【悲報】一般サラリーマン、目を覚ましたら厳つい男たちに囲まれてた   作:モモンガ大好き倶楽部

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第5話

 

 

エレジア王国 音楽の広間にて

 

 

「残念だけど、私は赤髪海賊団の音楽家なの!! だからエレジアにずっとはいられないよ!!!」

 

「「「えぇ〜っ!! そんなこと言わずに!!」」」

 

「しつこい! 私、エレジアのみんなが教えてくれて本当に上手になれたと思う。それはありがとう。でも私は世界一の歌姫である前に、赤髪海賊団の音楽家なの!!」

 

「……類稀な才能の持ち主だ。本当に惜しいが……本人が言うなら縛り付けることはできない。エレジアの民よ!! 盛大に送り出そうじゃないか!! 今こそ我々の音楽をこの未来ある少女に託すのだ!!」

 

「おお!! さすがだゴードン国王!」

 

「ありったけの楽譜を持ってこい!! 全部歌ってもらおう!! 我々の積み上げてきた歴史の全てを受け取ってもらうんだ!!!」

 

「もう、しょうがないなぁ……どんどん持ってきて!!」

 

 

バックのオーケストラも一層気合の入った演奏を始める。エレジアの民にとってはこれがウタの生歌を聴ける最後の機会かもしれないのだ。

 

その場に集まった誰もが歌声に耳をすませている。ウタは次々と新しい楽譜を手に取っては歌を歌い、国中から運び込まれ積み上げられた楽譜の高さをどんどんと減らしていく。

 

 

「すげぇな。ウタのやつ、本当に全部歌っちまうぜ」

 

「さすがおれの娘だ」

 

「へいへい、船長の娘すげえすげえ」

 

「モモンガも来たらよかったのによぉ。ここの連中ならウタばっかり見てるからあいつがいても気にされなかったんじゃないのか?」

 

「今から呼ぶのは遅いだろ。ま、後でいくらでも聞かせてやればいい。ウタはうちの船の音楽家だからな」

 

 

赤髪海賊団とエレジアの音楽家たちが見守る中、ウタの熱唱は続く。ふと、積み上がった楽譜から一枚がハラリとウタの目の前に落ちてきた。

 

拾い上げられたそれは一際古い紙。不思議と吸い寄せられる視線。まるで楽譜が『歌って欲しい』と言っているような感覚。

 

 

「題名『トットムジカ』だって。なんかすごく古い紙だし変な感じ。まあ、いいか。次はこれだね!! いくよ!!! トットムジカ!!!」

 

「トットムジカ!? いかん! それは!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウタウタの実とトットムジカが組み合わさったその時

 

魔王トットムジカ、顕現す

 

封印されし伝説の化け物が、全てを破壊せんと暴れ始めるーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神避(かむさり)!!!」

 

 

トットムジカの頭部に凄まじい威力の斬撃が叩き込まれる。斬撃の勢いのままトットムジカは壁に叩きつけられ、そのまま建物の外へ弾き出された。

 

 

「オイオイオイ。アイツ吹っ飛びやがった(・・・・・・・・)ぞ……? あいつが『トットムジカ』か? シャンクスの剣でぶった切れねぇなんて嘘だろ……?」

 

「おい! ウタ! 大丈夫か!? しっかりしろ!! ちっ……お頭ぁ!! ウタの様子がおかしい!! 目は開いてるが眠ってるみたいに反応が無い!!」

 

「あの野郎、おれたちの娘に何かしやがったな……! 赤髪海賊団!! 全力で奴をやるぞ!!」

 

「野郎共、構えろ!!! 赤髪海賊団とその音楽家に舐めた真似したツケ、存分に払わせてやれ!! エレジアの音楽家共は下がってな!!!!」

 

「「「おお!!!!」」」

 

「7時の方向、来るぞ!!」

 

『オオオオオオオオオオオオオォォォォ!!!!』

 

 

不協和音を撒き散らしながらトットムジカが別の壁を突き破り再び姿を現した。シャンクスの斬撃が直撃した頭部は当然のように無傷。

 

さらに先ほどと形態が明らかに変わっている。感じる"声"の禍々しさも増すばかりだ。

 

 

「マジで船長でも傷一つ付けられないのか!? どうなってんだコイツは!!」

 

「怯むな!! 急所を狙えるやつは撃て!! 頭だ!!!」

 

「誰に言ってやがる!! アイツの頭のど真ん中ぶち抜いてやる……ああ!? ウタ、なに歌って……ってなんだ、コイツら……なんで邪魔しやがる!?」

 

 

「ᚷᚨᚺ ᛉᚨᚾ ᛏᚨᚲ ᚷᚨᚺ ᛉᚨᚾ ᛏᚨᛏ ᛏᚨᛏ ᛒᚱᚨᚲ」

 

『オオオオオオオオオオオオオォォォォ!!!!』

 

 

ウタの口から悍ましい音色が広がっていく。共鳴するように吠えるトットムジカ。その音量は国中に響くのではないかというレベルの轟音。そして突如襲い来る音楽家たち。混乱しつつ応戦する赤髪海賊団。

 

地獄のような光景が広がっていた。

 

 

「お頭ぁ!! 先に逃げたはずの音楽家たちも戻ってきた!! しかも全員襲ってくるぞ!! どうする!?」

 

「ゴードン!! どういうことだ!!! お前らはトットムジカの仲間か!?」

 

「う、うあ……ああ……」

 

 

国王のゴードン含むエレジアの音楽家たちは虚ろな目をして赤髪海賊団のクルーに襲いかかっている。尋常な様子ではない。

 

 

「聞こえちゃいねぇなこりゃあ!! オイ、シャンクス!! あのバケモンが外から戻ってきたらウタと音楽家共の様子がおかしくなった!! 多分アイツとウタが揃うと何かヤバい!!!」

 

「歌と楽譜……トットムジカがウタウタの実を利用して……洗脳か!? クソ、半分は音楽家の相手をしろ! バギーが指揮してくれ!! おれと残りの半分はさっきみたいに奴をウタから切り離す!!」

 

「任せろ!! にしても、クソが!! モモンガ早く来いよ!!! 船にいても流石になんかこっちでヤバいこと起きてるってわかるだろぉが!!!」

 

 

その言葉に応えるように、トットムジカがぶち抜いてきた壁の穴から何かが飛び込んできた。

 

 

「『魔法最大化(マキシマイズマジック)』『時間停滞(テンポラル・ステイシス)』!!!」

 

『オ………!!!』

 

 

トットムジカの動きが完全に停止した。

 

それを引き起こした独特な口上と不思議な力。これは赤髪海賊団のよく知るモモンガの魔法の力。異変を察知したモモンガが全速力で飛んできたのだ。

 

シャンクスが笑みを浮かべる。一気に状況を打開できる未来が見えた。

 

 

「遅いぞモモンガ!! だがナイスだ!!!」

 

「遅れてすみません!! やばそうな奴にとりあえず動きが止まる魔法かけました!! 残り25秒です!! 状況お願いします!!!」

 

「ウタが歌ったらトットムジカってやつが急に現れて暴れてる。おれの神避でも傷一つつかない恐ろしいタフさだ。そいつの力で音楽家が操られちまって襲ってくるからクルーの身動きが取れない。なんとかできるか!?」

 

「了解!! とりあえず音楽家を止めます! クルーのみんなは下がって!!」

 

「「「おう!!」」」

 

「『魔法持続時間延長化(エクステンド・マジック)』『集団全種族拘束(マス・ホールド・スピーシーズ)』!! これで全員しばらくは動けません! 切れそうになったら言います!」

 

「よし。全員トットムジカに「待ってください!!」、全員待て!!!」

 

 

シャンクスによる総攻撃の号令をモモンガが遮る。

 

 

「トットムジカは完全に停止しています! 俺の魔法が切れるまで攻撃しても意味がありません。動き出すまで残り8秒!! 切れたらそこで一斉に攻撃を!!」

 

「わかった。ウタをおれの後ろへ!! おれも全力で放つ」

 

「よっしゃあ!! お前とお前とお前、シャンクスが攻撃したらウタの護衛しとけ!! 残りのクルーは全力でぶっ放してあのクソ野郎をウタから引き離せぇ!!」

 

「3、2……今です!」

 

 

停止魔法が切れた瞬間、万全の態勢を整えた赤髪海賊団がトットムジカに怒涛の攻撃を繰り出し、さらに追撃に追撃を重ねることで反撃を許さず、トットムジカをあっという間に海岸線すら超えて洋上へと押し出した。

 

 

『オオオオオオオオオオオオオォォォォ!!!!』

 

「ははは! ヤロウ苛立ってやがるぜ!! このまま沖まで運んでけぇ!! ヤツをウタに近付けるな!!!」

 

「『魔法最大化(マキシマイズマジック)』『時間停滞(テンポラル・ステイシス)』。今です! みなさん出航の準備を!!」

 

「助かる、モモンガ。総員、レッドフォース号に乗り込んで奴を押し込み続けろ!!!」

 

 

 

レッドフォース号は進路を沖へ取りながらグングンと進みつつ、エレジアにその叫びが聞こえない位置までトットムジカを全速力で押し込み続ける。

 

トットムジカの抵抗は激しいがシャンクスの斬撃やバギーの新型大砲、モモンガの多彩な魔法によりほとんど何もできないまま運ばれていく。

 

モモンガは飛行魔法でレッドフォース号の横に陣取りながら、通信魔法でウタの護衛と連絡を取る。

 

 

「シャンクスさん、ウタちゃんの意識がまだハッキリしません。ただ、妙な歌は歌っていないみたいです。トットムジカを押し込むのはこのくらいで良いでしょう」

 

「しかし信じられないタフさだ。自慢じゃないがおれの剣をあれだけ受けてまだ元気いっぱいに暴れてるのは信じられないな」

 

「俺もです。どれだけ体力があるのか。いや、そもそも特殊条件をクリアしないとダメージが入らないタイプか……?」

 

「……モモンガ。ゴードンにトットムジカのことを聞いてくれないか? アイツは何か知っていそうだった」

 

「確かに。ウタちゃんの護衛に聞いてもらいます」

 

 

シャンクスとモモンガは他のクルーに攻撃を任せ、この状況を根本的に打開する策を探す。

 

 

「来ました。『トットムジカは楽譜に宿る魔王。ウタウタの実を持つ者が歌えば封印は解かれる。実の能力者が眠れば、魔王もまた眠りにつくという伝承がある』。最後のを最初に言えよ!! シャンクスさん!!」

 

「でかした!! 頼りが伝承ってのは気になるが、要はウタを眠らせれば良い。モモンガ、できるか!?」

 

「できます!」

 

「任せた。おれはここでトットムジカの足止めをする。バギーが踏ん張っているが限界だ。出るぞ!」

 

「ご武運を!! 『転移門(ゲート)』」

 

 

漆黒のゲートを抜けた先には変わらず拘束されているものの、正気に戻り困惑した表情の音楽家たちがいた。ウタは相変わらず虚ろな表情だが聞いた通り奇妙な歌は歌っていない。

 

 

 

「よし、ウタちゃんごめんね」

 

 

モモンガは即座に睡眠魔法をウタにかける。

 

かくん、とウタの首が傾く。そのまま崩れそうになる体をモモンガの手が優しく支える。しっかりと寝ていることを確認した後、シャンクスにメッセージを飛ばした。

 

 

『シャンクスさん。ウタちゃんが寝ました』

 

『そのようだな。トットムジカが消えていく。完全に消えるまでは警戒しておくが……よくやった、モモンガ』

 

『本当に良かった。ウタちゃんとみなさんが無事で。それにしても初めての実戦なのにこんなすごい敵と戦うなんて死ぬかと思いましたよ』

 

『ははは、いい訓練になったんじゃないか? ああ、モモンガ。ゴードンはまだそこにいるよな? 伝えておいてくれないか?』

 

『はい、なんでしょうか』

 

『首を洗って待ってろ』

 

『ヒッ……は、はい。伝えておきます』

 

 

 

 

 

 

 






ゴードンが全部悪い(確信)
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