【悲報】一般サラリーマン、目を覚ましたら厳つい男たちに囲まれてた   作:モモンガ大好き倶楽部

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大奴隷解放時代
第8話


 

 

偉大なる航路にある島 バルティゴ

 

 

 

白土の島と呼ばれるその地に、革命軍の本部はあった。

 

頭領のドラゴン。No.2のイワンコフ。そして幹部のくま。本部の会議室に集合した3人は沈黙を保っていた。

 

 

「……ねぇドラゴン。ヴァナータ、さっきから何で喋らないのよ? ヴァターシとくまをわざわざ呼び寄せたんだから、何か用があるんじゃないの? 急ぎだなんて言っちゃって、どうしたかと思ったッチャブル!」

 

「そうだな。ジニーが攫われてからもう1ヶ月経つ。何か手立てが見つかったのかと思ったが……違うようだな。失礼する」

 

 

焦るくまが立ちあがろうとした瞬間、ドラゴンが重い口を開いた。

 

 

「……魔王モモンガ」

 

「「!!」」

 

「先日その男から連絡があった。非常に珍しい方法でだ。内容は一つ。革命軍本部で我々と話したいことがある、だそうだ」

 

「あの"魔王"から!? 懸賞金6.6億ベリー。赤髪海賊団と単独で真っ向から戦うことができて、なおかつエレジアの秘宝を盗み出した骸骨の男……あれだけ派手に暴れたってのに政府が未だに足取りすらつかめていない謎に包まれた男ね!?」

 

「そうだ。世界経済新聞を通して堂々と世界政府に宣戦布告した"世界の敵"だ。我々の名が霞むほどに、世間は今奴の話題でもちきりになっている」

 

「おれたちとしてはありがたい。魔王を隠れ蓑に活動がやりやすくなった。各地の革命軍支部への志願者も増えている。ジニーを攫った天竜人は……まだ明らかになっていないが」

 

「そんなヤヴァイ男が直々に乗り込んでくる……間違い無く革命軍加入志願ね!! 頼もしいったらないッチャブル!!! ヒーハー!!!」

 

「……確かに奴が味方になれば頼もしい。だが危険だ。ドラゴン、いつ奴はここを把握した? そんな気配は無かった。もしこれが騙し討ちであれば幹部の我々は一網打尽だ。すぐに迎撃の準備を」

 

「……わからない。そして迎撃の必要は無い。いや、無駄だ(・・・)と言う方が良いか。奴は会談の場所にこの会議室を指定してみせた。ご丁寧に座席表まで作ってな。全て知られていると思っていい。魔王は我々の常識の通じる相手じゃないことは確かだ」

 

「魔王の席はあそこね……フン! 待つしかないってことね!! いいわよ!! さあ来なさい魔王!! ところでドラゴン、話の内容くらいは聞いてないの?」

 

「会談の内容は……「それは私の口から説明させてもらおう」……ッ!?」

 

「「なに!?」」

 

 

革命軍幹部の3人は即座に戦闘態勢を取る。声の方向を見れば、先ほどまで空いていたはずの椅子に骸骨の男が座っていた。

 

魔王モモンガだ。3人は説明されずとも理解した。

 

外見の特徴が一致していることもそうだが、不思議な力を使い、漆黒のオーラを放ち、そして尊大な話し方をするこの男が魔王でなければ誰がそうであると言うのか。

 

 

「午後2時だ。私は時間通りに来たぞ、ドラゴン」

 

「……連絡の時もそうだが、随分と不思議な力を使うようだな。どうやって現れた?」

 

「さあな。そんなことはどうでもいい。早く席に着いてくれないか? 私は忙しいんだ。そこの大柄な男と同様にな。そして話し合いとはリラックスして行うものだ。いつまでも立っていては疲れるだろう?」

 

「……そうだな。イワンコフ、くま。魔王に戦闘の意思はない。あればとっくに終わっている(・・・・・・・・・・・・・)。あくまで話し合いに来たと言うのは本当のようだ。席に着こう」

 

 

まずドラゴンがモモンガの対面の離れた席に座り、その両脇を固める形でイワンコフとくまが座った。

 

それはモモンガの指定した座席とは違う位置で、モモンガと3人は顔を突き合わせて話すにしては距離が遠くなっていた。

 

モモンガはその様子を満足げに眺めると、再び威厳ある声で話し始めた。

 

 

「良い警戒心だ。その程度の距離、私の前では無駄だが……未知なる相手とはまず距離を取るものだ。その対応を誉めよう。やはり革命軍を選んで良かった」

 

「前置きは良い。知っての通りおれには時間が無い。魔王モモンガ、お前は何を話しに来たんだ」

 

 

内心の苛立ちを隠せないくまが先を促す。モモンガはその様子に気分を害した様子も無く続きを話し始めた。

 

 

「そうだな。まずは話し合いに応じてくれたことを感謝しよう。そして本題だ。私から依頼したいことがある。革命軍のリーダー、ドラゴン。私に力を貸して欲しい」

 

「……具体的には何を? 知っての通り我々の組織はまだ小さい。各地の革命の火を消さぬために日々を過ごすので精一杯だ」

 

 

これは事実であった。

 

如何に世界政府への不満が世界各地で噴出しそれが後押しになっているとは言え、革命軍の影響力はまだまだ低い。精々が小規模な国の革命成功の手助けをするくらいだ。

 

対して魔王はどうか。

 

驚異的な情報収集能力。誰にも気配を悟られずに移動できる手段。そして赤髪海賊団と単独で戦える武力。さらにはエレジアの秘宝。これらを有する魔王の欲するものを、革命軍が提供できるとは思えない。

 

ドラゴンは冷静にそう分析した。故に魔王が何を言い出すのかわからず、緊張をもって一言一句聞き逃すまいと構えた。

 

 

「では言おう。私はこれから1年後に全世界のヒューマンショップおよび奴隷商人の拠点を一斉に襲撃する。革命軍にはその後の混乱を収める手段の考案と実行をお願いしたい」

 

 

空気が止まった。

 

流石のドラゴンも魔王の放った言葉を理解するために時間を要した。そしてそれはイワンコフやくまも同様だった。

 

 

「……ヒーハー!! ドラゴン、こいつはイカれてるッチャブルね!! 話がぶっ飛んでて訳わかんないわよ!」

 

「……まずは事実確認だ。おれの把握する情報では、魔王は単独で行動しているはずだが? どうやってそれだけの広範囲を対象に行動するんだ? もしや、それすら可能にするような不思議な力があるのか?」

 

「4,380」

 

「は?」

 

「世に出していない我が魔王軍の戦闘要員の数だ。時間が経てばまだ増やせるが、1年後に用意できるのはこれだけだ。だが一体一体が疲れを知らず、死をも恐れぬ精強な軍勢だ。そして先ほども私がやって見せたように、私はその軍勢を誰にも知られることなく各地に出現させることができる。ほぼ同時にな」

 

 

革命軍幹部陣は戦慄した。

 

軍勢の質と数もそうだが、会議室に前兆も無しに突如出現した不思議な力を魔王は『何千という数を対象に発動できる』という事実に。

 

 

「……それが本当なら、確かにこの世の中はひっくり返る。それだけの力を蓄えているのであれば……あるんだろう? 先ほど語った目的のその先が」

 

「ふっ……ははは!! 嬉しいぞ、ドラゴン。本当によく頭が回る。褒美に教えよう。我が最終目標を」

 

 

ゴクリ、と誰かの喉が鳴る。もはや魔王の独壇場となった会議室にて、魔王は堂々と宣言した。

 

 

「私の目的は全奴隷の解放と、未来永劫に亘る奴隷制度の撤廃。そして腐り切った政府上層部及び天竜人を全滅させ、民衆のための新しい政府を作り出すことだ」

 

 

シン、と会議室は鎮まった。辛うじてドラゴンが言葉を絞り出す。

 

 

「それは……素晴らしい目的だ。革命軍も政府の腐敗を憂い、天竜人の打倒を目指している。だが、言うだけなら誰でもできる」

 

「そう言われると思っていたよ。手元の資料を見たまえ」

 

「「「!?」」」

 

 

3人はまたも驚愕した。先ほどまで何もなかった机の上に新たな紙の束が置いてあったからだ。

 

ドラゴンは真っ先に紙を手に取り、その内容を見て目を見開いた。

 

 

「これは……随分正確な海図だ。そしてこの赤丸は……もしやヒューマンショップの位置か! しかも東西南北の海、そして偉大なる航路まで……どうやったんだ!?」

 

「どうやって、か。見てもらった方が早いな」

 

 

モモンガが指をパチンと鳴らすと、途端に部屋の中に羽の生えた目玉が現れる。

 

小さいが、禍々しい気配を放つそれはギョロギョロと忙しくなく目玉を動かす。モモンガが再び指を鳴らすとその姿は掻き消えた。まるでそこには初めから何もいなかったように。

 

 

「なるほど……全く気配が感じられない。諜報用としてこれ以上ないな」

 

「調査は今見せた諜報用の下僕の手によって今もまさに行われている最中だ。私は全世界に数万の下僕を配置し、常に監視している。そしてそれは私が書いた海図のほんの一部だ。必要であれば全て提供しよう」

 

「……全く気が付かなかッチャブルね。今も気配は感じられないわ……こんなものが数万。恐ろしいったらありゃしないわ。これでヴァターシたちの拠点も隅々まで調べ尽くしたって訳ね。はっ!! ヴァターシのシャワーシーン覗いてないでしょうね!?」

 

「……覗いていないから安心しろ。とにかく!! 私の手札は見せた。さて、ドラゴン。お前はどうする?」

 

 

魔王の骨の手が差し出される。

 

それは地獄への片道切符か。それとも世界の救済という希望への架け橋か。

 

 

「……ひとつ聞かせてほしい。何故だ? 何故お前はそれだけの難行を成し遂げようとする? 何が魔王モモンガを動かすのか……おれはそれが知りたい」

 

 

魔王の目の火が揺れた。何か遠い昔を思い出すような遠い目をした後に、呟く。

 

 

「遠い昔、私もまた虐げられる側だった。その時に私を救ってくれた恩人が言っていた。『誰かが困っていたら、助けるのは当たり前』と。その恩人はもう居ない。だが、彼の言葉と意思は今でも私の中で生きている。そしてこの世には助けを求める者が多く存在する。それが私が行動する理由だ」

 

「魔王……いや、モモンガ。まさか貴方にそのような過去があるとは思わなかった。不躾に聞いてしまってすまない」

 

「気にするな。辛い過去は誰しもが持つ。それを前に進む力に変えれば良い。ドラゴン、私は下僕の目を通してこの世界を見た。私は罪無き民を救わんとする革命軍のことを尊敬している。改めて言おう。我が魔王軍と手を組まないか」

 

 

最初に動いたのはくまだった。

 

立ち上がり、頭を地に擦り付けモモンガに対し懇願した。

 

 

「ジニーを……天竜人に攫われた仲間を……助けたい。だが今のおれたちにとってマリージョアは難攻不落の城だ。天竜人の奴隷に手を出せば神の騎士団や海軍大将も出てくるだろう。頼む。モモンガ。力を貸してくれ。力を貸してくれるのなら、おれはお前の目的のためにこの身を捧げると誓う」

 

「くま……ヴァターシからもお願いするわ。モモンガ、ヴァナータの力でジニーを助けてあげられないかしら」

 

「モモンガ。同盟は受ける。むしろおれから願いたいくらいだ。そしておれからも頼む。どうかおれの仲間に慈悲を与えてやってくれないか」

 

 

魔王は迷う素振りすら無く即答した。

 

 

「良いだろう。ここに同盟は成った。これを世界に知らしめるのは1年後となるが、そのための足掛かりとしてまずお前たちの仲間を救う。これを我が名と恩師の言葉に誓おう」

 

「ありがとう……ありがとう……!!」

 

 

くまは滂沱した。モモンガは優しく声をかける。

 

 

「顔を上げろ、くま。さあ、お前の大事な仲間の特徴を教えてくれ。天竜人の奴隷の扱いは特に筆舌に尽くし難い。急ぎ助けねばならない」

 

 

この後、世界は『魔王軍によるマリージョア襲撃』という大事件に揺れることになるが、まだ魔王軍と革命軍の同盟が成ったことを知る者は居ない。

 

そして同盟が成ったことが知らしめられたその瞬間が、人間を奴隷扱いしてきた者たちの地獄の始まりであり、虐げられてきた奴隷たちにとっての夜明けとなる。

 

その時は1年後。世界はさらなる激動の渦に巻き込まれていく。

 

 






原作時系列における革命軍の活動時期と規模の拡大のタイミングを調べると、なんかふわふわしててよくわからなかったので当小説では以下のように勝手に決めました。


<原作開始14年前にエレジア半壊事件&魔王モモンガ誕生>
(モモンガ加入により赤髪海賊団の冒険のペースが上がり、余裕が生まれたことでウタの音楽家としての成長スピードも上昇、原作より2年前倒しでエレジア到達)

同時期にジニーが天竜人に攫われる
(これは原作通りのタイミング)

そしてその1ヶ月後、魔王モモンガと革命軍が初めて接触し、ジニー救出を決める


こんな流れでよろしくお願いします。

ご都合主義? 助けてぇんだよ。ジニーを。わかれよ。
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