傾く感じの揺れなので船に乗せられてるのかも知れません。あとは……さっき『お頭』って言葉と外国人っぽい名前が聞こえました。
あ、今も『
すみません、言葉の羅列になってしまって。みなさんならわかるかな……あれ? ていうか死んだフリバレてますよね? やばいやばいやばい
12:名無しの転生者さん
あっ(察し)
13:名無しの転生者さん
当然のように覇気の話をするってことは……新世界の海賊船に紛れ込んじまったかぁ。こりゃ一般人が生きてくには厳しいな
14:名無しの転生者さん
死んだフリしてるの バ レ バ レ
ドンマイイッチ
15:名無しの転生者さん
グッバイイッチ、フォーエバーイッチ
16:名無しの転生者さん
最後に名前だけでも遺していきな? ま、刹那で忘れちゃうけど
17:名無しの転生者さん
やめろ>>16っちゃん!!
18:スレ主改めモモンガ
い、いやだ! 死にたくないですよ俺!
あ、名前は……モモンガです。サラリーマンをやっています。さっきまで家でゲームしてました
19:名無しの転生者さん
うわぁ! 急に落ち着くな!!
20:名無しの転生者さん
えーと、モモンガさんよ。落ち着け。いや落ち着いてはいるのか? とにかくお前さんは多分大丈夫だ
21:名無しの転生者さん
ここの連中は基本的に軽薄なノリが好きなおバカさんばかりだから、初見さんを怖がらせて遊ぶ習性があるんだ(経験済)
22:名無しの転生者さん
そもそも『推定見聞色持ちの前でお粗末な死んだフリ晒してるのにまだ攻撃されてない』ってのが安全が保証されてる証拠よ。
海賊にもいるんよな、穏健派ってやつが(なお仲間を笑った場合)
23:名無しの転生者さん
そろそろ可哀想だから俺が答え言うぞ。
赤髪、船、覇気。これだけ揃えば『ワンピース』って海賊漫画に出てくる赤髪海賊団で確定やろ。
あんまり平和な世界じゃないが……どっこい目の前の奴らは比較的穏健派や。良かったな。話せばわかる系の人たちやで
24:モモンガ
あ、そうなんですね……良かった。急に死ぬとか転生とか言われたらパニックになっちゃいますよ、もう!!
ところでワンピースってなんですか? すみません、聞いたことがなくて
25:名無しの転生者さん
パニックねぇ。その割には落ち着いてるっぽいけどなぁ
26:名無しの転生者さん
ワンピース知らないってマ? つーかマジで冷静だな。
モモンガさんって本当に一般人? 山育ちだったりNOUMINだったりしない?
27:名無しの転生者さん
原作知識ゼロはきついけど、逆に言えばそれ以外はマジで運が良いなぁ。初手赤髪とは。どっかの非加盟国とか、天竜人の屋敷の中とかだったら目も当てられんかったな
28:名無しの転生者さん
なあなあ、モモンガさんって自我が目覚める前に悪魔の実食ってんじゃね? それも見た目でわかる系の。
死んだフリしてるってことは動いてないんだろ? それなのに能力者って判断されるってことは……
29:名無しの転生者さん
ゾオンかな? 自我が目覚めたばかりなら人型形態への切り替えもスムーズにできないだろうし。それで警戒されてるとか?
30:名無しの転生者さん
まあワンピース転生ならよくあるわな。マグマグ食った瞬間自我が目覚めて混乱のまま島を焼き尽くしたやつとかこの前いたし
31:名無しの転生者さん
アイツ、そのまま海軍に捕まってインペルダウンに直行だっけ? かわいそうに。一体誰のせいなんやろうなぁ
32:モモンガ
なんかわかんないですけど随分怖い世界観なんですね……ああ、どうしよう。明日4時起きで出社なんですよね……ん? 転生したから会社に行かなくて良いのか。いやでも転生ってなんだよ……じゃあ死んでるじゃん俺。
そもそも転生なんてそんなのゲームの中の話じゃないか。おかしいでしょ
33:名無しの転生者さん
4時起きは草。クソブラックやん。良かったな解放されて
34:名無しの転生者さん
落ち着いて聞いてくださいね。あなたは一回死んで転生したのです。証拠はここに書き込めてること
35:名無しの転生者さん
正直意味わかんねーよな(心底同意)
俺たちゃみーんな転生の理由はわからない。
どこかの世界からこれまたどっかの世界に勝手に転生させられて、そんでみんなお前と同じようによくわからんまま生きてる可哀想な人間よ
36:モモンガ
はー……本当、なんですね。俺がいつの間にか死んだのも。ワンピースって漫画の世界に転生しちゃったのも
37:名無しの転生者さん
おう、本当だ。そして今すぐまた死んでもおかしくないってのも事実だ。
まあ、会社も死んだことも一旦忘れろ。このまま死んだフリ続けても埒があかんし勇気を出せ。行動しろ
38:名無しの転生者さん
せやせや、とりあえず相手の立ち位置がわかる画像上げられんか? 相手が本当に俺らが思ってる奴らかわかるし、誰に話しかけたら良いかも教えてやれるぞ
39:名無しの転生者さん
あー、あの俺らに共通の謎能力な。スクショで視界共有できるやつな。まあ転生者は念じたら大体できるからやってみ? そーっと薄目開けてさ
40:モモンガ
なんか『大体』って言われると不安になりますね……でもやるしかないですね。薄目でやってみます。えーと、こうですか? <<画像>>
41:名無しの転生者さん
(絶句)
42:名無しの転生者さん
あの……シャンクスのこんなマジ顔初めて見るんですけど?
43:名無しの転生者さん
愛剣抜いてるやん。臨戦態勢やん。どんな見た目してんのモモンガさんって
44:モモンガ
いや、普通のサラリーマンのはずですけど……ええ? 気付かない内になんかこの世界特有のマナー違反しちゃったとか……? 申し訳ないな
45:名無しの転生者さん
おい、見ろよ。シャンクスの剣に反射したモモンガさんの姿……やばいぞ
46:名無しの転生者さん
マジ? どこ?
47:名無しの転生者さん
画像の左下拡大してみろ。思いっきり骸骨や
48:名無しの転生者さん
でも、ただの骸骨じゃねえぞ。何度でも強い殺る気で立ち上がり前に進む。
ド級のモモンガ、ドドンガだ!!
49:名無しの転生者さん
ドリトライ民は巣に帰れ
50:名無しの転生者さん
あーほんとだ。画質粗いから余計に雰囲気あるな。入ってるのもでっかい棺桶っぽいし、最初に開けた人の心臓が止まるタイプのホラーだわ
51:名無しの転生者さん
これ、モモンガさん? 柔らかい物腰とは裏腹に凶悪な見た目……こんなん絶対厄介な敵キャラクターやん!!
52:名無しの転生者さん
シャンクス達の警戒感マックスなのもわかるわ。こんなの間違いなく人類の敵や
53:名無しの転生者さん
モモンガさんの目のとこの赤い光めっちゃこわ。目線だけで人殺せそう
54:名無しの転生者さん
今のは死の魔法ではない……ただの視線だ(死だけに)
55:名無しの転生者さん
なるほどな。本来の赤髪海賊団は平和なやつらや。お頭なんて酒を頭からぶっかけられても笑ってるような奴や。
んで、そんな人間にめっちゃ睨まれてるけどモモンガさん何したん?
56:モモンガ
だから何もしてないですよ!!
俺、まだ薄目なんだからシャンクスって人の表情あんま見えないし、みなさん適当なこと言ってないですよね?
また悪ノリしてるんだったら本当にやめてくださいよ。俺はただのサラリーマンですよ
57:名無しの転生者さん
またまたー。前世は魔王とかやってたんでしょ? 最近流行りの中間管理職の魔王的な
58:名無しの転生者さん
この魔王、俺らの最初の悪ふざけのせいで完全に疑心暗鬼になってて草
59:名無しの転生者さん
かわいい魔王やな。ギャップ萌え狙いか?
60:名無しの転生者さん
やーいお前の見た目、人間をぶっ殺すのが好きそうな魔王!!
61:モモンガ
魔王……えぇ……もしかして俺の今の姿、ゲームのアバターになってるのか……? ほ、本当に骸骨になってます?
62:名無しの転生者さん
なってる
63:名無しの転生者さん
怪しい箱開けたら中に凶悪なフォルムの骸骨入ってたら、そらシャンクスほどの実力者でもマジ顔で警戒しちゃうわな
64:名無しの転生者さん
しかも見た目骸骨なのに見聞色持ちからしたら『生きてる』っつーね。意味不明過ぎて怖いやろうな向こうは
65:モモンガ
こっわ!! 今頑張って目開けたらめっちゃ威圧感増したんですけど!? 目、目合ってる!! この人がシャンクスさん!? これが殺気ってやつですか!?
あー……皆さんなんとかしてくださいよ……俺初めて人からこんな感情ぶつけられて怖くて仕方がないんですよ
66:名無しの転生者さん
怖いのはお前の顔と情緒や
67:名無しの転生者さん
画像解析職人の俺、参上。とりま拡大して画質改善してみたわ <<画像>>
68:名無しの転生者さん
モモンガさん(魔王)の見た目は豪奢なローブに厳つい肩当て、胸の中心にはでっかい赤い球のついたゴツめの骸骨なんだぜ。
あと何故か赤髪海賊団のクルーにバギーがいるんだぜ
69:名無しの転生者さん
草
70:名無しの転生者さん
こうして羅列するとマジで魔王やな
71:名無しの転生者さん
一般人のくせに変に冷静な理由もわかったわ。こいつ精神まで魔王になってるんやろ。ボスキャラはドンと構えてるもんやし
72:名無しの転生者さん
なっちまったんだよ……魔王ってやつに!! 身も! 心も!!
73:モモンガ
(絶句)
74:名無しの転生者さん
あーあ、モモンガさん黙っちゃった。まあ人間から魔王になってましたとか言われても困るよな
75:名無しの転生者さん
まあまあ。もう目開けちゃったんだし、とりあえず目の前のシャンクスに話しかけてみよ? 会話できるアピールは大事
76:モモンガ
あ……はい。じゃあ挨拶してみますね。行ってきます
77:名無しの転生者さん
まあ気張れや
78:名無しの転生者さん
どうなるかなぁ。とりあえずワンピース世界転生に役立ちそうなテンプレ情報貼っとくから、トークで時間稼ぎつつ横目で見といた方がええぞ
79:名無しの転生者さん
逆にまだテンプレ貼ってなかったの草。
ほんま新参に厳しいなこのスレは
80:名無しの転生者さん
ねえねえ、みんなバギーはスルーなの? シャンクスとバギーが同じ船にいるってめっちゃエモくない?
81:名無しの転生者さん
まあそりゃあ経緯は気になるが。ロジャー船長の処刑の時の分岐点でなんかあったんやろうな、この世界だと
82:名無しの転生者さん
転生前からバタフライエフェクト起こしてたのか? さすが魔王……スケールが違うぜ(適当)
深夜。偉大なる航路のとある島の港にて。
停泊するレッドフォース号。その船内にて、赤髪海賊団は宴の真っ最中だった。
数年前に
新たに打倒した敵船から意気揚々と引き上げた宝箱の数々。最初は既に寝てしまったウタを起こさないように静かめだった宴も、大収穫に盛り上がりが止まることを知らず今や最高潮。
その日のウタの寝かしつけ当番のクルーには、後でとびきりの肉と酒を回さなければならないくらいに宴が大いに盛り上がった。
そして酒が深まれば始まる『いつも通り』の船長と副船長のくだらない喧嘩。やれやれと見守る周囲の仲間たちの温かい目。それは間違いなく赤髪海賊団にとっての平和な日常であった。
小さな賭け事をしては、勝者の手によって大小様々な宝箱が一つ一つ開けられていく。歓声を上げる者もいれば、落胆の声と共にハズレの箱を乱暴に閉める者もいる。
しかし、今夜は目玉の宝箱があった。一番大きく異様なまるで棺桶のような箱。誰が言わずとも『アレは最後に開ける』という雰囲気が船内には漂っていた。
ふと、その箱が『カタリ』と音を立てた。
宴の喧騒の中、それに気付いた者は少ない。見聞色に長けた者。偶然近くで休んでいた者。そして船長のシャンクス。
一瞬で表情を変えた船長のシャンクスが、気付いた者たちに目配せをしつつ立ち上がる。
「お前ら、盛り上がってるとこ悪いな。よーく考えたら今日一番活躍したのは船長のおれだ。だ〜か〜ら〜アレはおれが開けさせてもらう!! 船長命令だ!!!」
「「ええ〜!!」」
「そりゃ無いぜお頭ぁ! せっかく最後の楽しみに取っておいたってのによぉ」
「おいシャンクス。てめぇもしかしてあの中身が何かわかってんだろ? おれ様を差し置いて極上の宝を手に入れようなんざ百年早いぜ!! 甲板に出ろよ! ハデにやろうモガッ!!」
「まあまあ、ああなっちまったお頭はもう止まんねぇよ」
「しょうがねぇだろ。まあ、お頭が開幕で敵船の舵を破壊したのはファインプレーだったもんな」
「そうだな。じゃあしょうがねぇか」
「おれの話は……終わってない……クソ、わかったから離せよ!! 毎度毎度副船長の俺を舐めやがって!!」
「そんなこたぁねえよ。いざって時は頼りにしてるぜ、バギー副船長」
「そうだそうだ。この前なんか海に落っこちた俺の大事なブツをサラッと潜って取ってきてくれたしな。さすが副船長だ」
「よっ! 副船長!!」
「「副船長!! 副船長!!」」
「お前ら……しょうがねぇなぁ!! 特別に我慢してやろうじゃねぇか!!」
船内の騒がしさは増していく。
おれも狙ってたんだけどなぁ、と悔しがる声こそ未だ上がるものの表立って反対する者はいない。
「あの時、副船長を追いかけてきた海王類美味かったなぁ」
「しっ。副船長がお頭の
「おっといけねぇ」
幸いなことにおだてられて上機嫌なバギーには聞こえていなかった。
豪快に酒をあおりながら、お前が早く開けろとシャンクスに目線をよこしている。
シャンクスはその様子に笑みを浮かべ、立ち上がると悠々と例の箱の前に歩いていく。その足取りは軽く、それだけ見れば今から箱の中身が楽しみで仕方がない様子だった。
しかし、途切れぬ喧騒の中で目ざとい者は気付いた。我らが船長がいつの間にか帯剣していることに。笑みを浮かべる口元とは裏腹に目が完全に笑っていないことに。
「さぁ、ご開帳だ。鬼が出るか蛇が出るか。いくぞ」
宣言と共に箱は開けられた。
中身を見て悲鳴を上げる者。眉をひそめ自らの武器を手に取る者。先ほどとは違う種類の騒がしさが船内に広がり、そして鎮まった。
今や船内の誰もが固唾を飲んで見守っていた。相対する影は二つ。
片や、赤髪海賊団船長、シャンクス
片や、眼窩に赤い光を灯す正体不明の『生きている』骸骨
いつの間にか抜かれていたシャンクスの愛剣が船内の明かりに照らされて輝けば、応えるように骸骨の眼窩の赤い光が妖しく揺らめく。
どちらが先に仕掛けるのか。両者の間には言い知れぬ圧力が存在していた。しかしそれは唐突に崩された。
骸骨の瞳の光が輝きを増す。シャンクスが既に抜き去った剣を握る手に力を込めたその時。
「こ、こんにちにゃ。こほん。こんにちは!」
噛んだのだ。恐怖と威厳を撒き散らしていた骸骨が。
しかも繰り出してきたのは呪いでも地獄の業火でも無く、普通の挨拶だった。
対するシャンクスの返答は。
「ふっ……くく、ははははは!! お前! 面白いな!! 俺はシャンクスってんだ。お前の名前は!?」
「あ、モモンガと言います。シャンクスさん、驚かせてしまってすみません。以後お見知り置きを」
「くぅ……! ずるいなぁお前。何で丁寧な言葉遣いなんだよ!! しかもそのナリで棺桶から出てくるなんて面白すぎる。おう、お前ら! 宴の続きだ!! モモンガも入れよ!」
「あ、はい。飲み会なら任せてください。これでもサラリーマンなので」
呑気に行われる会話の傍で、ハッと気を取り戻したバギーがいち早く声を上げる。
「
「ち、誓って何も懐には入れてません」
「本当だろうな……嘘ついたら承知しねぇぞ!! おら飲め!!」
「は、はい!! とにかく飲みます!!!」
あっという間にモモンガは輪の中に飲み込まれていく。
その様子を遠巻きに見ている比較的冷静かつ見聞色に長けた一部のクルーたちは、武器から手を離すことはない。
「……信じられねぇな。生まれたての赤ん坊だってここまで"声"が聞こえないことは無いだろうよ。アイツ、見た目と見聞色で読み取れる情報とが食い違い過ぎて頭がおかしくなっちまいそうだ」
「良くて隠蔽能力持ちのスパイ。悪くて本物の悪魔か? 怪し過ぎるが……まあ、お頭が認めたんだ。とりあえず見守っておくか」
ただし、大多数のクルーたちは船長たちに倣って歓迎ムードだった。
何せこの場で最も強く最も頼りになる船長が認めているのだから、その安心感に勝るものは無い。
あとは単純に宴の続きをさっさとしたかった。それが多くのクルーの本心だった。
「いやー最初は死神かと思ったぜ。ついにお迎えが来たのかと」
「しかし、なんであんな怖ぇ見た目なのに副船長なんかにビビってんだ? あの骸骨」
「やっぱその辺の島民が無理やり悪魔の実を食わされたとかじゃないか? 可哀想に。元の場所に返してやれたらいいんだが、あの見た目じゃあなぁ」
ハイペースに酒を飲み、肉を食らい、時折雑談する。いつもの宴に元通りであった。
モモンガは一部警戒心の強い者の視線を感じながらも、本人としてもまさかの酒を口から肋骨にドバドバと垂れ流すという意表を突いた宴会芸を披露することになる。
爆笑するシャンクスとバギーのリアクションも相まって、船内は沸きに沸き、結果としてすぐに赤髪海賊団の信頼を勝ち取ったのだった。
奇妙な客人の増えた宴はいつも以上に盛り上がり、いつも以上に酷いシャンクスの絡み酒の影響か、まだ宝箱が全て開けられていないにも関わらず、赤髪海賊団のクルーは次々と酔い潰れていった。
気付けばレッドフォース号は静かになり、立っているのは船長と副船長、そしてさっき客人として迎え入れられたモモンガだけだった。
「おいおい。もう皆寝ちまったのか? まだ宝箱はこんなにあるってのによ。しょうがねぇなぁ……バギー、おれはこれにする。お前もこの中から一つ選んで甲板に来いよ。次の賭けで最後だ。おれの方が今んとこ上物を引き当ててるみたいだけどな?」
「おお? 小せえ脳みそでも覚えてやがったか。いいぜ、甲板でハデに決着だ。見てろよ……酔い潰れちまった他のハデアホたちとはちげぇ。おれ様はまだまだ負けちゃあいねぇ。これだ。おれ様はこれにする。おら、モモンガも早く選んじまえ」
「は、はい」
「よーし。じゃあ行くかぁ。気持ちよさそうに寝てるんだ。起こしちゃ悪いから、こっそりな」
こうして異なる世界の強者の対峙は極めて平和的に終わった。
だが異界より降臨した魔王により、ここより未来においてこの世界は大きくうねりを上げて変貌していくことになる。
それが希望か、あるいは絶望に繋がるのか。
今はまだ、わからない。
※『気配遮断』の指輪を装備しているモモンガさんは、見聞色持ちからすると『そこに姿は見えてるのに感覚的にはポッカリと何も無い空間がある』ように感じで気持ち悪い、という感じ
※道化のバギー。得意なことは泳ぐこと(公式)