【悲報】一般サラリーマン、目を覚ましたら厳つい男たちに囲まれてた 作:モモンガ大好き倶楽部
魔王トットムジカは再び封印され、ウタは意識を取り戻した。記憶の混濁はあれど、心身ともに健康と言える。
エレジア国民は誰一人として死ななかった。操られていた時に肉体に無理をさせたせいで怪我をしたり寝込んでいる者はいたものの、目立った後遺症が残った者はいない。
赤髪海賊団は誰一人として欠けることなく、大怪我をした者すらいなかった。そもそも肉を食えば治るのだが。
魔王の復活を経てこの結果となったのはまさに快挙である。なにせ、本来の歴史であればエレジア国民は国王1人を残して全滅し、赤髪海賊団は音楽家を1人失うことになっていたのだから。
だが、それを喜ぶ者はいない。笑顔を浮かべる者など誰もいない。
なぜなら怒っていたからだ。
シャンクスが。バギーが。赤髪海賊団の全クルーが。
仲間が危険に晒されたことに対し怒っていた。
そんな中、この場で最も冷静かつ客観的な立場にいるのは意外にもモモンガだった。集団の中心のゴードンとシャンクスからは少し離れた位置に立って周囲を観察している。
確かに小さい頃から可愛がっているウタに危険が及んだことに対しては強い怒りを感じた。しかし、アンデッド特有の精神沈静化によって感情が抑制されてしまい、加えて周りが殺気立っていることで逆に冷静になっていた。
「ふむ……」
モモンガは考え込む。
まずエレジア王国は、特定の条件こそあれ『曲を歌っただけでとんでもない化け物を呼び出す』楽譜を所有していた。
そしてそれを長年秘匿していた。音楽の都として世界に広く知られているためエレジアを訪れる観光客は非常に多いが、当然観光客はトットムジカという爆弾の存在を知らぬまま呑気に過ごすことになる。
極め付けに、いざトットムジカが顕現した時にエレジアの民は逃げ惑うばかりで対策を全く練っていなかったことは明らか。
余裕でスリーアウトだった。なんだこの国。
色眼鏡抜きで考えれば、海賊狙いの心中かあるいは騙し討ちと捉えられてもおかしくはない蛮行である。それくらいトットムジカは手強い相手だった。
そのトットムジカの封印に一役買ったからか、モモンガの骸骨の外観を割とすぐに受け入れてくれたあたりこの国の国民性というものは色々と適当なのだろうか。
その適当さが良い方向に働くこともあるのだろう。しかし、今回は悪い方が出てしまったようだ。
海賊に友好的な態度を取りながら、酒や食事に毒を盛り海軍に突き出すような国もあると聞くが、実質負けイベのトットムジカを隠し持っているエレジアも似たようなものである。
まったくもって赤髪海賊団は巻き込まれ損であった。
「逆にエレジア視点で考えてみるか」
悪魔の実は貴重であり、ウタウタの実の能力者が入国しているとは思わなかった。魔王はウタウタの実の能力者が居なければ復活できないため、これは一応筋が通っている。
「いや、ダメだな。普通の人間たちがトットムジカの楽譜をこっそり所有しつつ魔王は絶対に顕現させないなんて無理だ。それこそ『悪魔の実の能力者は絶対に入国させない』措置を取るくらいはしないといけない」
そんなことはできないと言うかもしれない。我々は武力や権威による排斥なんてもってのほかで、音楽しかできないのだと訴えてくるかもしれない。
ならばこそ、トットムジカを持つ資格は音楽家たちには無い。トットムジカはそこらの能力者がまるで相手にならないくらい厄介なのだ。よって『破壊する』という最初の話にまた戻ることになるだけ。
そもそもトットムジカの楽譜は自力で動ける可能性がある。あるいは楽譜の状態でもある程度の洗脳効果を持ち、音楽家の誰かを操ってウタの近くに運ばせたか。
ウタが言うには『いつの間にか近くにあった』とのことで、その疑惑は深まる。そもそも本当に封印できていたかも怪しい。
この国のゆるゆるな音楽家たちは、楽譜が読めなくなったら困るので湿気ないように乾燥剤を入れて普通の箱に保管してました、とか言い出してもおかしくない。
とそこまで考えて、はたと気付いた。
ーーーーーーーートットムジカを所有したいが、それを公にできない理由がある? 考えてみればトットムジカは圧倒的な武力である。それを何から隠したいのか。
海賊? 政府? あるいは、
トットムジカは
モモンガの思考はそこに行き着いたが、仮にそうだとしたらいよいよ救いようが無い国だとも思った。観光地のように広く門戸を開いている癖に、周囲にバレたらマズイものをこっそり持っている国。
どう考えてもヤバい国である。行動がチグハグかつ迂闊にも程がある。
そもそもウタウタの実の能力者が偶々赤髪海賊団に所属していて、これまた偶々モモンガという便利な雑用係がいたからこそ何とかなっただけで、いずれ自国の民を含めた何百人もの人間が死ぬ爆弾を抱えていたのだ。
客観的に見て情状酌量の余地無し。感情としても仲間を傷付けた存在は許し難い。だが長期的に見るとトットムジカに利用価値はある。展開によってはあるいは……というのがモモンガの結論だ。
尤も、今の調子ではトットムジカの破壊は避けられないだろうが。
「シャンクスさんたち、めっちゃ怒ってるからなぁ」
モモンガは思考を打ち切り、集団の中心をもう一度見る。
赤髪海賊団のクルーたちの射殺さんばかりの視線を一心に受ける男、ゴードンは今まさに弾劾を受けていた。
シャンクスがゆっくりと口を開く。
「さて、どう落とし前をつけてくれるのか。ゴードン国王」
「……言葉も無い。楽譜を捨てることができず、魔王を復活させてしまったのは全て私の責任だ。曲に罪は無い、と言っても今さら納得はしてもらえないだろう」
トットムジカの楽譜は今、モモンガの手にある。握り潰すか、アイテム破壊魔法を掛けるか。いずれにせよシャンクスがその気になれば一瞬で終わる。
モモンガはエレジアの民の縋るような視線を感じたが、無視した。
揃いも揃って"音楽家"なのだろう。できれば失くしたくないという思いが伝わってくるが、そんな感情論では話にならない。ウタを危険に晒した事実と比べて天秤に乗せるまでもない。
シャンクスもそう考えている。だからこそ音楽家たちの思いを真っ向から切り捨てた。
「当たり前だな。アレがただの曲か? ただの古い紙切れか? 違うだろう。アレは存在していいものじゃない。少なくとも、誰も対抗できる者がいないこの国に置いておけるようなものじゃなかった」
「そうだ。だが、私たちはトットムジカの危険性を知っていながら、それを捨てることはできなかった。音楽家たるもの、音楽の好き嫌いこそあれ『曲の存在を認めない』なんてことはできなかった……!!」
それが音楽家としての誇り。一度作られたのに曲を無かったことにすることは、彼らの矜持が許さなかったのだろう。
しかしそれは赤髪海賊団も同じだ。海賊としての誇りと矜持を持つ彼らは、絶対の掟を持っている。
『仲間を傷付ける者は許さない』
「そうか。大した覚悟だ。だが結論は決まっている。トットムジカの楽譜は破壊する。そしておれたちがエレジアに来ることは二度とない」
「……致し方ない。ウタに……最後に才能溢れる音楽家に話をさせてもらえないだろうか。過ちを犯した先達として、伝えねばならない」
「……それはおれが決めることじゃない。ウタ、嫌だったら断っていいからな。今すぐに船を出しても良い」
「うん、ありがとう。シャンクス。でも私もゴードンと話したい」
「そうか。じゃあおれはもう何も言わない」
ゴードンの前にウタが歩いていく。
シャンクスの圧力が増す。ゴードンが口を開く以外の何かを為した瞬間、その体を消し飛ばすという覚悟が周囲に伝わった。
「ゴードン。私、すごく怖かった。トットムジカに取り憑かれてる時に『苦しい』とか『壊してやる』とか暗い感情がいっぱい頭に入ってきて。私は嫌なのにトットムジカがどんどん暴れ回って、誰かが死んじゃったらって思ってとっても苦しかった」
「本当に申し訳ない……」
「……でも、私もゴードンと同じ」
「ん……? それは、どういう……?」
「シャンクス。私、トットムジカの楽譜を壊して欲しくない」
「「「な、なにぃ〜!!??」」」
広間が俄かに騒然とする。今回の騒動である意味一番の被害者から出た、まさかのトットムジカを擁護する発言に、広間の者たちは様々な声を出す。
だがウタはそれを黙ってじっと見つめていた。そのことに気付いた者から口を閉じていき、やがて広間は元の静寂を取り戻した。
「私、さっき嫌な気持ちばっかりだったって言ったけど、トットムジカの気持ちも伝わってきたんだ」
「なんと……トットムジカにも心が? あれは何と?」
「『歌って欲しい』、『認められたい』。そういう悲しい声だったよ」
「そうか……トットムジカはあらゆる負の感情の集合体。あるいはどこかの浮かばれぬ音楽家の心の叫びすら取り込み続けていたのかもしれない……」
「なんでそういう重要そうな情報を最初に言わねぇんだコイツは? 怒りを通り越して呆れてきたぜ。もう何も考えずにボコボコにしちまうか?」
「我慢ですよ。バギーさん。ウタちゃんの話が終わってからにしましょう」
「と、とにかく! 私も音楽家だからわかる。私の歌を聴いてほしいって。ゴードンが楽譜を捨てられなかった気持ちもわかるよ。ねぇ、みんな! どうにかしてトットムジカを壊さない方法は無いかな? 赤髪海賊団はすごいんだ!! だからきっとその方法もあるはずだよ……!」
「お、おお……やはり君は真の音楽家……!!」
「ゴードン、少し黙ってろ」
何やら感極まっているゴードンに、バギーから厳しい言葉が放たれる。
そして、それまで黙ってウタに任せていたシャンクスが再び歩み出てくる。
「シャンクス……」
「ウタ。こんなことは言いたくないんだが……お願いだ。もうやめよう。今回はどうにかなったが、本当に危なかったんだ。おれはお前を失いたくない。楽譜とウタならおれはウタを選ぶ。おれのわがままを聞いてはくれないか?」
「ずるい、ずるいよ……シャンクス。私だってみんなが大事だよ!! でも、でも!! 忘れられないんだ。トットムジカのあの想いが……」
はぁ、とバギーが溜息を吐きゴードンを睨みつける。
「うちのかわいい音楽家に変なトラウマ植え付けやがって……なぁゴードン。トットムジカは壊されない。オメェはウタに許される。めでたしめでたし……とはいかねぇんじゃねぇか? オメェは恥ずかしくねぇのかよ。こんな小せぇガキに庇われて、守る力もないくせにバカみたいに危険な楽譜をこれまで通り抱えて……それで満足かよ」
「ぐ……む……」
ゴードンも音楽家たちも唸るばかりで明確な答えは出せない。それはウタも同じだった。必死に頭を回しても、良い考えは思い浮かばない。
袋小路に陥ったウタが最後に縋ったのは、モモンガだった。
とある朝に正式なクルーに誘って以来、ウタはモモンガと少し距離を置いていた。
勇気を出した勧誘は、一応前向きな言葉は貰うことはできた。しかしモモンガの気が変わって『やっぱり正式なクルーになるのやめるよ』と言われることが怖かったからだ。
それでもやはりウタが最も頼りにしているのはこの男に他ならなかった。幼い頃からずっと傍にいてくれて常に優しかったモモンガ。
そのモモンガに対し、ウタは顔を歪めながら言葉を絞り出す。
「モモンガ……ごめん。せっかく私のために頑張ってくれたのに、トットムジカのことを頼まれるのはすごく嫌だと思う。でも、でも……モモンガ、助けて」
涙を浮かべ懇願するウタ。それはエレジアに来る前に見た光景と同じだった。
「……ウタちゃんはえらいね。困った時にちゃんと『助けて』って言えるんだから。俺みたいに不貞腐れて誰かに助けられるまで蹲ってたような情けない男とは大違いだ」
最初こそ事故だったものの、途中からモモンガがレッドフォース号に乗り続ける選択をした理由。その理由の一つは間違いなくウタだった。
そして自分がかつて青春を過ごした場所で最初に出会ったヒーローのことを。その言葉に随分と助けられていたことを思い出した。
『誰かが困っていたら、助けるのは当たり前』
先ほど考えていたメリットもある。幸いにもそれを為すだけの力もある。
だが、何より娘同然と思っているウタから助けを求められたのだ。ならばモモンガが動く理由はそれで十分だった。
モモンガは広間の中心に歩いて行く。
「シャンクスさん。バギーさん」
「なんだ」
「ん? どうした」
「俺が責任を取ります。トットムジカの破壊はやめましょう」
「ほぉ。一応理由は聞くが、何でオメェが責任を取る? そもそも何の責任だ?」
「元々俺はウタちゃんの教育係なので、よって俺の監督不行届です。そもそも俺が船に篭らずにウタちゃんに付いていってたら楽譜の違和感にも気付いたかもしれない。結果的に俺はリスクを取りたくないという自分の都合で赤髪海賊団のクルーを危険に晒しました」
シャンクスとバギーの眉が上がる。
「……そうだなぁ。オメェがいつもみたいにウタの傍にいて、あの動きを止める魔法でウタを止めてりゃトットムジカは現れなかったかもな」
察しが良くて助かると思いつつ、モモンガは論理を引き続き展開する。こういうのはポーズも大事なのだ。
「そうです。そして考えてみてください。勝手に動き出すような楽譜ですよ? ゴードンさんも知らない機能とかがあるかもしれません。壊してもまたいつの間にか復活するとか。そうしたらまた勝手にウタちゃんのところにやってくるかも。そういう呪いの道具の類について、俺はよく知ってます」
「なるほどな。おれたちは壊すことにこだわっているが、そもそも『ただ壊すだけ』ではダメかもしれない。そして今の口ぶりだと……お前ならそれをどうにかすることができるってことだな、モモンガ」
頷きつつ、ここでモモンガはゴードンに向き直る。
「ゴードンさん。トットムジカはウタちゃんが歌わなければ顕現しない。そうですよね?」
「……そうだ。ウタウタの実を食べた能力者の歌声によりトットムジカの封印は解かれる」
「曲が失われることが嫌なのであって、自分で所有していたいわけでないですよね? トットムジカの楽譜は長らく封印されていたという話ですし、この国ではトットムジカを歌う習慣も無いようです。要は世界のどこかに存在していれば良い。じゃあ、俺が預かることに反対する理由は無いですよね?」
「……無い。ただし願わくば、少しで良い。たまには貴方が歌っていただければ……きっとトットムジカの怨念もいつか収まるのではないかと思う。1人の音楽家によって我々は気付かされた……トットムジカにも心はあるのだと。写しができれば我々も歌うのだが……」
「写しはリスクが高いのでやめましょう。そして歌うことは……善処します。とにかく俺がトットムジカを預かります。外部の干渉を受けない収納アイテムを持ってるので、そこに楽譜を入れます。俺以外絶対に開けられません」
「逆にオメェがもし操られたら開けられちまうってことか?」
「ああ、それも大丈夫です。俺は見ての通りの体なので、洗脳とか効かないんですよ。痛覚も殆どないので拷問とかも大した効果ありませんし、そもそも拘束耐性も持ってます」
「盛り過ぎだろうよモモンガ……まあ良い、それだけ能力がありゃ頼もしい限りだ」
「でしょう。これで勝手にトットムジカがウタちゃんに寄ってくることはないってわかってもらえましたね。それに俺は24時間起きてますから、トットムジカがどこかに行かないように常に監視できますよ」
「オメェ、どこまでも安心設計だな。杜撰な封印するような国に置いとくよりよっぽど世のため人のためになるってモンだ」
「ね、ねぇ、モモンガ。バギーも。これってもしかして……」
「ごめんね、ウタちゃん。そういうことなんだ。あの時は誘ってくれてありがとう。とても嬉しかった。でも、俺の答えは『ならない』だ」
「そんな……」
モモンガは周囲を見渡して宣言する。
「シャンクスさん、バギーさん、クルーのみなさん。そういう訳で俺は今日をもって赤髪海賊団の雑用係を辞め、この船を降ります。教えていただいたことを活かして、どこか遠くで冒険を楽しみます。ありがとうございました」
「そんな!!! 壊さなくて良いのは嬉しいけど、それじゃ意味ないよ!! 私はモモンガとも一緒にいたいのに……!」
「ウタちゃん。封印されているとはいえ万一を考えればトットムジカはウタちゃんから遠ざけないといけないんだ。そして君は赤髪海賊団の音楽家だろう? 俺もそろそろ独り立ちするべきなんだ。トットムジカとの一戦で俺も戦えるって自信はついたしね」
「そうだけど! 言ってたけど!! でも、でも……」
「ウタ。男の船出だ。応援してやれ。"いつか"が今きた。それだけなんだ」
シャンクスの手が優しくウタの頭に乗せられ、慰めるように髪を撫でる。ウタは涙を流しながら、されるがままにされていた。
バギーもまた複雑な表情をしていたが、口を挟まなかった。モモンガはそれに内心で感謝をしつつ、改めてウタに話しかける。
「ウタちゃん。ゴードンさんの言葉、覚えてる? 『生まれたことに罪は無い』ってさ、素敵な言葉だよね。綺麗事だけど俺もそういう言葉に救われたことがあるんだ。『誰かが困ってたら、助けるのは当たり前』ってさ。だから今度は俺の番なんだ」
「『誰かが困っていたら、助けるのは当たり前』……なんか、モモンガらしいね。優しい言葉」
「ははは、ありがとう。良い言葉だよね」
泣き笑いだったが、ウタが笑顔を浮かべてくれた。それがこの選択が間違っていないことを証明してくれる。
シャンクスが歩み寄る。
「モモンガ。押し付けたおれが言うのもなんだが……良いのか?」
「いえ、逆にいきなり独立だなんて言い出してすみません。元々いつかはするつもりでした。この辺りのことをまだまだ何も知らないので、冒険してみたいと思っていましたからね」
「そうだな。おれたちは冒険"も"好きだが、お前は冒険"が"好きだったな。この違いは大きかったのかもしれない。まあ、達者でな。しかしおれの船も寂しくなるな……これは餞別だ。おれのビブルカード、持っていけ」
「……ありがとうございます、船長。本当に大変お世話になりました」
深々と頭を下げた後、モモンガは未だ涙が止まらないウタに向き直る。そして優しく言葉をかけた。
「ウタちゃん。君が世界一の歌姫になったら、俺が世界のどこにいても歌声が聞けるようになる。その時を楽しみにしてる。だから頑張って世界一の歌姫になるんだ。俺と約束しよう」
「……なる。絶対になるから!! 約束する!!!」
「ふふ、楽しみだよ」
「……モモンガ。さっきのずるい言い方だったよ。もうやめてよああいう言い方」
「うーん……それはウタちゃん次第かな。あと、それこそウタちゃんもシャンクスさんみたいだったよ。さすがの親子だね」
「ありがとう。でも、シャンクスだけじゃないよ。クルーの皆も、モモンガも家族だよ。私は皆に育てられたんだから」
「あぁ、それは……とっても嬉しいな」
モモンガは心の中で破顔した。それは心からの笑顔だった。
翌日 エレジア王国の港 レッドフォース号甲板にて
「もう行くのかモモンガ」
「ええ、ちゃんとトットムジカは封印できましたし。最初の目的地も既に決めてます。あとは少し落ち着いたら船の調達をしようとも思ってます。やっぱり旗揚げするなら自分の船くらい持たないと」
「それはそうだ。アテはあるのか? いや、やっぱりいい。独立したんだものな……お前に全て任せるよ、モモンガ」
「ありがとうございます。シャンクスさん、これを渡しておきます。折れば俺がすぐに飛んでいくので、失くさないように大事にしておいてくださいね」
「それは心強いな。お前も困った時はいつでもメッセージを送ってこい。たとえ独立してもおれたちの繋がりは消えない」
「重ね重ねありがとうございます。では、みなさんお元気で」
「行ってらっしゃい! モモンガ!! 元気でね!! 私頑張るよ!!!」
「行ってきます。ウタちゃんありがとう。俺も頑張るよ」
漆黒の転移門が開き、モモンガはあっさりと去って行った。
「行っちまったなァ。惜しいクルーを失ったぜ」
「そうだな。だがまた会う日がきっとある。その時は精一杯歓待しよう。そうだな? みんな」
「「「おう!!」」」
「よし。さあ、おれたちも出航だ!!」
赤髪海賊団はウタを連れてエレジアを去った。ウタはこれからも赤髪海賊団の音楽家として、そして世界一の歌姫を目指して日々を過ごしていく。
モモンガもまた未知なる冒険に胸を躍らせながら、転移先のとある島でポツリと呟いた。
「さて、色々やることはあるけども。まずは……"魔王"らしく世界に宣戦布告でもしようかな?」
トットムジカ顕現から半月後、エレジアを訪れた定期交易船により海軍に通報が入る。
『エレジアにて戦闘の痕跡あり。崩壊した建物の建て直し作業中の住人によると死者はいないようだが、何者かの襲撃に遭ったらしい』
その後、派遣された海軍による本格的な調査が行われ、その結果得られた情報がある新聞社にリークされる。
リーク先の世界経済新聞は待ってましたとばかりにそれを大々的に報じた。
〜"真なる魔王"誕生!? エレジア半壊事件〜
エレジア王国に封印されし秘宝を奪わんと、"真なる魔王"を名乗る者が襲撃。
偶然居合わせた赤髪海賊団が応戦しこれを撃退。
海賊たちの奮戦により奇跡的に死者は出ず、愚鈍なる海軍は"真なる魔王"が去ってから半月も経った後に調査に訪れるという呆れた始末。
そして"真なる魔王"は強大な力を持つという秘宝を持ち去り、世界に宣戦布告した。以下、これは当社に実際に送り付けられたメッセージである。
(中略)
止まらぬ海賊たちの蛮行に加え、新たな世を乱す者の出現。後手に回る無能な海軍とこの世界に未来はあるのか。
世界経済新聞は今日も奔走しています。世界の真実を求めて。
記事の内容を見た海軍は、海軍を揶揄し市民の不安を誘発する記事に対し当然に抗議文を提出するも、世界経済新聞社はこれを完全に無視。
"真なる魔王"の誕生というセンセーショナルなニュースは瞬く間に世界を駆け巡り、独占スクープを握った世界経済新聞社は大いに潤ったという。
海賊の氾濫する海に怯える民たちは、真なる魔王の出現に恐怖した。市民の明日を守るため、海軍は早々に"真なる魔王"を打倒せんと情報を収集し、写真とその名を手に入れることに成功する。
「これが"真なる魔王"モモンガの姿だ!! 必ず生け取りにせよ!! 何としてもトットムジカを取り戻せ!!」
闇色のローブを纏い、骸骨そのものの姿をした"真なる魔王"モモンガ。その懸賞金は6.6億ベリー。
全くの無名から付けられた懸賞金額としては驚異的な高さであったが、それほど"真なる魔王"に対する政府の警戒度の高さが世界に知らしめられた。
※シャンクスに渡したのはとある課金アイテム。折ると指定した相手に通知が行く。モモンガは通知が来たら即転移門で駆けつけるという流れ。
折らなくても里帰り感覚で転移門使って時々こっそりシャンクスとバギーに会いにはくる。その時はこっそり3人で甲板での宴が開かれる。
その時にモモンガはトットムジカの練習成果を披露するが、いつも微妙な顔をされる。一応少しずつ上手くはなっているようだが、果たしてトットムジカが満足するのはいつになるのやらという感じ。
なおウタはトットムジカ顕現のリスク回避および、世界一の歌姫になるまで会わないと言って参加していない。
しかし秘密の宴の翌日は不機嫌になってシャンクスとバギーを無視する。娘に振り回される父親たち、不憫可愛い。